【すずゆり撮影日記】“タラレオ”が魅せたハリウッド愛! 『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』来日会見潜入レポ

  • 2019年08月30日更新

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第3回「すずゆり、突然シャッターを切るのをやめて……」

当サイトでも活躍中のプロフォトグラファー「すずゆり」こと鈴木友里が、さまざまな“映画にまつわる現場”に潜入し、好奇心のおもむくままに撮影&レポートする連載【すずゆり撮影日記】。今回は、クエンティン・タランティーノ監督の長編9作目にして、レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットが奇跡の共演を果たした『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』の来日記者会見に潜入して参りました!

タランティーノ監督と、主演のディカプリオ、プロデューサーのシャノン・マッキントッシュを迎えた会見では、映画愛に満ちた撮影現場の様子がたっぷり語られました。
そんななか、急にシャッターを切る手を止めた、すずゆり。その理由とは……!?

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すずゆり
目の前に“タラレオ”が並んでいる光景……夢みたい!
写真を撮りたい衝動が止まりません!
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すずゆりさん、日本公開の情報が出た瞬間から
「来日取材があったら絶対にやります!」って
ずっと言い続けていましたもんね(笑)

業界と街。2つの意味で描いたハリウッドの光と影

物語の舞台は1969年のロサンゼルス。落ち目の TV 俳優リック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)と、彼のスタントマンのクリフ・ブース(ブラッド・ピット)は、映画界に再起の場を求めて奔走する……。実際に起きた新進女優シャロン・テートの殺害事件とフィクションを交差させ、ハリウッド黄金期の光と影を描く本作。タランティーノ監督が5年の歳月を費やして脚本を執筆したという、渾身の長編作です!

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すずゆり
レオとブラピをはじめ、マーゴット・ロビー、
アル・パチーノ、ダコタ・ファニング……
超豪華なキャストも見どころ!

シャロン・テート殺人事件という史実に、架空のキャラクターであるリックとクリフを加えるアイデアについて聞かれたタランティーノ監督は、「ハリウッドのカウンターカルチャーが、“業界”としても“街”としても2つの意味で変革を迎えていた時代を描きたかったのと、シャロン・テートの事件に結びつく歴史的な観点が興味深かったんだ。僕が13、14歳のころ読んだ、E.L.ドグトロウの『ラグタイム』という小説があるんだけど、当時の史実と架空のキャラクターが絡み合う設定がおもしろくて、今作では、僕が考えたキャラクターと、当時のハリウッドに生きていた人々が出会う物語にしたんだ」と明かしました。

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ハリウッドという街とカルチャー、
そしてハリウッドで夢を描いたすべての人々に捧げた
タランティーノ監督からのラブレターのような作品!

徹底した役作りで実感。「ハリウッドは魔法のような世界」

タランティーノ監督とは『ジャンゴ 繋がれざる者』以来のタッグとなるディカプリオは、「監督と、リックの魂をどう描くかを話し合ったよ。50年代にTVドラマのカウボーイ役で人気を得た彼も、69年にはアンチヒーロー役に甘んじている。リックとクリフはコインの表と裏のような関係で、時代の変革のなかで取り残されていく自分たちを、どうにか変えたいと思っているんだ。幸いなことに、僕もブラッドもこの世界で成功しているけど、この業界や街のことをずっと見てきたから、リックとクリフの置かれている状況はすごく理解できるんだ」と語りました。

さらに、役作りについては、「僕はどんな役を演じるときも、徹底的にリサーチをする。今作では、監督が二人の緻密なバックストーリーを、撮影前にすべて用意してくれていたんだ。どんな映画に出ていて、どんな関係だったとか。だから現場に入る時点で、僕たちはすでに歴史を共有していたし、人物像も理解できていたよ。

ご存知の通り、タランティーノ監督は映画マニアで知識の宝庫なので、いろいろな作品や俳優を紹介してもらって、参考にしたんだ。この映画は、ハリウッドという場への祝福のような作品だと思っている。僕たちが愛した多くの作品に貢献した俳優たち、多くの忘れ去られている人たちのことも、リックというキャラクターを作る過程で知ったんだ。リサーチしているあいだは未知の世界を旅しているようだった。ハリウッドは魔法のような世界。そのなかでリックはまだ仕事ができていて、ラッキーな方なんだと思いました。このリサーチは、僕にとって素晴らしい経験だったよ!」と述懐しました。

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すずゆり
タランティーノ監督の映画への造詣の深さと
レオの真摯な役作りは、やはり並大抵のものじゃないのね
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ハリウッドは魔法のような世界……
この言葉には、深〜い意味が込められていますね

