『SHIDAMYOJIN(シダミョージン)』 〜 パンク・民謡・盆踊り!福島、沖縄の「限界集落」に寄り添う遠藤ミチロウの歌と旅〜

  • 2017年05月27日更新

80年代に過激な歌詞と言動で一大ムーブメントを起こした、ザ・スターリンの遠藤ミチロウの「今」を切り取ったドキュメンタリー。東日本大震災以降、遠藤ミチロウが故郷・福島の「盆踊り」にインスパイアされて結成した民謡パンクバンド「羊歯明神(しだみょうじん)」。福島にとどまらず沖縄や愛知でも歌い叫ぶ遠藤の姿と、観客の興奮をカメラでとらえながら、現在の日本における社会問題も浮かび上がらせる。
新宿K’s cinemaにて2017年5月27日(土)より公開スタート。以降、全国劇場および上映機会にて順次公開
© 2017 SHIDAMYOJIN


「民謡パンク」をひっさげ遠藤ミチロウが祭りを興す!
【あらすじ】東日本大震災以降の揺れ動く政治情勢の中、福島で生まれた「民謡パンク」を歌い続けているミュージシャン・遠藤ミチロウ。一方、福島第一原発事故後、ホットスポットとなった福島県いわき市・志田名(しだみょう)では、若者たちが自主避難し、残るは高齢者ばかりとなった。いわゆる「限界集落」だ。遠藤らは40年ほど盆踊りが途絶えていたこの土地に、自ら率いる民謡パンクバンド 「羊歯明神」の歌と演奏で、再び盆踊りを復活させる。そして震災以降、祭りから祭りへと駆け抜けてきた音楽活動の旅を再開。遠藤のラフな日常やインタビューをはさみながら、ヘリパッド建設問題に直面する沖縄・高江を経て、愛知・豊田大橋の大衆芸術音楽祭「橋の下世界音楽祭」の熱狂へと続く演奏の旅を、カメラが追う。


ヤーレン ソーラン ソーラン ソーラン ソーラン騒乱!
放射線衛生学者の木村真三氏とともに、福島県・志田名を訪れた遠藤ミチロウは、心を込めた挨拶をし、女性だらけの調理場で料理を作って人々に振舞う。その人懐っこい表情は、伝説のパンクバンド「ザ・スターリン」の攻撃的なパフォーマンスとは驚くほどかけ離れている。しかし、ひとたびギターを抱えて歌い始めると一転、ハスキーボイスでシャウトし、エネルギーを爆発させる。卑猥ともいえる色っぽい表現も健在で、ご婦人がたにも遠慮なく聴かせる。錆び付くことのないグルーヴで「音頭」「民謡」のイメージをガラリと変えてしまう遠藤のパフォーマンスは圧巻だ。原発事故にさらされた福島や日本へ向けられた歌詞は過激だが、攻撃ではなく励ましとして熱く響く。40年ぶりにいわき市・川前町に復活させた「福島・川前盆踊り2015」では、まばらに集まった人々を踊りの輪に誘うかのように、情念のこもった音頭や民謡を歌い上げる。やがて、やぐらを囲んで踊り始めた人々の表情も活気付き、踊りの輪がどんどん熱を帯びていく。映像を見ていると、その臨場感に巻き込まれていくような感覚を覚える。


羊歯明神」民謡パンクの旅、そして遠藤ミチロウの素顔
「川前盆踊り」を終え、遠藤ミチロウが向かったのは、沖縄の市街地。沖縄へは、学生運動をしていた18歳の頃(沖縄返還前)には「渡航許可が下りず、行くことが叶わなかった」という。さらに「沖縄の限界集落」と呼ばれる高江へと移動。志田名同様、限界集落の危機に拍車をかけている問題(高江の場合はヘリパット建設)など、日本の「棄民(きみん)政策」ついても遠藤は話す。その語り口から伝わってくるのは怒りではなく、冷静な分析と、これからの日本を憂う優しさだ。旅の合間の猫とのたわむれ、仲間と曲作りで盛り上がる遠藤の温かい表情にも、ホッと和まされる。またインタビューの中で「ミチロウ」の名の由来や父と芸能のかかわりなど、自分のプライベートなルーツについても触れており、遠藤の素顔を垣間見ることができる。そして、本作のクライマックスともいえる青空の下で行われている祭り、愛知・豊田大橋「橋の下音楽祭」へ。観客の熱狂ぶりが心地よく、この旅の集大成ように見える。しかし遠藤ミチロウ率いる「羊歯明神」の旅は、これからもまだまだ続いていくだろう。



▼『SHIDAMYOJIN(シダミョージン)』作品・公開情報
(2017年/日本/カラー/ステレオ/64分/ドキュメンタリー)
出演:遠藤ミチロウ、石塚俊明、山本久土、茶谷雅之、木村真三、伊藤多喜雄、めぐ留、PIKA、井出友好、志田名の皆さん ほか
監督:遠藤ミチロウ・小沢和史
プロデューサー:伊東 玲育・藤田功一
製作・配給:北極バクテリア
●『SHIDAMYOJIN(シダミョージン)』公式HP

新宿K’s cinemaにて2017年5月27日(土)より公開スタート!以降、全国劇場および上
映機会にて順次公開
© 2017 SHIDAMYOJIN

文:市川はるひ

  • 2017年05月27日更新

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