【すずゆり撮影日記】ロブ・ライナー監督の熱意に打たれた『記者たち~衝撃と畏怖の真実~』来日会見潜入レポ

  • 2019年03月27日更新

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第2回「ロブ・ライナー監督、熱意を携え初来日!

当サイトでも活躍中のプロフォトグラファー「すずゆり」こと鈴木友里が、さまざまな“映画にまつわる現場”に潜入し、好奇心のおもむくままに撮影&レポートする新連載【すずゆり撮影日記】。第2回は、2019年3月29日(金)公開の『記者たち~衝撃と畏怖の真実~』を携えて来日した、ロブ・ライナー監督の記者会見に潜入して参りました!(レポート画像はクリックで拡大表示)

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すずゆり
『スタンド・バイ・ミー』『恋人たちの予感』『ミザリー』に
……『スパイナル・タップ』も(笑)!
大好きなロブ・ライナー監督の来日、絶対に取材しなくっちゃ!
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すずゆりさん、今回もやる気満々ですね!
日本でも大人気のロブ・ライナー監督ですが、
意外にも、監督人生 34 年目にして初の来日だそうですよ!

映画制作背景とジャーナリズムへの思い

ジョージ・W・ブッシュ政権時、イラク戦争の大義名分となった「大量破壊兵器」の存在に疑問を抱き、真実を追い続けた新聞社ナイト・リッダーの4人の記者たち。実話を基に彼らの奮闘を描いた本作は、これまでのライナー監督作品とは一線を画す骨太な社会派ドラマ。

制作のきっかけについて聞かれた監督は、「ベトナム戦争時に徴兵される年齢になった。その後2003年に米軍がイラク侵攻(衝撃と畏怖作戦)を行った際に、ベトナム戦争と同様の過ちを犯していることに怒りを覚えた。嘘が根拠となってカタストロフィが起きているのに、なぜ止められないのか……その思いが、本作を撮るきっかけでした」と語りました。

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すずゆり
アメリカ政府がねつ造した情報から始まり、
多くの犠牲者を出したイラク戦争。
強い憤りと、監督としての義務感が、
ライナー監督を長年にわたって突き動かしたのね……。
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編集M
ライナー監督自身も、綿密に取材を重ねるなかで、
政府が9・11以前からイラク侵攻を行うと決めていたことが
確信となっていったそう……。


制作の過程について監督は、「なぜアメリカの一般市民が政府の嘘を鵜呑みにしていったのかを検証したかった。はじめは、『博士の異常な愛情/または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』のような風刺映画を撮ろうとしたがうまくいかず、そんな折に、ドキュメンタリー番組でナイト・リッダーの記者たちの存在を知ったのです」と述懐。続けて、「真実を届けるために闘った記者たちの存在を知り、同時に、彼らが真実を一般市民に届けようとしたのに、それが果たされなかったのはなぜかと疑問を抱いた。健全なる民主主義は独立した自由なメディアなしには成り立たないと確信し、それが本作の糸口になったんです!」と声高に語りました。

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すずゆり
記者席を真っ直ぐ見詰め、身振り手振りを交えて語るライナー監督。
作品にかける情熱がひしひしと伝わってくる……すごい、説得力!
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編集M
ナイト・リッダー社の記者たちのことは
制作過程で知ったんですね。
彼らの勇気が監督の力にもなったのでしょうね。

本作の撮影中の大統領選でトランプ政権が誕生し、さらに報道の在り方について考えたという監督。マスコミがフェイクニュースを流していると攻撃を受ける“今”という時代について、「トランプ大統領は権威主義、独裁政治の再来だと言える。今、独裁政治と民主主義の闘いのテンションが高まるなか、プレスが攻撃を受け、再びジャーナリズムの危機が叫ばれています。そうした今だからこそ、報道機関は真実を伝えなくてはならないと思うのです!」

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すずゆり
トランプ政権については、人それぞれに意見があると思うけど
フェイクニュースという言葉が強調されるようになったのは確か。
メディアを作る側の人間として、真実を伝える責務を感じました!

ロブ・ライナー監督の俳優としての魅力も全開!

ナイト・リッダー社の記者を演じるのは、ウディ・ハレルソン、ジェームズ・マースデン、トミー・リー・ジョーンズという実力派の俳優たち。さらに、ミラ・ジョヴォヴィッチとジェシカ・ビールが華を添えるという豪華キャストは、さすがロブ・ライナー作品! と言ったところ。そんななか、ナイト・リッダーのワシントン支局長ジョン・ウォルコットを演じるのは、ほかでもないライナー監督自身。その名演も本作の見どころです。

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すずゆり
ライナー監督が演じるウォルコット氏はまさに理想の上司。
部下を心から信頼し、上司としての強い責任感ももっている。
ユーモアで周りを和ませる温かな人柄もステキでした。
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編集M
ジャーナリストとしての強い意志で真実を追求する姿が
ライナー監督にぴったりでしたよね!

