12月公開映画 短評 ―New Movies in Theaters―

  • 2019年12月01日更新

12月公開映画の中から、ミニシアライターが気になった作品をまとめてピックアップ! あなたが気になるのは、どの映画!?

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12/7(土)公開 『ジョン・デロリアン
12/7(土)公開 『リンドグレーン
12/14(土)公開 『つつんで、ひらいて
12/21(土)公開『アニエスによるヴァルダ
12/27(金)公開 『だれもが愛しいチャンピオン
12/27(金)公開『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!


『ジョン・デロリアン』

“デロリアン”を作った天才の激動の半生に迫る

映画『ジョン・デロリアン』メイン画像

『バック・ドゥ・ザ・フューチャー』シリーズで知られる車 、“デロリアン”を作り上げた男の人生を描く。1977年、南カリフォルニア。ある事情からFBIの情報提供者となったジムは、隣に住む元GMの天才エンジニア、ジョン・デロリアンと友人になる。やがてジョンは新車開発のトラブルから資金難に。それを知ったジムは彼を麻薬密売の罪でFBIに売り渡そうと画策する。野心家でカリスマ性のあるジョンと調子は良いが抜け目のないジム。タイプは異なるものの、2人とも強さと弱さ、狡猾さと純粋さを併せ持ち人間的魅力に溢れている。嘘、悪意、嫉妬などのネガティブなワードさえ霞むほどだ。陽光降り注ぐ地でのセレブの生活も目の保養になる。(吉永くま)

2019年12月7日(土)より公開 公式サイト 予告編動画
(2018年/アメリカ/113分)原題:DRIVEN 
監督:ニック・ハム 出演:リー・ペイス、ジェイソン・サダイキス、ジュディ・グリア ほか 配給:ツイン © Driven Film Productions 2018


『リンドグレーン』

世界の人々を虜にした名作が生まれる前の物語

映画『リンドグレーン』メイン画像“リンドグレーン”という名前を聞くだけで、「長くつ下のピッピ」や「やかまし村の子どもたち」をわくわくしながら読んだ昔の記憶が蘇る。本作は、今なお愛される数々の名作を残した作家の若かりし頃に焦点をあてた作品だ。スウェーデンのスモーランド地方で伸び伸び育ったアストリッドは中学を卒業後、その文才を見込まれ、地方新聞社で働き始める。だがその矢先、彼女の人生は予期せぬ方向へと進んでいくのだった-。ピッピのようなおさげ髪を切り落とし、大人への道を歩むアストリッドに待ち受けるのは重い現実。意志の強さ、愛情の深さゆえに傷つき、それを乗り越えようとする彼女の姿を見て、その後に生み出された名作を再読したくなった。(吉永くま)

2019年12月7日(土)より全国順次公開 公式サイト 予告編動画
(2018年/スウェーデン=デンマーク/123分/PG12 ) 原題:Unga Astrid 監督:ペアニレ・フィシャー・クリステンセン 出演:アルバ・アウグスト、マリア・ボネヴィー、マグヌス・クレッペル ほか 配給:ミモザフィルムズ © Nordisk Film Production AB / Avanti Film AB. All rights reserved.


『つつんで、ひらいて』

1万5000冊以上を装幀したプロの言葉の重み

2019年1月にデビュー作『夜明け』が公開された広瀬奈々子監督が、装幀の第一人者である菊地信義さんを3年にわたって追いかけ、珠玉のドキュメンタリーに織り上げた。これまでに装幀を手がけた書籍は1万5000冊以上。1冊1冊に真剣に向き合い、あらん限りの工夫を凝らしながらその内容にふさわしい本に仕上げるまでの工程が、本人の仕事ぶりや作家、編集者らの証言で浮かび上がる。中でも菊地さんが語る言葉が深い。「デザイン」に相当する日本語は「こさえる」であり、それは相手がいてこそ成り立つものだ、といったように、さすがは本の中身をじっくりと読み込んで装幀している文章のプロフェッショナルだけのことはある。一つ一つの言葉の重みに感じ入った。(藤井克郎)

2019年12月14日(土)より全国順次公開 公式サイト
(2019年/日本/94分)英題:Book-Paper-Scissors 監督・編集・撮影:広瀬奈々子 出演:菊地信義、水戸部功、古井由吉 ほか 配給:マジックアワー © 2019「つつんで、ひらいて」製作委員会


