『ゾンビ大陸 アフリカン』-史上初! 暗黒のアフリカ大陸を舞台にした本格的サバイバルホラー。

  • 2012年01月15日更新

近年、ゾンビも走ったり武器を持ったりとだいぶ進化を遂げている。だが、本作に登場するのは、動きはかなり緩慢だが、音もなく近づいて人間を貪り食う正統派ゾンビたち。監督・脚本・プロデューサーのハワード・J・フォードとジョン・フォードの兄弟は、子供の頃、ジョージ・E・ロメロ監督の『ゾンビ』に大きな衝撃を受けたという。ゾンビ映画の原点回帰を目指し、なおかつ史上初のアフリカを舞台にしたサバイバルホラー。灼熱の大地での生ける死者との死闘は、従来のゾンビ映画を踏襲しながらも新鮮さに満ちている。

大量発生したゾンビが次々と人間を襲う

死者<ゾンビ>が歩き出し、人間を襲うようになってから数週後のアフリカ大陸。駐留アメリカ軍最後の撤退機内で乗客がゾンビ化し墜落するが、エンジニアのブライアン・マーフィー中尉だけが助かる。同じ頃、ある村ではゾンビ・アウトブレイクが発生し、村の出身者で西アフリカ軍の軍曹デンベレが不在中、家族が次々と死者のえじきとなるが、彼の息子は奇跡的に生き残ったことが判明。母国アメリカの愛する家族のもとへ帰ろうと米軍基地を目指すブライアンは、息子を捜すデンベレと偶然出会い、協力してゾンビ大陸と化したアフリカからの脱出を試みる。

アフリカでオールロケを敢行

ゾンビのルーツはアフリカと関連の深いブードゥー教にあるらしい。そのアフリカ大陸のブルキナファソやガーナのサハラ砂漠で、オールロケを敢行。この地ならではの美しい太陽に、ひととき恐怖を忘れる。また、広大な乾いた大地と、アフリカンゾンビの黒褐色の肌、口から滴り落ちる鮮血のコンビネーションが絶妙だ。果てしなく続く荒野で出会うのはほとんどがゾンビで、人間の絶対数がすでに少なくなってしまったという現実が見えてくる。意外にもこれらのゾンビ、体の損傷部分が少なくこざっぱりしているのが興味深い。

生存本能が炸裂する決死のサバイバル

本作は、米軍と西アフリカ軍に属するブライアンとデンベレが、ゾンビという共通の敵から身を守りながら、基地に向かうロードムービーでもある。“正義”を掲げて西アフリカに駐留する米軍、家族や友人がゾンビ化した時の心の葛藤といったエピソードには既視感があるが、2人が道中出会った首長の「この現象は、自然が猛威をふるって生命を淘汰しているからだ。人間が破壊した地球のバランスを自然が取り戻そうとしている」という話は意表を突く。ゾンビのアウトブレイクは天災だったのだろうか。

意志を持たず“食べる”という本能だけが残ったゾンビ、 “生きる”という本能から火事場の馬鹿力を発揮し、一縷の望みを抱く人間。暗黒大陸からの脱出は成功するのか。どこにも逃げられない極限状態でのサバイバルを体感してほしい。

▼『ゾンビ大陸 アフリカン』作品・公開情報
2010年/イギリス/英語/105分/カラー/ビスタ/デジタル上映
原題:THE DEAD
監督・脚本・プロデューサー:フォード・ブラザーズ(ハワード・J・フォード&ジョン・フォード)
製作総指揮:アミール・モアレミ
撮影:ジョン・フォード
特殊効果:ダン・リカード  
出演:ロブ・フリーマン、プリンス・デビッド・オセイア、デビッド・ドント
配給:インターフィルム
コピーライト:(C)2010 INDELIBLE PRODUCTIONS UK LTD-ALL RIGHTS RESERVED
『ゾンビ大陸 アフリカン』公式サイト
※シアターN渋谷にて、2012年1月21日(土)より、灼熱のロードショー

文:吉永くま


  • 2012年01月15日更新

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