『アニエス・ヴァルダ監督 追悼特集上映』— “ヌーベルヴァーグの祖母”が遺した名画たち

  • 2019年04月01日更新

“ヌーベルヴァーグの祖母”と呼ばれた映画監督のアニエス・ヴァルダが、2019年3月29日(フランス現地時間)に乳がんのため自宅で息を引き取った。1928年にベルギーで生まれ、第二次世界大戦中に疎開したパリで写真を学び、27歳のときに『ラ・ポワント・クールト』(1955)で長編デビューを飾ったヴァルダ監督。1965年に『幸福(しあわせ)』がベルリン国際映画祭銀熊賞、1985年には『冬の旅』がヴェネツィア国際映画祭金獅子賞に輝き、2015年のカンヌ国際映画祭では史上6人目となるパルム・ドール名誉賞を手にした。さらに、2017年には60年以上に渡る映画作りの功労が認められてアカデミー名誉賞を受賞するなど、90歳でこの世を去るまで、その行動力と創作意欲は決して枯れることはなかった。

そんなアニエス・ヴァルダ監督を偲び、アップリンク吉祥寺では4月6日(土)より2週間限定で追悼特集上映を緊急開催する。本特集上映では、監督作の『顔たち、ところどころ』『5時から7時までのクレオ』『幸福(しあわせ)』『ジャック・ドゥミの少年期』と、ヴァルダが歌詞で参加した夫ジャック・ドゥミの監督作品『ローラ』の5作品が上映される。また、『顔たち〜』の上映では、7月5日(金)リリース予定のDVD特典映像「アニエス・ヴァルダとJRの対談」の一部も特別に公開される予定だ。

『顔たち、ところどころ』

(2017年/フランス/89分)
原題: Visages Villages
脚本・監督・出演:アニエス・ヴァルダ、JR
配給・宣伝:アップリンク
©Agnès Varda-JR-Ciné-Tamaris, Social Animals 2016
88歳のヴァルダが、34歳のアーティストJRと共同監督を務め、ロードムービー・スタイルで描くハートウォーミングなドキュメンタリー映画。年の差54歳の二人が、フランスの田舎を旅しながら人々とふれあい、一緒に作品を作っていく。2017年のカンヌ国際映画祭にて最優秀ドキュメンタリー賞ルイユ・ドール(金の眼賞)、トロント国際映画祭では最高賞にあたるピープルズ・チョイス・アワード(観客賞)のドキュメンタリー部門を受賞。第90回米国アカデミー賞、 第43回セザール賞 にもノミネートされるなど、世界の映画祭を席巻した。

『5時から7時までのクレオ』

(1961年/フランス=イタリア/90分)
原題:Cleo de 5 a 7
監督・脚本:アニエス・ヴァルダ
音楽:ミシェル・ルグラン
出演:コリーヌ・マルシャン
©agnes varda et enfants 1994
不安に駆られながらガンの診断結果を待つシャンソン歌手のクレオは、初夏のパリをさまよいながら友人や見知らぬ人と出会い、心の平和を取り戻していく。クレオの過ごす5時から7時までをリアルタイムで描くヴァルダ監督初期の傑作。今年1月に逝去したミシェル・ルグランが音楽家役で出演しているほか、劇中劇にはジャン=リュック・ゴダールとアンナ・カリーナも登場する。

『幸福(しあわせ)』

(1964年/フランス/80分)
原題:Le Bonheur
監督・脚本:アニエス・ヴァルダ
出演:ジャン=クロード・ドルオー、クレール・ドルオー
©agnes varda et enfants 1994
平凡だが子どもたちとともに幸せに暮らす一組の夫婦。しかし、夫は妻を愛しながらも別の女性と恋に落ちてしまう。夫の婚外恋愛を知った妻はその事実を受け入れ、一見して夫婦の絆は変わらないように思えた。そんなある日、妻が池で溺死体となって発見される……。夫婦の愛情を美しくも残酷に描き、幸せについて問いかけるヴァルダの代表作。美しい映像とモーツァルトの音楽が印象的な作品だ。

『ジャック・ドゥミの少年期』

(1991年/フランス/120分)
原題Jacquot de Nantes
監督脚本アニエスヴァルダ
原作・出演ジャックドゥミ
© ciné tamaris 1990
1962年にヴァルダと結婚し、90年にこの世を去ったジャック・ドゥミ。晩年を迎えた最愛の夫が少年時代に抱いた映画へ憧れを、代表作のフッテージや本人映像も織り交ぜてフィルムに焼き付けた名作。生涯の伴侶であるドゥミを見つめるヴァルダ監督の視線が、優しくも切ない。

『ローラ』

(1961年/フランス/88分)
原題Lola
監督脚本ジャックドゥミ
音楽ミシェルルグラン
出演アヌークエーメ
© mathieu demy 2000
ドゥミ監督の長編デビュー作であり、「ヌーヴェルヴァーグの真珠と讃えられる美しき名作。フランス西部の港町ナントでは、キャバレーの踊り子ローラが一人の男の帰りを待ち続けていた。7年の時が流れるなかで、時には男に似た水兵と一夜をともにすることもあった。そんなある日、幼なじみのロランと10年ぶりに再会して……。

◆「アニエス・ヴァルダ監督追悼特集上映」開催情報
日程:2019年4月6日(土)~4月19日(金)2週間限定
料金:一般¥1,300 ユース・シニア¥1,100 UPLINK会員¥1,000
場所:アップリンク吉祥寺(東京都武蔵野市吉祥寺本町1丁目5−1パルコ地下2階)
上映の詳細は公式サイトでご確認ください。

※2019年4月6日(土)~4月19日(金)アップリンク吉祥寺にて2週間限定上映

文・編集:min

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