『消された女』〜ホラーよりも恐ろしい惨劇!韓国の闇を描いた社会派サスペンス〜

  • 2018年01月20日更新

映画『消された女』合法的に精神病院に強制入院、監禁され、殺人の汚名までも着せられた女。興味を持ったテレビプロデューサーが調べを進めると、身も凍るような、底なしの闇が現れて……。韓国に実在した「精神保健法第24条」にまつわる惨劇を描いた社会派サスペンス。嘘と真実に揺れながら、深まる謎に釘付けになる問題作。
2018年1月20日(土)より、シネマート新宿・シネマート心斎橋ほか全国順次公開。
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不当な強制入院、覚えのない殺人容疑……底なしの深淵!

映画『消された女』【あらすじ】やらせ問題でトップから転がり落ち、テレビ業界から干されかけているプロデューサーのナ・ナムス(イ・サンユン)。今や振られる仕事は、低俗で不本意な番組ばかり。そんなナムスの元に1冊の手帳が届く。内容は、精神病院に強制入院させられた女性カン・スア(カン・イェウォン)が綴った日記だった。突然拉致され、暴力的な手段で精神病患者に仕立て上げられる、理不尽で恐ろしい日々。その手帳の内容に興味を持ったナムスがスアの元をたずねると、彼女はなぜか殺人事件の容疑者として収監されていた。そしてスアがいたという精神病院は火災で焼失し、スアの入院記録はないものとされていた。しかしその病院では、火災後の遺体と入院患者の数が合わないという不可解な事実も。硬い結び目のような謎を解明しようと、ナムスが調査を進めると、そこにはさらに深く恐ろしい闇と、蠢く欲望が待ち受けていて……。

実在した「精神保健法第24条」。悪夢はどこまで続くのか?

映画『消された女』突然、街中で拉致され、健康であるにもかかわらず、身内の申し出で精神病院に強制入院させられる……そんなエグい出来事が、韓国では実際に起こっていたという。保護者と専門医の判断があれば「保護入院」の名のもと、本人の同意なしに 強制入院を実行できる「精神保健法第24条」。もし屈強な男がいきなりあなたを捉え、拘束したら? 暴力を振るわれ、薬漬けにされ、電気ショックを与えられ続けたら……。話し相手もなく、聞こえてくるのは、精神が壊れた人々の叫び声や笑い声だけ。想像するだけで恐ろしい体験を映像化している本作。悪夢はどこまでエスカレートするのか、と不安があおられるスピーディーな展開。目を覆いたくなるような恐怖なのに、思わず釘付けになってしまう。俳優たちの熱演と、緻密で繊細な演出が光る。

社会への大きな影響力の一方で、見事なエンターテイメント性も

映画『消された女』「精神保健法第24条」を悪用することがどれだけ理不尽で、恐ろしい問題なのかを明らかにした本作は、公開後に大きな話題となった。そして「精神疾患患者の入院には、本人の同意がなければ憲法違反となる」との判決が下ったという。それほど、自国の社会に大きな影響を与えたのだ。また一方で、この作品は、エンターテイメントとして素晴らしい計算が尽くされている。己の欲望に飲まれ、落ちぶれたプロデューサーの目線で物語は進む。そこに登場するのは、悲しみと恐怖に満ちたヒロイン、そして異常さ全開の精神病院院長ら。それぞれの多様な欲望、怒り、業が入り混じり、ストーリーや人物は複雑に絡み合う。観客は迷宮に放り出され、混乱ののち、やがて細く強い光を放つ真実へと導かれることになる。

 

映画『消された女』▼『消された女』作品・公開情報
(2016年/韓国/カラー/91分/シネマスコープサイズ/5.1ch/DCP)
原題:『날, 보러와요(私に会いに来て)』(英題『INSANE』)
監督:イ・チョルハ
出演:カン・イェウォン、イ・サンユン、チェ・ジノ ほか
配給・宣伝:太秦
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『消された女』公式サイト

※2018年1月20日(土)より、シネマート新宿・シネマート心斎橋ほか全国順次公開

文:市川はるひ

  • 2018年01月20日更新

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