時代の過渡期にいた多くの俳優たちがリックのモデル

ディカプリオとピットをキャスティングした理由についてタランティーノ監督は、「役柄にピッタリだったのはもちろん、彼らが僕のオファーを選んでくれたことが最大の幸運だった。きっと、山積みの企画書の上のほうに僕の脚本があったんだね(笑)」とジョークを飛ばしながらも満足げな表情を見せました。

リックというキャラクターを描くために参考にした人物を聞かれると、「当時は、リックと同じような状況の俳優がたくさんいた。そこには、50年代にTVが登場した背景があるんだ。それまで映画、舞台、ラジオがショービジネスの中心だったけど、新しいスターたちがTVを通じて生まれた。でも、やがて彼らにも過渡期がやってくる。

そんななか、スティーブ・マックイーンやクリント・イーストウッド、ジェームズ・ガーナーなんかはTVから映画俳優への転身に成功したけど、作品や運に恵まれず、うまく転身できなかった俳優もいる。そういった人々のいろいろな要素を組み合わせて、リックというキャラクターを組み上げたんだ。

『ルート66』のジョージ・マハリスや『サンセット77』のエド・バーンズ、『ブロンコ』のタイ・ハーディン、『ベン・ケーシー』のヴィンス・エドワーズなどの要素も取り入れたよ」

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すずゆり
次々に作品や俳優の名前が出てくる……!
知識のアーカイブ量も、興味の深さも桁違いなんだわ
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私なんて、昨日の夜食べたものさえ
パっと出てこないのに……

ほかの映画を断ってでも、タランティーノと仕事がしたい!

記者たちの質問がタランティーノ監督とディカプリオに集中するなか、「次の質問は、僕たちの素晴らしいプロデューサー、シャロンにぜひお願いします」とディカプリオがスマートに気遣う場面も。

プロデューサーの立場から“タランティーノ組”の現場を振り返ったシャロンは、「タランティーノとの映画作りは、まるで奇跡なの。初監督作の『レザボア・ドッグス』以来のスタッフもいて、皆がファミリーのようだし、監督のヴィジョンを表現することを心から楽しんでいるのよ。撮影の合間には、タランティーノが映画史の授業をするんです(笑)。観るべき映画やTVドラマを、誰よりも知っていますから! タランティーノが新作を書きはじめると、皆が『いつ書き終わりそう?』って電話をかけてくるの。ほかの映画を断ってでも、タランティーノ監督作をやりたんですね」と笑顔で語りました。

その言葉通り、今作の製作を通してキャストやスタッフたちと50年前のハリウッドの街や、文化を再現することを楽しんだというタランティーノ監督。「素晴らしい俳優たちがキャラクターに息を吹を吹き込でくれて、楽しいことだらけの製作だった。特に満足しているのは、CGやセットを使わずに、今のロスの街で撮影をして、プロダクション・デザインと経験で得たトリックを駆使して69年の風景に仕上げたこと。映画の魔法さ(笑)。やってのけたと自賛しているよ。

あ、そうだ! 69年といえば、日本の映画監督のクラハラさん(蔵原惟繕)が同年に公開したレース映画『Safari 500(原題:栄光への5000キロ)』のビデオを持っている人はいない?  彼の第1作で『I’m Still Waiting(原題:俺は待ってるぜ)』(1957)という作品に度肝を抜かれて、この作品も絶対に観たいんだ! 日本の皆さん、もし英語字幕付きDVDを持っていたら、僕はあと2日は日本にいるので、ぜひプレゼントしてね!」とおねだりする場面も(笑)。

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すずゆり
日本映画も大好きなタランティーノ監督。
隅々までこだわり抜いた世界観にいつも魅了されちゃう!
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編集M
やはり、映画への愛と情熱と刺激が満載の
現場なんですね。
その様子を垣間みられただでも興奮!
以前から、長編10作撮ったら引退を公言しているけど……
本当なのかな!?

奇跡のような幸福への感謝を、常に心に留めている

劇中で起こる奇跡にちみ、「これまでに体験した起きた奇跡を教えて」という質問が寄せられると、タランティーノ監督は「9本も映画を作って、こうして東京に来られたことは奇跡だよ。だって、1989年ごろまでは、ビデオ屋の店員だったんだから(笑)。仕事としてではなく、アーティストとして映画を作れていることも幸運だし、そのことは常に心に留めています」と回答し、ディカプリオは「ハリウッドで生まれてロスで育った僕は、世界中から多くの人がこの夢の場所に集まってくることを知っています。でも、誰もがここで夢を掴めるわけじゃない。僕は運が良くて、子どものころから学校が終わればオーディションに行くような生活ができて、今では自分が決定権を持って作品を選ぶこともできている。これは、本当に奇跡だと思うし、感謝しているよ」と熱を込めて語りました。