『アニエスによるヴァルダ』

おかっぱ頭のおばあさん監督が語り尽くす

2019年3月に90歳で他界した「ヌーヴェルヴァーグの祖母」アニエス・ヴァルダ監督の遺作となったドキュメンタリー。パリのオペラ座に登壇したときの映像などを用い、ヴァルダ監督自身の言葉で、作品の思い出や映画の本質について語り尽くしている。その言葉はどれも含蓄に富み、心に響くものばかりだが、特に強調されるのが「ひらめき」「創造」「共有」だ。すべての作品はこの3つを基に作られていると打ち明け、断片の映像を流しながら一つ一つ解説していく過程が明快で刺激的。映画を学ぶ人には貴重な講義と言えるが、決して堅苦しいものではなく、おかっぱ頭の小柄なおばあさんが元気いっぱいにしゃべっている構図は実にほほ笑ましい。ユーモアとエスプリの妙に魅せられた。ヴァルダ監督の初期作品『ラ・ポワント・クールト』(1954)、『ダゲール街の人々』(1975)と同時上映。(藤井克郎)

2019年12月21日(土)より全国順次公開 公式サイト
(2019年/フランス/119分)原題:Varda par Agnès 監督:アニエス・ヴァルダ 配給:ザジフィルムズ © 2019 Cine Tamaris – Arte France – HBB26 – Scarlett Production – MK2 films

オススメ記事:『アニエス・ヴァルダ監督 追悼特集上映』— “ヌーベルヴァーグの祖母”が遺した名画たち


『だれもが愛しいチャンピオン

障害者バスケットチームの奮闘ぶりにほっこり

実際に知的障害を持った人たちの出演でバスケットボールチームの奮闘ぶりを描き、スペインのアカデミー賞と呼ばれるゴヤ賞で作品賞などに輝いた感動作。プロバスケットボールチームのサブコーチを務めるマルコは怒りっぽい性格で、試合中にヘッドコーチと衝突した挙句、飲酒事故を起こしてしまう。裁判で社会奉仕活動を命じられたマルコは、障害者チームを指導することになるが……。傲慢で嫌味なコーチが、下手ながらも一生懸命な選手たちとふれあうことで変わっていくというストーリーは珍しくはないが、チーム全員が知的障害を持ち、しかも一人一人が個性にあふれているというのが驚異的。喜怒哀楽の豊かな表情、ユーモアあふれるエピソードの数々にほっこりとさせられた。(藤井克郎)

2019年12月27日(金)より全国順次公開 公式サイト
(2018年/スペイン/118分)原題:Campeones 英題:Champions 監督:ハビエル・フェセル 出演:ハビエル・グティエレス、アテネア・マタ、フアン・マルガージョ、ヘスス・ビダル ほか 配給:シンカ © Rey de Babia AIE, Peliculas Pendelton SA, Morena Films SL, Telefónica Audiovisual Digital SLU, RTVE


『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』

お間抜けバンドのぶっ飛び音楽コメディー

北欧フィンランドの片田舎で暮らすトゥロは、ボーカルを務める4人組ヘヴィメタルバンドの活動だけが生きがいだった。一度もステージに立ったことがないが、住民たちからばかにされ続けるのはもう嫌だと、ついにオリジナルの曲を完成。ノルウェーの大規模フェスの主催者とも知り合いになり、遠征前に地元のライブハウスで前座を務めることになるが……。決してカッコ悪くはないが、ちょっと間抜けなメンバー4人のキャラクターが最高で、トナカイ食肉工場やら介護施設といった彼らの職場のローカルさとヘヴィメタルのぶっ飛び感の対比で笑わせる。フィンランド映画らしいすっとぼけた雰囲気もたっぷりで、音楽をよく知らなくても十分に楽しめるコメディーに仕上がっていた。(藤井克郎)

2019年12月27日(金)より全国順次公開 公式サイト
(2018年/フィンランド・ノルウェー/92分)原題:Hevi reissu 英題:Heavy Trip 監督:ユーソ・ラーティオ、ユッカ・ヴィドゥグレン 出演:ヨハンネス・ホロパイネン、ミンカ・クーストネン、ヴィッレ・ティーホネン ほか 配給:SPACE SHOWER FILMS © Making Movies, Filmcamp, Umedia, Mutant Koala Pictures 2018

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