『スライ・ストーン』― スライの波乱に満ちた半生に迫る、オランダ人監督による執念のドキュメンタリー

  • 2015年05月16日更新

伝説のファンクスター、スライ・ストーンの半生を追ったドキュメンタリー映画『スライ・ストーン』が、5月16日より新宿 K’s cinemaにて公開中だ。監督はオランダ人の映像作家ウィレム・アルケマ。1993年から20年以上におよぶ執念の取材で、スライの生い立ちから華々しい活躍と挫折、謎に満ちた隠遁生活と今年1月に勝訴を迎えた元マネージャーとの5年間におよぶ裁判の様子までを追い続け、これまでベールに包まれていた彼の波乱の半生を明るみにしていく。

見えない壁を軽々と越えていったファンクバンド“スライ&ザ・ファミリーストーン”

1960年代から1970年代のアメリカは、黒人解放運動、女性解放運動、ベトナム反戦運動などの高まりで大きな変貌を遂げようとしていた時代。その真っただ中の67年に人種・性別混合という異色のメンバー構成でデビューしたのが“スライ&ザ・ファミリーストーン”だった。ド派手な衣装に身を包み、あらゆる社会問題に切り込んだ歌詞を鮮烈なファンクサウンドにのせて歌い上げる彼らに、人々は瞬く間に魅了される。

68年リリースのセカンドアルバム『ダンス・トゥ・ザ・ミュージック』以降、『ライフ』『スタンド』『暴動』などのアルバムも高セールスを記録。シングル曲の「ダンス・トゥ・ザ・ミュージック」「エヴリデイ・ピープル」「サンキュー」「ファミリー・アフェア」などがポップチャートを賑わした。伝説の音楽イベント「ウッドストック」にも出演し、その存在は人種や偏見といった目に見えない壁を軽々と飛び越えて音楽界最大のビッグネームにまで登り詰める。

さらに、彼らのサウンドとスタイルはジャンルや世代を越え、あらゆるアーティストに影響を与えた。そのメンツにはマイルス・デイヴィス、ジミ・ヘンドリクス、ナイル・ロジャース、プリンス、マイケル・ジャクソン……といった伝説級のミュージシャンが名を連ねる。しかし、75年にバンドは突如解散。ソロとなったスライはドラッグによる生活の荒廃や度重なる逮捕で次第に表舞台から遠ざかっていき、ついには行方すら分からなくなる……。

膨大なアーカイブ映像の掘り起こしとインタビュー取材でスライの足跡と行方を追う

そして、93年。スライ&ザ・ファミリーストーンのアルバム『スモール・トーク』(74)に収録された「アイ・キャント・ストレイン・マイ・ブレイン」を聴いて衝撃を受けたアルケマ監督は、スライの行方を探す決意を固める。そこから始まった20余年の取材。同じくスライの熱狂的なマニアで彼の伝記本を書くために独自のリサーチを進めていたオランダ在住の双子の兄弟とタッグを組み、スライの生い立ちからの足跡を辿りはじめる。

本作の見どころは、それらの取材を通して掘り起こされた膨大なアーカイブ映像と、かつてのバンドメンバーやスタッフ、家族、ナイル・ロジャースやジョージ・クリントンといったミュージシャン仲間などの貴重な証言映像の数々だ。 06 年 2 月のグラミー賞授賞式に登場した時の舞台裏にも迫り、スライの隠された素顔が徐々に浮き彫りになると同時にスライ本人へと次第に近づいていく。それらすべてのパーツを丁寧に紡いでいった先で、ついにはスライ自身がカメラの前に座り真実を語り出す――。

音楽と寄り添い続けるスライの創作人生

もう一つの本作の見どころは、隠遁生活後も音楽と寄り添い続けていたスライの姿だろう。幼いころから音楽は常にスライの身近にあり続け、あらゆる形で創作活動を続けてきた彼の人生において、それは呼吸と同様のものだったのかもしれない。「あなたの最高傑作は?」という問いに、「(まだできていない)次作だ」と答えるスライは、音楽への純粋な愛情と渇くことのない創作意欲に溢れている。劇中に流れる数々の名曲が、今なお新鮮に聴こえることにもあらためて驚かされる。

類いまれな才能を持ちながら、多くの人々の期待を裏切り続けた張本人でもあるスライ。本作は一人のミュージシャンの軌跡を真摯に追った唯一無二のドキュメンタリー映画であり、一人の映像作家が人生をかけて追いかけた執念の記録でもある。公開直前まで編集作業が行われた本作は日本公開がワールドプレミアとなる。これを皮切りに、伝説のスーパースターは世界中のスクリーンに蘇生することとなるだろう。

 

▼『スライ・ストイーン』作品・公開情報
(2015年/オランダ/73分)
原題:DANCE TO THE MUSIC
監督:ウィレム・アルケマ
出演:スライ・ストーン、ウィレム・アルケマ、ジェリー・マルティーニ、グレッグ・エリコ、リッチ・ロマネロ、パット・リッツォ、シンシア・ロビンソン、フランク・ワディ、ジョージ・クリントン、シルヴェット・ファン・ロビンソン、ヴェット・ストーン、ノヴィ・ストーン、ナイル・ロジャースほか
配給・宣伝:キュリオスコープ
コピーライト:©Dwars Productions

『スライ・ストーン』公式サイト

※5月16日(土)より新宿 K’s cinemaほか全国順次公開

文:min

  • 2015年05月16日更新

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