『ジュリーと恋と靴工場』-“なにもない”女性が自分の足で一歩前に踏み出す姿を描くフレンチ・コメディ・ミュージカル。

  • 2017年09月23日更新

主人公は“なんでもするけど、なんにもできない”25歳のジュリー。高級靴工場に就職した彼女が、同僚の女性たちと行動をともにし、人生を切り開いていく。ジャック・ドゥミテイストのカラフルな色彩やオリジナルの歌とダンスに注目。

 

 

やっと雇われた靴工場は閉鎖寸前だった!
仕事も彼氏もお金もないジュリーは、やっとのことフランス・ロマンにある高級靴の工場で職を得る。しかしその工場は、近代化の煽りを受けて閉鎖寸前だった。同僚の女性靴職人たちは抗議運動を起こすことを決意し、ジュリーもそれに巻き込まれていく。

彼女たちは「戦う女」と名付けられたヴィンテージ・コレクションの“赤い靴”を武器に、危機を乗り越えることを決意。そんな中、ジュリーは自由を求める運転手サミーに魅かれていく。

女性の心をつかむキュートでカラフルな世界
ジュリーは、素朴で可愛いが、SNSで自慢することなんて何もなさそうな、目立たないタイプ。就職直後にいきなり工場閉鎖という危機に直面するというタイミングの悪さも併せ持つ。強い意志と行動力を備えたキラキラ輝く女性がもてはやされる昨今だが、そんな風潮に疲れてしまった人に、ジュリーという主人公はすんなり受け入れられるはず。

一方、工場閉鎖というニュースに戸惑いながら、俄然生き生きし出すのが一緒に働く靴職人の中年女性たち。そのパワーにひきずられながらジュリーの人生が動いていく様も楽しい。

ジャック・ドゥミテイストと言われる所以のひとつ、カラフルでポップな色彩は女性の心をわしづかみにする。だが、ダンスについていえば、彼の監督作『ロシュフォールの恋人たち』のジーン・ケリーやジョージ・チャキリスなどの華麗な動きに比べると、こちらはゆるい。かなりゆるい(『ロシュフォールの恋人たち』も結構ゆるいのだが)。そして、このパーフェクトでないところが妙に心地良いのだ。

戦う女は“赤い靴”を履く
かつて“赤い靴”は、女の子が異人さんに連れられてどこかに行ってしまったり、死ぬまで踊り続けなければならなかったりと、悲しく怖い物語を連想させるものだった。時代は変わり、“赤い靴”はフラットシューズになり、自ら声を上げ、権力に屈しない戦う女の象徴となった。

工場の閉鎖は覆されるのか、せっかく手に入れたジュリーの仕事はどうなるのか、彼女の人生はどこへ向かうのか、物語の行く末が気になるところ。「自分には際立った個性も特技もない」と思い込んでいる多くの女性への応援歌。普段なかなか赤い靴を履く機会はないけれど、心の中に赤い靴を持っていたくなる。

 

▼『ジュリーと恋と靴工場』作品・公開情報
(2016年/フランス/フランス語/84分)
脚本・監督:ポール・カロリ、コスティア・テスチュ
出演:ポーリーヌ・エチエンヌ、オリヴィエ・シャントロー、フランソワ・モレルほか
提供:ギャガ、ロングライド
配給:ロングライド
サウンド・トラック:ランブリング・レコーズ
●『ジュリーと恋と靴工場』公式HP
© 2016 LOIN DERRIÈRE L’OURAL – FRANCE 3 CINÉMA – RHÔNE-ALPES CINÉMA

※2017年9月23日(土)より、新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国公開

文:吉永くま

  • 2017年09月23日更新

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