『彼女が目覚めるその日まで』-突然原因不明の病に侵された女性をクロエ・グレース・モレッツが熱演

  • 2017年12月16日更新

「人格を奪われ、正気と狂気の間をさまよう病」抗NMDA受容体脳炎を発症したニューヨーク・ポスト紙の女性記者、スザンナ・キャラハン。彼女の壮絶な闘病を綴った本をシャーリーズ・セロンらがプロデュースし、映画化した。行き詰まった状況にありながら、決してあきらめない家族と恋人の心が希望をつなぐ。

前途洋々の人生に訪れた悲劇

21歳のスザンナは憧れだったニューヨーク・ポスト紙で働く駆け出し記者だ。いつか一面を飾る記事を書きたいと、仕事に邁進する日々を送っている。ミュージシャンの恋人スティーヴンとの交際も順調だ。

しかし、その徴候は突然現れた。めまい、不眠、手足の麻痺、物忘れ……。病院の検査結果は異常なし。ついに彼女は大切な取材で暴言を吐くという失態を犯す。

その後も幻覚、幻聴、けいれん発作に襲われ、ついには会話もできなくなる。病院から精神科への転院をすすめられるが、家族やスティーヴンはスザンナの瞳の奥の叫びを感じとっていた。

 

『エクソシスト』の実在モデルも発症!?

日本でも年間1000人ほど発症しているという「抗NMDA受容体脳炎」。免疫の異常を原因とし、“感情のコントロールができなくなる”“人間性が崩壊したかのような毒舌を吐く”“不自然に身体が動く”などの症状が出る。また、重症の場合は昏睡し死に至る場合もあるという。映画『エクソシスト』の少女のモデルになった実在の少年については、この病気だった可能性が指摘されている。

主演のクロエ・グレース・モレッツは、役作りのためスザンナ本人と話した際に、会話の内容だけでノートの12ページ分が埋まったという。発症前の希望と自信に満ち溢れた表情、原因不明の症状への戸惑い、壮絶な闘病の様子など、全身全霊で挑んだ演技は圧巻だ。

ビッグネームが関わった意義は大きい

スザンナの場合、ある意味幸運だったのだろう。彼女には、最後まで希望を持ち続けた両親と恋人がいた。小さなヒントから治療の糸口を見つけてくれた医師もいた。だが、症例数が少ない病気では、必ずしも適切な診断がつくとは限らない。彼女と同じ病気の患者が周囲から白い眼で見られ、挙げ句の果て精神科病棟で間違った薬剤を投与される可能性もある。

それを考えると、シャーリーズ・セロンとクロエ・グレース・モレッツというビッグネームが関わった本作は、映画という枠を超え、この病気に対する認知向上に大きく貢献したのではないだろうか。

世の中には、病気が原因なのに、外見上はわからないため怠惰だと思われたり、“本人の性格のせい”と誤解されたりして苦しんでいる人は多い。この作品が、そうした病気に対する理解への一助になってほしい。

▼『彼女が目覚めるその日まで』作品・公開情報
原題:BRAIN ON FIRE
(2016/カナダ・アイルランド/英語/89分)
監督・脚本:ジェラルド・バレット
出演:クロエ・グレース・モレッツ、トーマス・マン、キャリー=アン・モス、リチャード・アーミティッジ、タイラー・ペリー、ジェニー・スレイト
配給:KADOKAWA
原作:「脳に棲む魔物」スザンナ・キャハラン著・澁谷正子訳(KADOKAWA刊)

© 2016 ON FIRE PRODUCTIONS INC.

※2017年12月16日(土)角川シネマ有楽町ほかロードショー

 

文:吉永くま

  • 2017年12月16日更新

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