会見に同席した元ナイト・リッダー社の記者であるケン・モリツグ氏は、「本作を観て、胸が熱くなりました」と感慨深く語りました。さらに、当時の様子について「4人の記者はフラストレーションを抱えながら仕事をしていました。自分たちの声が、当時は誰にも届かなかったということが伝わるでしょう。このような記事があったことすら知らない人も多い。民主主義が機能するためにも、ジャーナリズムが必要なのです」と語りかけました。

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すずゆり
情報が氾濫している今だからこそ、
多くの人が知るべき真実が描かれている作品!
ぜひ、たくさんの人に観てほしいな。
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編集M
すずゆりさん、
映画の試写ではこっそり涙を流していましたよね……。

ロブ・ライナー監督が「本当に描きたかった作品」と力説する本作。初来日を果たし、自らの言葉で語りかけてくれたライナー監督に、多くの記者たちが感銘を受けていたようでした。情報を鵜呑みにする危険性や、愛国心の裏に潜む集団心理など、多くの人が知るべき真実が描かれてる『記者たち~衝撃と畏怖の真実~』。ぜひ、映画館でご覧ください!

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すずゆり
ライナー監督、
水の入ったグラスを時おりクルクル回していたのが印象的でした。
きっと、ワインがお好きだと思うな♪
いつか、一緒に飲みながら語らってみたい!
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編集M
さっすが、すずゆりさん!
今回も細かなところまで、しっかり取材しているなぁ。
次回のレポートもよろしくお願いします!

<すずゆりの取材後記>

鈴木友里プロフィール画像「ここにいる皆さんの中で、僕が一番年上じゃないかな?」と、会場を見渡しながらおっしゃった、“ベトナム戦争世代”のライナー監督。
人生の年輪以上に感じたのは、長く映画界のトップに君臨し続けているからこその重厚なオーラと、強い信念を持って映画を作り続けている真摯な姿勢。近くで撮影をしていた私は、圧倒されそうになりながらシャッターを切っていました。記者との質疑応答が続くなか、通訳さんにも気を配る優しさをみせ、質問の一つひとつに穏やかな表情で受け答えをし、話しながらだんだんと熱を帯びていく表情を間近で見て、彼のことをあらためて好きになってしまいました。
劇中では、ライナー監督演じるウォルコット支局長が、部下である社員(記者たち)を奮起させるシーンが一番印象的で感動しました。映画で描かれている時代は、まだSNSも発達しておらず、大手マスコミの情報を人々が鵜呑みにし、中堅新聞社の声が届きにくかった2000年代の初頭。そのなかでも真実を追った人々がいたことを知り、「メディアの情報は果たして真実なのか?」と映画を通して問いかけられたようで、あらためて冷静に情報を精査する必要性を感じずにはいられませんでした。今回も貴重な経験となった潜入レポート、次回もステキな記事を皆様にお届けできるように、ますますがんばりたいと思います!

<鈴木友里/すずゆりプロフィール>
フォトグラファー歴12年。特殊法人のOL、俳優、モデルを経験したのち、映像制作会社へ就職。映像編集やスチール撮影を始める。プロとして独立後は、企業プロフィール、料理、風景写真ほか、豊富な撮影実績を重ねる。「ミニシアターに行こう。」では、インタビュー、イベント、記者会見、レッドカーペット取材などの撮影を担当。旅と音楽と映画、自然が大好き。
「被写体と感じるままに優しく楽しくアプローチするのを心がけています」
◎ウェブサイト:「YURI SUZUKI  Photography」
◎instagram(インスタグラム): @yurisuzukiphoto

>>映画『記者たち~衝撃と畏怖の真実~』予告編映像<<

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▼『記者たち~衝撃と畏怖の真実~』公開・作品情報

(2017年/アメリカ/91分)
原題:SHOCK AND AWE
監督:ロブ・ライナー
出演:ウディ・ハレルソン、ジェームズ・マースデン、ジェシカ・ビール、ミラ・ジョヴォヴィッチ、ロブ・ライナー、トミー・リー・ジョーンズ ほか
字幕監修:池上彰
配給:ツイン
© 2017 SHOCK AND AWE
PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED

●『記者たち~衝撃と畏怖の真実~公式サイト

※2019年3月29日(金)よりTOHO シネマズ シャンテほか全国公開

<取材:2019年2月1日 日本外国特派員教会>
撮影&レポーター(コメント、取材後記):鈴木友里 企画・編集・文:min

  • 2019年03月27日更新

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