『君はひとりじゃない』-すれ違う父娘の心の距離を縮めたのは、思いもかけないことだった

  • 2017年07月21日更新

大切な人を亡くした父と娘、そして彼らと同じ痛みを持つ女性セラピストが織り成す「愛と再生」のドラマ。家族への愛憎や摂食障害といった現実的な問題にスピリチュアルな要素を絡ませ、残された者の葛藤と希望を描く。ベルリン国際映画祭銀熊賞と、ポーランドのアカデミー賞と言われるイーグル賞で主要4部門を受賞。


死への不感症と接触障害をもたらした心の隙間
検察官のヤヌシュは娘オルガと2人暮らし。彼は妻を亡くしたあと、事件現場で遭遇する人の死に何も感じなくなっている。一方オルガは父に対して心を閉ざし、摂食障害を患っていた。ヤヌシュは次第に痩せ細っていくオルガを見かねて、精神病院に入院させる。

そこではセラピストのアンナが、摂食障害の少女たちのリハビリを担当していたが、彼女自身もまた悲しい喪失体験をしていた。そんな彼女がヤヌシュとオルガに提案したのは、普通では考えられないような試みだった。


愛する人を亡くした喪失感を癒す方法とは
街で起こる殺伐とした事件、アンナの上司の差別的な言葉、回復の様子が見られない摂食障害の少女たち。マウゴシュカ・シュモフスカ監督はこの重苦しい現実に、突如「超自然的」な存在を登場させ,閉塞感を和らげる。アンナは息子を失った後、不思議な能力に目覚め、彼女が霊媒となって死者たちのメッセージを受け取っているのだ。


あの世から生還した遺体
霊界とこの世、心が通わない父と娘、病院の少女たちと社会をつなごうとするアンナ。その役割を果たすことで、自分自身が生きようとする。

「つなぐ人」「つながる人」はアンナだけではない。冒頭、ヤヌシュが駆けつけた自殺現場で、皆が目を離した隙に遺体が起き上がりすたすた歩いて去っていく。「元遺体」が経験したあの世とこの世。この唐突かつユーモアにあふれるシーンが、生と死という作品のモチーフのひとつを端的に表している。

スクリーンの向う側とこちら側を結び、登場人物たちの抱く悲しみや辛さ、不安、小さく芽生える喜びを追体験させてくれる監督もまた、「つなぐ人」だ。彼女が選んだのは、「期待を裏切る」と「期待通り」が混在するラスト。一瞬ぽかんとした後、笑いが込み上げて優しい気持ちになったら、それは監督の術中にはまった証拠だ。


▼『君はひとりじゃない』作品・公開情報
2015年/ポーランド/カラー/デジタル/ポーランド語/93分/映倫区分:G指定
原題:BODY
監督:マウゴシュカ・シュモフスカ
出演:ヤヌシュ・ガヨス、マヤ・オスタシェフスカ、ユスティナ・スワラほか
提供:東宝東和
後援:ポーランド文化広報センター
配給:シンカ
宣伝:スキップ
●『君はひとりじゃない』公式サイト
(C)Nowhere sp. z o.o.、 KinoŚwiat sp. z o. o.、 D 35 S. A.、 Mazowiecki Fundusz Filmowy 2015 all rights reserved.
公開情報 : 7月22日(土)よりシネマート新宿、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開

文:吉永くま

  • 2017年07月21日更新

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