『アンティークの祝祭』ー骨董品に刻まれた波乱万丈な人生の記憶

  • 2020年06月02日更新

映画『アンティークの祝祭』メイン画像

フランスの至宝カトリーヌ・ドヌーヴが、実の娘のキアラ・マストロヤンニと、お互いに複雑な感情を抱く母娘役で共演した人間ドラマ。主人公クレールは、妄想と現実、蘇る苦い記憶に戸惑う高齢の女性。人生の終わり支度をしようと、これまで集めてきたアンティークを売ることを決意する。ひりつくような思い出が閉じ込められているそれらを手放すとき、彼女の心は解き放たれるのか。そこに待ち受ける思いも寄らない結末とは? 2020年6月5日(金)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開。

“最期の日”に主人公が下した決断とは

映画『アンティークの祝祭』サブ画像1<STORY> 70歳を超え、意識や記憶が曖昧になることが増えてきたクレール。「今日が私の最期の日」と確信した彼女は、これまで収集してきた数々のアンティークをヤードセールで処分することを決意する。それらはいつも彼女の人生と共にあったもので、劇的な生きざまの断片であり、切なく悲劇的な記憶を鮮明に蘇らせるものでもあった。一方、疎遠になっていた娘マリーは、母のこの奇妙な行動を友人から聞き、 20 年ぶりに実家に帰ってくるが……。

家族の謎が徐々に解き明かされる

映画『アンティークの祝祭』サブ画像2クレールは、趣味のアンティークに囲まれ広大な邸宅に住んではいるものの、孤独をまとっている。娘マリーとの久しぶりの再会後、マリーが家を出て行った経緯や、父親と息子がいない理由が少しずつ明らかになっていくが、その展開はまるでミステリーの謎が解き明かされていくようだ。

銀髪のカトリーヌ・ドヌーヴ演じるクレールは凛として気高く、一方キアラは、母へのわだかまりを残しながらも「心配で放っておけない」という娘の複雑な心を細やかに見せる。愛でつながっているのか情でつながっているのか分からない母娘関係が、どのように変化していくのかも丁寧に描かれ、思わずこみ上げるものがある。

息が止まるほどの鮮烈で衝撃的な結末

映画『アンティークの祝祭』サブ画像3

いつもクレールの傍らにあり、彼女の人生の記憶が刻まれているアンティークの数々。これらを売ることは、波乱に満ちた過去からの解き放たれることでもあり、またそれによって見えてくる真実もある。

息が止まるほど鮮やかな結末は、あまりにも衝撃的だ。さまざまな捉え方ができるこのラストシーンは、観る者一人ひとりの人生のあり方を見つめ直すきっかけになるかもしれない。

 

▼『アンティークの祝祭』作品・公開情報

映画『アンティークの祝祭』ポスター(2019年/フランス/94分)
原題:La dernière folie de Claire Darling
英題:CLAIRE DARLING
監督・脚本:ジュリー・ベルトゥチェリ
原作:リンダ・ラトレッジ著「La dernière folie de Claire Darling」
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、キアラ・マストロヤンニ、アリス・タグリオーニ、ロール・カラミー、サミール・ゲスミ
配給:キノフィルムズ/木下グループ
©Les Films du Poisson – France 2 Cinema – Uccelli Production – Pictanovo

映画『アンティークの祝祭』公式サイト

※2020年6月5日(金)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開

文:吉永くま

 

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