『禅と骨』-『ヨコハマメリー』の監督が追う“青い目”の禅僧の破天荒な人生

  • 2017年09月01日更新

大ヒット作『ヨコハマメリー』の中村高寛監督によるドキュメンタリー第2作。禅僧でありながら、人間臭く波乱に満ちた日系アメリカ人の人生が描かれる。8年の歳月をかけて作られた本作は、ドキュメンタリー、ドラマ、アニメから構成されており、ドラマパートでは、ウエンツ瑛士、余貴美子らが出演。また、エディ藩、CRAZY KEN BANDの横山剣、大西順子、岸野雄一、野宮真貴、コモエスタ八重樫らが音楽面をサポートしている。


波乱に満ちた迷走人生
京都嵐山にある世界遺産・天龍寺の禅僧、ヘンリ・ミトワ。彼は1918年、映画関連の仕事をしていたアメリカ人の父と新橋の芸者だった日本人の母との間に生まれた。1940年単身渡米。戦時中は適性外国人として日系人強制収容所で過ごす。戦後ロサンゼルスで家庭を築き、1961年に帰国した。

彼は日本文化、特に茶道・陶芸・文筆などに優れた才能を発揮し、風流人とも呼ばれ古都の文化人や財界人とも懇意になる。だが80歳を目前に突如、「“赤い靴”をモチーフにした映画を作りたい」と宣言。家族や周囲を周辺の人々を巻き込み、それまで築き上げてきた“青い目の文化人”という地位から大きく逸脱していく。


風流人の別の顔は“独裁者”?
中村監督は、今回もひと握りの人以外、世間ではあまり知られていない人間の人生を追いかける。だが、その人生は太く、長く、強烈だ。カメラはありのままのヘンリを映し出す。彼の家族の言葉から家では独裁者のように振る舞い、その奔放な性格で家族を翻弄してきたこと、また撮影中の監督に声を荒げる姿から決して穏やかな人間ではないことが露呈する。偏屈で頑固。それでも人を魅了するオーラがあり、物語の主役となるにふさわしい存在感を放っている。


「赤い靴」映画化への思いの行方
さまざまな職業や趣味に手を出し、傍からみれば迷走しているようにも見えるヘンリの人生。晩年、映画化に執着した童謡「赤い靴」のキーワードは、“横浜”と“異人”だ。彼は、戦時中日本でスパイと疑われ、渡米後は日系人として強制収容所に入れられた。そんな経験をしたことからも、最後までアイデンティティを模索していたのだろうか。

「赤い靴」の映画化への強い思いは、中村監督の手によって彼の人生とともにしっかり掬い取られる。だが、何しろ一筋縄ではいかない性格の持ち主。映画の観客が満足しても、草場の陰からはヘンリの怒声が聞こえてきそうだ。


▼『禅と骨』作品・公開情報
2016年/127分
監督・構成・プロデューサー:中村高寛
プロデューサー:林海象
ドラマパートキャスト:ウエンツ瑛士、余貴美子
宣伝:ザジフィルムズ・佐々木瑠都
配給:トランスフォーマー
©大丈夫・人人FILMS
●『禅と骨』公式HP
公開表記:9月2日(土)より、ポレポレ東中野、キネカ大森、横浜ニューテアトルほか全国順次公開
文:吉永くま

  • 2017年09月01日更新

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