刻々と会見終了の時間が近づくなか、次はいよいよ最後の質問。

「皆さんにとって“ハリウッド”とは?」と聞かれるとタランティーノ監督は、「ハリウッドには2つの意味がある。一つは映画業界、そしてもう一つは街としてのハリウッド。映画ではこの両方を描いているんだ。市民が暮らす街でもあり、人々のポジションがどんどん変わってく街でもあって、そこが興味深い。自分の感覚的には、ずっとハリウッドっていう高校に通っているような感じ(笑)」と独特の言い回しで答えました。

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すずゆり
…………(しーん)。
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編集M
ん?  烈火の如くシャッター押していたのに
急に手を止めて……。
すずゆりさんどうしたんだろ……?
……って、あれ? 動画撮ってる!?
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すずゆり
ふふふ。動いている“タラレオ”も、
押さえたくなっちゃって!
……と、いうわけで。
最後のレオの回答は動画でお楽しみください!

Q:ディカプリにとっての、 “ハリウッド” とは?

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すずゆり
ねぇねぇ、Mさん。
よく見ると、タランティーノ監督とレオは
おそろいの衣装じゃありません?
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編集M
ははは、 全然違います……って、ホンマや〜!
印象がまるで違うから気付かなかったけど、
ほぼ同じアイテムの色違いですね!
相変わらず、ビジュアルの情報に敏感なすずゆりさん!
次回も、さらにツッコんだレポートお願いしますね〜
すずゆりアイコン
すずゆり
は〜い(笑)!
本作は8月30日(金)より全国公開。
皆さんもぜひ、スクリーンでお楽しみくださいね!

<すずゆりの取材後記>

鈴木友里プロフィール画像映画を観終わったあと、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』というタイトルの意味が、あらためて私の胸に響いてきました。劇中には、1969年当時のTV番組やカルチャーへのオマージュ、パロディがたくさん出てくるので、元ネタを知っている人はもちろん、クエンティン・タランティーノ監督の作品を観たことの無い方や若い方も、彼の創り出すハリウッドのおとぎ話を楽しめることと思います♪
記者会見では、想像以上に笑顔を見せてくれたタランティーノ監督。楽しそうな声と振る舞いは嬉しい驚きでした。レオナルド・ディカプリオさんはどこまでも自然体で、目の前にいるだけで役者としてのスケールの大きさと気品を感じました。本作の日本公開が発表されたこの春から、来日取材を楽しみに待った甲斐がありました!
タランティーノ監督、ディカプリオさん、素敵な作品を携えての来日、ありがとうございました。
どうか、また、すぐに会えますように――。すずゆり

<鈴木友里/すずゆりプロフィール>

フォトグラファー歴12年。特殊法人のOL、俳優、モデルを経験したのち、映像制作会社へ就職。映像編集やスチール撮影を始める。プロとして独立後は、企業プロフィール、料理、風景写真ほか、豊富な撮影実績を重ねる。「ミニシアターに行こう。」では、インタビュー、イベント、記者会見、レッドカーペット取材などの撮影を担当。旅と音楽と映画、自然が大好き。
「被写体と感じるままに優しく楽しくアプローチするのを心がけています」
◎ウェブサイト:「YURI SUZUKI  Photography」
◎instagram(インスタグラム): @yurisuzukiphoto

 

<ミニシア名物、靴チェック!>
タランティーノ監督(左)は、ビビッドな赤と黒のカラーリングが印象的なスニーカー、レオ様(右)は清潔感いっぱいの真っ白なスニーカーを履いていました。
同じアイテムの衣装を着ても、まるで印象の違う二人。足元にも個性がハッキリ出ていて、おもしろいですね! (by.編集M)

▼『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』公開・作品情報

(2019年/アメリカ/116分/PG-12)
原題:Once Upon a Time in Hollywood
監督: クエンティン・タランティーノ
製作:デビッド・ハイマン、シャノン・マッキントッシュ、クエンティン・タランティーノ
製作総指揮:ジョージア・カカンデス、ユー・ドン、ジェフリー・チャン
出演:レオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピット、マーゴット・ロビー、エミール・ハーシュ、マーガレット・クアリー、ティモシー・オリファント、ジュリア・バターズ、オースティン・バトラー、ダコタ・ファニング、ブルース・ダーン、マイク・モー、ルーク・ペリー、ダミアン・ルイス、アル・パチーノ
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

●『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』公式サイト

>>予告編映像<<

※2019年8月30日(金)より全国公開

<取材:2019年8月26日 ザ・リッツ・カールトン東京>

スチール&ムービー、レポーター(コメント、取材後記):鈴木友里
企画・編集・文:min

  • 2019年08月30日更新

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