『ソング・オブ・ラホール』〜パキスタン音楽の再起をかけ、音楽職人たちがニューヨークジャズに挑む!〜

  • 2016年08月13日更新

パキスタン伝統音楽のミュージシャンたちが、ジャズの楽曲と、ニューヨークジャズバンドとの共演に挑むドキュメント。70年代から軍事政権などの影響で、音楽そのものを禁じられてきたパキスタン。その受難の歴史に触れ、水面下で受け継がれてきた彼らの超絶的な音楽も堪能できる。愛すべきミュージシャンたちの素顔にも注目。
8月13日(土)より渋谷・ユーロスペースほかにて公開
© 2015 Ravi Films, LLC


「全世界に知ってほしい。パキスタン人は芸術家であって、テロリストじゃないことを」
かつては映画や音楽の都として栄えたパキスタンの街、ラホール。しかし、70年代からイスラム化が進み、90年代にはタリバンが台頭。音楽そのものが禁じられ、ほとんどのミュージシャンが廃業せざるを得ず、新聞は「パキスタン芸術の静かな死」と報じた。やがて長い受難の時代を乗り越え、政権交代をきっかけに、状況は2000年前後から好転しはじめる。しかしもはやパキスタンから音楽ファンは消えてしまっていた。
そこで、細々と音楽活動を続けてきたパキスタンの伝統音楽継承者たちが立ち上がる。「国内で聞き手がいないなら、ジャズ界に打って出よう」。そしてシタールやタブラなど古典楽器を活かしたアンサンブルで「テイク・ファイブ」をカバーし、youtubeで発信。その独特な味わいと、伝統音楽の底力を感じさせる高い音楽性により、100万以上のアクセスを記録した。この動画はニュース番組にも取り上げられ、彼らの音楽は局地的な人気を博す。「パキスタンから現れた異色のジャズ・バンド”サッチャル・ジャズ・アンサンブル”」「他に類を見ない”テイク・ファイブ”」…やがて彼らの演奏はジャズミュージシャンのウィントン・マルサリスの目に止まり、ニューヨーク公演のゲストに招かれることに。胸躍る世界最高峰のジャズ・オーケストラとの共演。しかし、いざニューヨークでの共演リハーサルが始まると、音楽的習慣の違いなどから大苦戦、崖っぷちに立たされてしまう。しかし彼らは心から願う。「全世界に知ってほしい。パキスタン人は芸術家であって、テロリストじゃないことを」。さあ、果たして無事にニューヨーク公演の幕は上がるのか…?


前半ではパキスタン音楽文化の受難を知り、後半ではともに冒険気分を味わえる!
作品前半ではインタビューや過去の映像を通し、パキスタンで何が起こっていたのか、多くのことがわかる。暗く長い受難の日々を耐え忍んできたミュージシャンの心境。そして人々が少しずつ、文化的な生活や音楽を取り戻してきた様子。また、過去70年代以前には、映画や音楽の都「ロリウッド」と呼ばれたラホールの街が、いかに活気にあふれていたか…。そして作品後半、世界各地から大きな反響を受けたパキスタン音楽家たちの快進撃が始まると、本作はまた別の色を帯び始める。ニューヨークに到着したサッチャル・ジャズ・アンサンブルのメンバーは、街でストリートパフォーマーたちに遭遇。始めて出会う自由な表現にカルチャーショックを受け、新たな喜びを知る。「ニューヨークには音楽と真剣に向き合える自由がある! 」そしていざ迎えたリハーサルでの予想外の事態。読めない楽譜、不慣れな慣習、言葉の壁、シャイな性格…。雲行きはどんどん怪しくなっていく。ニューヨークジャズの洗礼だ。仲間を代表してここまでやってきたサッチャル・ジャズ・アンサンブルのメンバーは表情を硬くしていく。まさに「スウィングしなけりゃ”あと”がない!」こうして、私たち観衆は、微笑んだりハラハラしたりと、まるで彼らと一緒に旅に出ているかのように、その冒険にひきこまれてしまうのだ。


息を吹き返す、音楽の職人の表情に注目
本作は、パキスタンからアメリカへと大陸を渡ったサッチャル・ジャズ・アンサンブルの活躍を、2人の監督が追った共同作。 パキスタン生まれのシャルミーン・ウベード=チナーイ監督 と、アメリカ生まれのアンディ・ショーケン監督だ。2人によるこの感動的なドキュメントは、作品中で異なる国のミュージシャンたちが、音楽を通じて共鳴しあったように、作品そのもので見事なハーモニーを奏でている。
本作のクライマックスは、やはりニューヨーク公演での演奏。職人魂で難関を乗り越えようとするサッチャル・ジャズ・アンサンブルメンバーの率直な表情と、臨場感あふれる圧倒的な音楽性に、多くの人が心からの拍手を送るだろう。
しかし、パキスタンの音楽家たちの最終目標は、このニューヨーク公演ではない。ここでの成功をつかみとり、それをきっかけに国に音楽を取り戻すことなのだ。今度はこの作品をきっかけに、彼らの奏でる音楽に、国内外から多くの聴衆が集まるよう祈りたい。

(※本作公開を記念して9月にサッチャル・ジャズ・アンサンブルの来日公演や、CD発売が予定されています。詳しくは公式HPをごらんください。)



▼『ソング・オブ・ラホール』作品・公開情報
(2015年/カラー/DCP/82分/ウルドゥー語、英語/アメリカ)
原題:『Song of Lahore』
監督・製作:シャルミーン・ウベード=チナーイ、アンディ・ショーケン
出演・音楽:サッチャル・ジャズ・アンサンブル、ジャズ・アット・リンカーンセンターwithウィントン・マルサリス
配給:サンリス、ユーロスペース
●『ソング・オブ・ラホール』公式HP
8月13日(土)より渋谷・ユーロスペースほかにて公開
© 2015 Ravi Films, LLC

  • 2016年08月13日更新

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