『天然☆生活』— 古き良き日本映画の香りを漂わせた、愛おしさ120%のトンデモ映画

  • 2019年03月20日更新

カメラを止めるな!』の空前のヒットでインディーズ映画への注目が高まるなか、またもや見逃せない快作が登場した。2017 年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭のグランプリに輝いた『トータスの旅』の永山正史監督が、その受賞で手にした次回作制作補助金を基に完成させた本作は、古き良き日本映画の香りを漂わせながら、昨今のオーガニックブームや高齢ニートの姿をユーモアたっぷりに描き、終いにはスプラッター&怪奇な展開が待ち受けるという、愛おしさ120%のトンデモ映画だ。

オーガニックかぶれの外来種一家が、50歳の独身ニートの日常を脅かす

主人公のタカシは、50歳の独身ニート。認知症の叔父の介護を条件に、本家に居候している身だ。多くを望むことはとうの昔に置いてきて、趣味といえば広い空の下で昭和歌謡を口ずさみながらボンゴを叩き鳴らすこと。のどかな風景に囲まれた田舎の茅葺き屋根の一軒家で平穏に暮らしているなか、叔父の他界により本家の息子のミツアキが帰省してくる。幼馴染のショウも交え、再会を果たした旧友3人は叔父の遺した釣り堀を営みながら、それなりに楽しく暮らしはじめる。 しかし、そんな生活に脅威が出現する。田舎のナチュラルライフに憧れ、古民家カフェの開業を夢見る外来種一家が東京から引っ越してきたのだ。彼らは半ば強引にタカシの暮らす家を借りようと画策する……。

川瀬陽太、津田寛治を中心に個性派揃いのキャスティングが魅力!

タカシを演じるのは、インディーズ映画からメジャー配給の大作まで多くの作品に出演する川瀬陽太。都会からやってきた一家の主人に扮するのは、変幻自在な演技で多彩な活躍をみせる津田寛治。映画ファンから絶大な支持を受ける2人の共演と聞いただけで、食指が動く読者も多いに違いない。さらに、ショウ役の鶴忠博、ミツアキ役の谷川昭一朗といった個性的かつ実力派の面々がなんともいえない味わいとおかしみを醸し出し、本作を彩る。ナチュラリストの妻を演じる三枝奈都紀のエキセントリックな表情や、天然小悪魔な娘役の秋枝一愛もキュートなだけに一層憎たらしくて目が離せない。秋枝は映画初出演とのことだが、これからチェックしていきたい女優の一人となった。絶妙なキャスティング(亀を含む)は、この映画の大きな見どころの一つだ。

インディーズだからこその魅力がふんだんに詰まった快作!

うだつの上がらぬ中年男3人組の前に現れた、SNS映えを体現するような一家。家庭ファーストな夫と、聡明で美しい妻と娘。食卓にはマクロビオティック料理が並び、近隣住民に笑顔を振りまく仲睦まじい姿は、一見すると勝ち組だ。しかし、両親の愛情をたっぷり受けて育った(はずの)娘のひねくれっぷりや、高圧的な妻の顔色を伺う夫の心の闇などが辛辣かつコメディチックに垣間見えると、気ままなタカシの暮らしのほうが何倍も楽しそうにも思えてくる。とはいえ、タカシの生活を犠牲にしてオープンした古民家カフェだって、地方でひきこもっていた女性に雇用と活路を与えていたし、タカシだって心の中にくすぶる思いが存在していたことを、終盤における怒濤の展開が証明する。言葉にすれば当たり前のことだが、幸せのカタチとは実に個人的で多様かつ複雑なものだ。ましてや他人が勝ち負けで測るものではない。

情緒とユーモアたっぷりのほのぼのとした前半から、キョーレツな展開をみせる荒唐無稽なクライマックスまで、インディーズだからこそ描けたといえる映画の魅力がふんだんに詰まった本作。観ればなぜか力が沸いてくる、全力でオススメしたい一作だ。

▼劇場公開を記念して製作された、特別動画「川瀬陽太× 津田寛治ほろよい対談@新宿ゴールデン街」も、名優二人の俳優談義を楽しむことができる、本編と併せてチェックを!

劇場公開記念!特別動画「川瀬陽太× 津田寛治ほろよい対談@新宿ゴールデン街」

 

 

▼『天然☆生活』作品・公開情報
(2018年/日本/96分 )
英題:BEING NATURAL
監督・編集:永山正史
脚本:鈴木由理子、永山正史
出演:川瀬陽太、津田寛治、谷川昭一朗、鶴忠博、三枝奈都紀、秋枝一愛 ほか
キービジュアルデザイン:高橋ヨシキ
製作:弥富圭一郎、永山正史
製作協力:ゆうばり国際ファンタスティック映画祭
音楽:Eriya Ishikawa
特殊造形:百武朋
VFX:佐治英理人
配給:Spectra Film・

©TADASHI NAGAYAMA

『天然☆生活』公式サイト

※2019年3月23日(土)より新宿K’s cinemaほか全国公開

文:min

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