『オー・ルーシー!』〜苦難続きの恋! それでも愛は人生の可能性を開いてくれる〜

  • 2018年04月27日更新

映画『OH_LUCY』_main寺島しのぶ、ほか日本の実力派俳優陣、さらにインディペンデント映画を愛するハリウッド俳優のジョシュ・ハートネット(2001年『パール・ハーバー』)が、新人監督作品に出演。米国映画学校で実力を培った、平栁(ひらやなぎ)敦子監督の才能を後押しする。人生を諦めていた中年女性が、恋の力で、孤軍奮闘。アメリカへの旅で手にするものは? 人生の可能性を広げる、愛と希望の物語。
2018年4月28(土) ユーロスペース、テアトル新宿ほかにてロードショー

アメリカンネームとウィッグ、そしてジョンのハグが節子を目覚めさせる

映画『OH_LUCY』_2【あらすじ】モノが溢れる部屋で孤独と戦いながら暮らす節子(寺島しのぶ)は、あらゆる感情を抑えつつ、地味に働く43歳。ある朝、人身事故に遭遇して、憂うつな気分に襲われる。そんなとき、不仲な姉・綾子(南果歩)の娘で、メイド喫茶で働く姪の美花(忽那汐里)に呼び出され「お金が必要だから、おばちゃんに私の分の英会話レッスンを買い取って欲しい」と頼まれ、一風変わった英会話教室に通い始めることに。講師のジョン(ジョシュ・ハートネット)は、節子に「ルーシー」というアメリカンネームと金髪のウィッグを与える。同じくトムと名付けられた会社員・小森(役所広司)とともに、ネイティブ・アメリカン式の挨拶を交わすレッスンが始まる。最初は戸惑っていた節子だが、ジョンの熱いハグによって自分の中に眠っていた感情や欲情を呼び起こされてしまう。ところが、次のレッスン向かうと「ジョンは突然辞めて、アメリカに帰った」と告げられる。実は美花とジョンは恋人同士。2人で日本を去ってしまったのだ。事実を知ってもジョンを忘れられない節子は、届いたポストカードを頼りに、カリフォルニアへ向かうが、不仲の綾子まで付いてきてしまう。そして、節子たちはカリフォルニアでジョンと再会するが……。

寺島しのぶ会心のはまり役! あなたもルーシーにリンクする

映画『OH_LUCY』_3リアルすぎるほどリアルなヒロイン、節子を演じたのは、寺島しのぶ。生まれも育ちもサラブレット女優でありながら『ヴァイブレータ』(2003年・廣木隆一監督)『キャタピラー』(2010年・ 若松孝二監督)など、体当たり性の強い演技で高い評価を得てきた。今回も生きづらい女性を体現しているが、本作では、表現を細微にわたってコントロールしながら役を楽しんでいるような爽快さを感じる。次々と運命の揺さぶり、主に悲劇が、節子に襲いかかってくる。そして雪だるま式に心をむき出しにされながら、自らも加速して殻を破っていく。愛し、愛されたい「ルーシー」の危うい言動や感情が、観ているとだんだん己のもののように、身と心に沁み込んでくる。

一気に噴出する本音と事情。超リアルな女たちの95分

映画『OH_LUCY』_4「妹・節子の恋人を奪ったものの、結婚生活が崩壊」という背景を持つ、つっけんどんな姉・綾子役の南果歩も、リアルを超えた「超リアル」な存在。極端な言動にも説得力がある。節子、綾子、美花(そしてジョンも)、登場人物たちは、いずれも常軌を逸した、自己中心的な行動が目立っていく。しかし、本当の悪人ではないことも、同時に明確に描かれる。おのおのが隠していた内面、抑えていた事情が一気に噴出し、運命がクロスすると、ここまでこじれてしまうのか……。凝縮されたエゴのと不運の連鎖。しかし、そんな中でも、なりふりかまわず幸せを掴みとろうとし、愛を求めるヒロインのエネルギッシュな奮闘は、不思議な輝きを放つ。

希望をもたらせる天使のような「トム」

映画『OH_LUCY』_5恋を通して、押し殺していた自分を解き放ち、運命と戦いながら成長しようとする「ルーシー」となった節子。ポジティブなエネルギーを発揮して奮闘するも、その戦いは、相当にヘビー。女たちのバトルもかなり壮絶で、本作は、単純なコメディとは一線を画す。しかし全編を通し、この世界観を明るく照らす一筋の光のような存在がある。役所広司演じる、トムこと小森だ。脚本も、俳優・役所広司の力も素晴らしく、登場回数は多くないものの、見事に物語を展開させている。

自らのアメリカ武者修行も作品に反映した、平栁監督

映画『OH_LUCY』_6監督、平栁敦子は、ニューヨークの映画学科修了制作として、2014年に短編の同名作品を桃井かおり主演で撮影。その短編版は、カンヌ国際映画祭の学生部門で第2位を受賞、ほか各国で様々な賞を受賞している。本作は長編としての再映画化だ。平栁監督は、高校生でアメリカに移住。当時は「おとなしいアジアの女の子」というレッテルを貼られて苦しんだという(本当は英語をしゃべれなかっただけ)。その経験が、本作の節子の旅に反映されているという。平栁監督によれば「おとなしい人ほど、語るべきことを山ほど抱えている」。その人が語り始めたらどうなるか 、という想像からこの作品が生まれたという。たとえ砕けて散りそうでも、己の殻を破れば、その先に希望が見える。明日のあなたの背中をほんのちょっと押してくれる。そんな希望の物語だ。

>>>『オー・ルーシー!』予告編映像<<<

 

映画『OH_LUCY』_7▼『オー・ルーシー!』作品・公開情報
(2017年/日本・アメリカ合作/5.1ch/ビスタ/カラー/95分/R15+)
原題:OH LUCY!
監督・脚本:平栁敦子
出演:寺島しのぶ、南果歩、忽那汐里、役所広司、ジョシュ・ハートネット ほか
配給:ファントム・フィルム
© Oh Lucy,LLC

『オー・ルーシー!』公式サイト

※2018年4月28(土) ユーロスペース、テアトル新宿ほかにてロードショー

文:市川はるひ

  • 2018年04月27日更新

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