『ロブスター』-“おひとり様”は善か悪か? ギリシャ出身の気鋭監督が描く不条理な世界

  • 2016年03月05日更新

パートナーを作ることを強要され、失敗すると動物に変えられてしまう近未来。このシュールな世界を作り上げたのは、これが初の英語作品となるギリシャ出身のヨルゴス・ランティス監督だ。コリン・ファレル扮する中年太りの冴えない主人公が、ゆるりと状況に適応していくのかと思いきや、物語は意外な方向へ進んでいく。そのほかレイチェル・ワイズ、レア・セドゥ、ベン・ウィショーなど、そうそうたる面々が出演。第68回カンヌ映画祭審査員賞授賞作。

独り身は罪? カップルにならないと動物にされてしまう世界
妻に捨てられたデヴィッドは、彼が“兄”と呼ぶ犬とともにあるホテルに連行される。この世界では独り身が禁止され、45日以内にホテル内でパートナーを見つけなければ、初日に自ら選んだ動物に変身させられてしまうのだ。だが、森に逃げた“独身者”たちを麻酔銃で一人撃てば期限は1日延び、パートナーが見つかれば、決められた過程を経て街に戻ることができる。
しかし、デヴィッドはある事件を境にホテルを脱走。彼が逃げ込んだ森には、かつてホテルにいた“独身者”たちが生活していた。そこでは逆に、恋愛禁止という厳格なルールが定められていた。

一方的なルールに抑圧されるのは現実社会と同じ
“おひとり様”は善なのか悪なのか。ホテルと森という2つの世界で、デヴィッドは相反する究極の選択を迫られる。“表”の世界では相手が見つからなければ、一方“裏”の世界では恋人を作れば、恐ろしい罰が待っている。ホテルではペアで踊らなければいけなかったのに、森ではヘッドフォンをつけて独りで踊り、好きな相手に触れることもできない。“常識”だと思っていたことが別の世界では“非常識”になり、逸脱することは許されない。そう、これは実際にも起こり得ること。不条理だと思っていた世界は、どうやら現実社会の縛りを拡大投影しているだけのようだ。

居心地の悪さがクセになる!
脱走先の森でも不自由を強いられるデヴィッドだが、ある女性に好意を持つようになる。しかし、行動も感情も抑えなければならない状況で、どのような手段に出るつもりなのか。
デヴィッド役のコリン・ファレルの“鈍”な雰囲気をはじめ、監督独特のユーモアが所々挿入され、窮屈さや息苦しさの中にどこか緩さが漂う。初めに覚えた居心地の悪さがいつしか快感になったら、それはランティモス監督の罠にはまったということになるだろう。

▼『ロブスター』作品・公開情報
(2015年/アイルランド・イギリス他/カラー/英語・フランス語/118分)
原題:THE LOBSTER
監督:ヨルゴス・ランティモス
出演:コリン・ファレル、レイチェル・ワイズ、ジョン・C・ワイリー、レア・セドゥ、ベン・ウィショー
配給:ファインフィルムズ
コピーライト:© 2015 Element Pictures, Scarlet Films, Faliro House Productions SA, Haut et Court, Lemming Film, The British Film Institute, Channel Four Television Corporation.

『ロブスター』公式サイト

※2016年3月5日(土)より、シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷他にて全国順次公開

文:吉永くま

  • 2016年03月05日更新

トラックバックURL:http://mini-theater.com/2016/03/05/33449/trackback/