『ロスト・イン・パリ』〜絵本のようにキュートな、サプライズいっぱいのコメディ〜

  • 2017年08月04日更新

映画『アイスバーグ!』『ルンバ!』などで高い評価を受けてきた現役道化師のカップル、フィオナ・ゴードンとドミニク・アベルによる風変わりなコメディ。パントマイムやダンスを駆使しつつ、レトロなサイレント映画とは一線を画す独創性もみせる。パリの風景を背景に、豊かな色彩で絵本のような映像美を楽しませながら、人生と自由の素晴らしさを、ユーモアたっぷりに描いている。2017年8月5日(土)より渋谷・ユーロスペースほか全国順次公開©Courage mon amour-Moteur s’il vous plaît-CG Cinéma


田舎から花の都パリへ! とびきり自由な大人たちの不思議な冒険
【あらすじ】雪ばかり降るカナダの小さな村。図書館司書のフィオナ(フィオナ・ゴードン)は、ある日パリに住むおばのマーサ(エマニュエル・リヴァ)から手紙を受け取る。「パリを愛しているのに、みんなが私を老人ホームに入れようとするの、助けて!」。これを読んだフィオナは、はじめてのパリ行きを決意し、出発。しかし、パリに着いてもマーサには会えず、フィオナはセーヌ川に落ちて荷物を丸ごと流されてしまう。一方、その荷物を拾った謎のパリジャン・ドム(ドミニク・アベル)は、偶然フィオナと巡り会うことに。数々のトラブルに巻き込まれながらも、フィオナはマーサおばさんを探し出そうとして…。


絵本のようにポップでカラフルな映像美と、ユーモラスなキャラクターたち
この作品は、目に飛び込んでくるすべてがポップな絵本のよう。美術や衣装が細部まで作り込まれていて、スクリーン全体が常に美しく彩られている。また、主人公のフィオナは、ポパイの恋人・オリーブ のように手足が長く、一挙一動がユニークで、マンガやおとぎ話の登場人物よう。一方ドミニク演じる、常にエレガントに振舞うホームレスのドムも、何をしでかすか予測ができず、妙な魅力がある。中でも見応えがあるのが、二人の踊るトリッキーなダンス。長回しで観せてたっぷり楽しませてくれる。この物語には「死」にまつわる出来事も登場するが、それをも含めて、本作は全てが「自由に生きる喜び」というテーマに結びついていくようである。


2017年に亡くなったエマニュエル・リヴァ、そのコメディエンヌとしての魅力
自由気ままな愛されキャラ、88歳のおば・マーサを演じているのは、ベテラン女優のエマニュエル・エヴァ。ミヒャエル・ハネケ監督『愛・アムール』(2012年)では、第85回米国アカデミー賞・主演女優賞にもノミネートされたが、今回はそのシリアスな演技とうって変わって、見事なコメディエンヌぶりを発揮している。楽しそうに複雑なステップを踏んでみせ、軽快な演技で観客をニヤリと笑わせる。彼女は残念ながら2017年1月に亡くなってしまったが、本作で演じた”生きる喜び”そのもののようなポジティブなマーサおばさんのキャラクターは、人々の胸に深く刻まれるだろう。彼女がフィオナやドミニクと紡ぎ出した本作は、まさに人生賛歌。自由な生き方の素晴らしさを、笑いながらじんわりと味わえる作品だ。


▼『ロスト・イン・パリ』作品・公開情報
(2016年/カラー/1:1.85/5.1ch/83分/フランス語、英語/フランス、ベルギー)
原題:『Paris Pieds Nus』/英題『Lost in Paris』
製作・監督・脚本:ドミニク・アベル、フィオナ・ゴードン
出演:フィオナ・ゴードン、ドミニク・アベル、エマニュエル・リヴァ、ピエール・リシャール
配給:サンリス
●『ロスト・イン・パリ』公式HP 

2017年8月5日(土)より渋谷・ユーロスペースほか全国順次公開
©Courage mon amour-Moteur s’il vous plaît-CG Cinéma

文:市川はるひ

  • 2017年08月04日更新

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