『52Hzのラヴソング』― 恋する幸せに心が踊る!とびきりハッピーな台湾製ミュージカル

  • 2017年12月16日更新

『52Hzのラヴソング』バレンタインデーの台北を舞台に、年代も性別も越えたさまざまな人々の愛のカタチと出会いを描く、とびきりハッピーなミュージカル映画が日本公開を迎えた。メガホンを握ったのは台湾映画の歴代興収1位を誇る『海角七号 君想う、国境の南』や台湾映画史上最高額をかけて制作され日本でもヒットした『セデック・バレ』などを手がけた、ウェイ・ダーション監督。「ウェイ監督といえば重厚な歴史ドラマ」というイメージが、本作では見事に覆される。カラフルでポップな世界観と洒落た旋律の17曲のラヴソングは、恋する喜びを見失いかけた人々の心を躍らせ、見慣れた日常の風景さえまぶしく輝かせるだろう。

メインキャストを演じるのは4人の若手実力派ミュージシャンたち

メインキャストを務めるのは、「宇宙人 (Cosmos People)」のシャオユー(リン・ジョンユー)、もと「棉花糖」のシャオヨー(ジョン・ジェンイン)、ウェイ監督がプロデューサーを務めた映画『KANO~1931海の向こうの甲子園』の主題歌を歌った「トーテム」のスミン、「小男孩樂團」のミッフィーなど、台湾で人気の若手実力派ミュージシャンたち。そして、脇を固めるのは、『セデック・バレ』で主人公のモーナ・ルダオを演じたリン・チンタイや、ベテラン歌手のシンディ・チャオといった個性と魅力溢れる面々だ。演技経験よりも演者自身のキャラクターと役の親和性を重要視するウェイ監督らしいキャスティングにも注目してほしい。

恋に不器用な人々が過ごすそれぞれのバレンタインデー

『52Hzのラヴソング』バレンタインデーの台北。花屋を営むシャオシン(ジョン・ジェンイン)の商売はかき入れ時だが、一緒に過ごす彼氏がいない。パン屋の職人シャオアン(リン・ジョンユー)は、片想いの女性レイレイ(チェン・ミッフィー)が恋人のダーハー(スミン)へ贈るためのチョコレートを作っている。それぞれの切なさを胸にしまい込み、シャオシンは車で花を、シャオアンはバイクでチョコレートを配達に出る。しかし、2人は接触事故を起こし、シャオシンの車が動かなくなってしまう。仕方なくシャオアンのバイクで一緒に両方の配達をすることにする2人。一方、ミュージシャンとして芽が出ないダーハーの生活を10年間も支え続けているレイレイは、先の見えない生活に終止符を打つべきか迷っていた。そんな彼女の思いも知らず、ダーハーはバレンタインデートでプロポーズしようと画策するが……。

恋の輝きを知りながら、自ら孤独に寄り添ってしまう

『52Hzのラヴソング』恋をすると目に映るすべてのものが輝き出す。しかし、恋に傷つけば、いつの間にか臆病になって、安全な場所から出ることすらためらってしまう。バレンタインデーに沸き立つ街で、恋に臆病な花屋の若き女主人シャオシンと、片思いをこじらせるパン職人の青年シャオアンは、幸せそうな人々を羨ましく思いながらも、別世界のことのように傍観するだけだ。恋人と同棲中のレイレイだって、彼との関係に確認が持てず、合同結婚式に出席するカップルたちの輝く笑顔も他人事にしか思えない。そこから一歩踏み出せば、世界は再び輝き出すかも知れないのに。勇気を出せず、自ら孤独に寄り添うことを選んでしまう。

映画を通して人々の幸せを願う、ウェイ・ダーシェン監督流のラヴソング

『52Hzのラヴソング』クジラは、特定の周波数で歌うことで仲間とコミュニケーションをとる。しかし、25年以上前に発見された1匹のクジラは、仲間とは違う周波数で歌い、ほかのクジラとコミュニケーションがとれないまま、今もどこかの海を孤独に泳ぎ続けているという。タイトルの“52Hz”とは、世界で一番孤独なクジラが発する音の周波数であり、そこには、都会の孤独な人々に向けた「決してひとりじゃないよ」というウェイ監督のエールが込められている。

『52Hzのラヴソング』これまで国内外の映画祭で高い評価を得てきたウェイ監督が、本作では映画祭のコンペティションへは一切エントリーしないことを発表している。その理由については、「映画を見た人が笑顔で心躍らせ幸せな気分で映画館を出て行ってほしいと願って作った作品。コンペティションに出すための作品ではない」とコメントしている。一見ポップで軽やかな作品にも、やはりウェイ監督らしい深い思慮と情熱が注がれていることを知り、ファンとしては感慨深い。

今いる場所から、一歩踏み出そう!

『52Hzのラヴソング』恋が、暗い世界を一瞬で希望に変える力を持っていることを、多くの人は実体験として知っているはすだ。
それでも、臆病なゆえに不毛な関係に甘んじていたり、恋をしたいと願いつつ自分のテリトリーに引きこもっているなら、今すぐおしゃれをして、そこから一歩踏み出してみよう。
失敗したって後悔する必要はない。変化はいつだって、あなたのすぐそばにある。

 

 

▼『52Hzのラヴソング』作品・公開情報
『52Hzのラヴソング』メインビジュアル

原題:52Hz, I Love You
監督・脚本:ウェイ・ダーション(魏徳聖)
音楽:リー・ジェンファン、ジェニファー・ジョン・リー
作詞:イエン・ユンノン
出演:リン・ジョンユー、ジョン・ジェンイン、スミン、チェン・ミッフィー、リン・チンタイ、シンディ・チャオ
特別出演/リー・チエンナ、チャン・ロンロン、ファン・イーチェン、田中千絵 ほか
提供:ポリゴンマジック
配給:太秦
© 2017 52Hz Production All Rights Reserved.

『52Hzのラヴソング』公式サイト

※2017年12月16日(土)よりユーロスペースほかにて全国順次公開

文:min

◆関連記事:『52Hzのラヴソング』ウェイ・ダーション監督インタビュー

  • 2017年12月16日更新

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