『KUSO』ジャパンプレミアレポート— “史上最もグロな映画”を撮ったフライング・ロータスが来日!奇才が語る日本カルチャーへの熱い愛!

  • 2018年08月17日更新

大地震後のロサンゼルスを舞台に、奇病におかされながら生活する人々の狂気のストーリーを描く映画『KUSO』。サンダンス映画祭2017の上映では退席者が続出したという、“史上最もグロテスクな映画”のジャパンプレミアが、2018年8月16日(木)に渋谷・シネクイントで開催され、監督の“スティーヴ”ことフライング・ロータスが登場した。プロデューサーやビートメーカーとして音楽界では世界的な成功を手にしているフライング・ロータスが、映画制作に挑んだ理由や、幼い頃から影響を受けているという日本のカルチャーへの熱い思いを語った——。


日本は第2の故郷。ラーメンから映画、アニメまで日本のカルチャーが大好き!

映画『KUSO』メイン画像8月17日(金)開催の「ソニックマニア 2018」への出演も兼ねて来日したフライング・ロータス。大叔父はジョン・コルトレーン、大叔母はアリス・コルトレーンという音楽一家に生まれ、LAビートシーンを牽引するレーベル「BRAINFEEDER」の主宰、音楽プロデューサー、DJ、ラッパー、映像作家など、多彩な肩書きで世界的に活躍する奇才だ。そんな彼(以下、スティーヴ*監督と表記)にとって初の長編監督作となる『KUSO』(原題同じ。18禁)は、奇病が蔓延する大地震後のロサンゼルスを舞台に、首に喋る“こぶ”ができた女や、“とんでもない虫”で人を治療する医者、常にお腹を下している男の子、コンクリートを食べる女性……など、さまざまな人々の狂気のストーリーを94分間にわたって描く衝撃作。*スティーヴは映画監督時の名義

映画上映後、衝撃の余韻から醒めやらぬ観客たちを前に、「アリガトウ! 皆に会えてうれしいよ!」と日本語を交えて挨拶するスティーヴ監督。続けて、「ねぇ、元気(笑)? 映画はどうだった? 皆のために作ったんだよ(笑)!」と自ら爆笑しながら呼びかけると、客席からも大きな笑い声と拍手が沸き起こった。

幼い頃から、日本の映画やアニメに大きな影響を受けてきたというスティーヴ監督は「10代の頃から20年間くらい、日本映画にインスパイアされてきたんだ。三池崇史、北野武、塚本晋也は僕にとってのヒーロー! 今回は、日本の映画からもらったインスピレーションへの恩返しができたかなと、喜ばしく思っているよ」と熱く語る。

そんな親日家の監督は、2008年に初めて日本を訪れて以来、今回が8回目の来日だという。日本の印象についてあらためて聞かれると、「子どもの頃から、ラーメンからアニメまで日本のカルチャーが大好き! 日本は僕にとって第2の故郷みたいなもだと思っている。だから、初めての長編映画を日本で観てもらえるのが、すごく嬉しいんだよ!」と弾けるような笑顔を見せた。

音楽より先に映画を勉強。注目はジョージ・クリントンの名演技

『KUSO』というタイトルは、ご想像通り日本語の「糞」から取ったそうだが、その理由については「笑えるし、アメリカでは言葉に出しても問題ないからさ(笑)。あぁ、日本ではそういうわけにいかないよね(笑)。でも、自分にとってはいろんな意味合いのある言葉だし、映画ってそういうものでしょ? 観る人によって、いろいろな受け取り方があってもいい」と、ジョークを混ぜつつ真剣に語る。

映画制作に挑んだ理由ついては「実は、音楽より先に映画監督を目指していたんだ。ハイスクール卒業後、映画学校にも通ってまじめに勉強したよ。そうこうしているうちに音楽のキャリアのほうが先にスタートしたけど、いつかビジュアルの仕事もやるぞと思い続けてきた。そして、ようやく時間ができて、今回の長編映画制作に取り組むことができたんだ」と、意外な過去を明かした。

BRAINFEEDERのアーティストをはじめ、友人たちや周囲の人々の協力で作り上げたという本作。監督は「本当の意味でインディペンデント映画だよね。自分でお金を出して、友だちの皆が協力してくれて。大変だった分、本当に楽しんで作ったんだ」と満足気に振り返る。

“おっぱい恐怖症”の男性と登場する医師役のジョージ・クリントンについては「あれは、もちろんジョージに向けて書いた役(笑)。彼は期待以上の演技を見せてくれたよ。ただ、撮影初日はひどかった!『セリフを覚えてないんだけど』とか言ってくるし、『俺が役者の経験ないのわかっているよね?』なんておどしてきて、超ビビったけど(苦笑)。実際に撮影が始まったら、バッチリ!彼は、自分が何を求められているか、即興的にわかっていたんだ」と撮影時の貴重なエピソードを披露した。

次回作はすでに進行中! さらにクレイジーな映画になるかも!?


すでに進行中だという次回作については、「今作の経験を踏まえて、次回はもっと時間の余裕をもって撮影しようと思う。脚本みたいに文章を読んで頭で考えることと、実際の現場に身を置いて感じるものは違うから、役者たちと一緒に“場を感じる時間”を持つことが大事だと思ったんだ。ぜひ今後に生かしたい」と意気込みを語る。物語の内容については、「いくつか進行中のものがあるけど、実際に書きはじめている脚本が1本あって、これは自分でも完成が楽しみでしょうがない。今作以上にというか、違う意味でクレイジーな作品になるよ!」と観客たちの期待を煽った。

最後は、再び好きな日本カルチャーの話題に戻り、「アニメなら『僕のヒーローアカデミア』『ドラゴンボール『カーボイビーバップ』が大好き。日本独自の発想に魅力を感じるんだ。『殺し屋1』『AKIRA』『エヴァンゲリオン』……ああいう作品はアメリカで作ろうと思っても無理。もちろんアメリカにも美しい作品はあるし、どちらが良いということじゃなく、“違い”だよね。日本には先見の明のあるアーティストが大勢いると思うよ」と語り、「今日は観に来てくれてありがとう。このSHIT……“糞”を楽しんでほしい(笑)。明日のソニックマニアでは皆でパーティーしようぜ!」と呼びかけ、拍手に包まれながら会場を後にした。

本作は、8月18日(土)より渋谷・シネクイントにて1週間限定レイトショー。狂気が渦巻く94分間に、あなたは耐え抜くことが出来るだろうか——!?

 

(取材・編集・文:min イベント撮影:ハルプードル)

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▼『KUSO』作品・公開情報
映画『KUSO』メインビジュアル(2017年/アメリカ/94分/R-18+)
原題:KUSO
監督:スティーヴ(フライング・ロータス)
脚本:デヴィッド・ファース、スティーヴ
音楽:フライング・ロータス、ジョージ・クリントン、エイフェックス・ツイン、山岡晃
出演:ハンニバル・バーエス、ジョージ・クリントン、デヴィッド・ファース
配給:パルコ 宣伝協力:ビートインク
『KUSO』公式Facebook 公式Twitter:@KusoEiga

※2018年8月18日(土)より渋谷・シネクイントにて1週間限定レイトショー

 

>>>『KUSO』予告編<<<

  • 2018年08月17日更新

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