『毛皮のヴィーナス』― 妖しくエレガント! ロマン・ポランスキーが仕掛ける誘惑のサスペンス

  • 2014年12月20日更新

古い劇場の舞台で繰り広げられる、官能的な倒錯劇
『戦場のピアニスト』でアカデミー賞に輝き、『ゴーストライター』『おとなのけんか』などの話題作を次々と世に送り続けるロマン・ポランスキー監督。最新作では、 “マゾヒズム”の語源となったL・ザッヘル゠マゾッホの小説をモチーフにした戯曲を映画化。舞台という一つのシチュエーションのみで繰り広げられる演出家と女優の官能的な倒錯劇を、巧みな脚本で笑いと皮肉たっぷりに描く。

無名の女優ワンダを演じるのは監督の妻でもあるエマニュエル・セニエ。自信家で傲慢な演出家トマには、その風貌が若かりしころのポランスキー監督を彷彿させるマチュー・アマルリックが扮する。実力派の二人の演技と、先の見えない展開に、ゾクゾク・ワクワクしながら引き込まれ、気付けばあなたの欲望も丸裸にされているかもしれない。

傲慢な演出家と無名の女優。オーディションはいつしか本気の二人芝居へ

物語の舞台は古びた劇場。舞台劇『毛皮のヴィーナス』のオーディションに女が遅刻をしてやってくる。自称女優の女は、奇しくも役名と同じワンダと名乗るが、話し方も仕草もはすっぱで、外見はまるで娼婦のよう。演出家のトマは鼻にもかけず追い払おうとするが、ワンダの押しの強さに負けてオーディションをすることに……。

ところが、ステージに上がるとワンダは豹変! 役を深く理解し、セリフも完璧。イメージしたままのワンダが突然目の前に現れて度肝を抜かれるトマ。しかし、ワンダは意にも介さずトマを相手役に芝居を続ける。いつしか、芝居は熱を帯び、二人の立場も逆転。次第にトマは役を超えて、ワンダに身も心も支配されることに悦びを感じていく――。

巧みな脚本と圧巻の演技力が奏でる極上のサスペンス

雨に打たれびしょ濡れで劇場に現れたワンダは、お世辞にも魅力的とは言い難い。下品で厚かましく、観ているこちらも少々イラだってくるほど。しかし、 そんなワンダが、ひと言セリフを発したとたん豹変する。あばずれ女から一転、知的でエレガントな貴婦人へと見事な変貌を遂げるのだ。この瞬間に驚愕したら思うつぼ。トマとともに、ワンダの魅力にグイグイと引き込まれていく。

そして、トマもまたワンダに導かれるままに、自らの欲望に目覚めていく。演出家と女優という立場はいつしか逆転し、時には主と従、はたまたSとM、最後には性別までもが入れ替わり、現実とファンタジーの境界線はあやふやになっていく。

複雑に入れ替わる関係性と、予測不能な展開を二人の会話のみで描くポランスキー監督の脚本はほんとうに見事。そして、もちろん主演二人の圧巻の演技なくして本作は成立しない。80歳を越えてなお瑞々しいポランスキー監督の創造性と二人の主演俳優の演技が奏でる極上のサスペンス。ぜひ、劇場でご堪能あれ!

▼『毛皮のヴィーナス』作品・公開情報

(2013年/フランス、ポーランド/96分)
原題:VENUS IN FUR
監督・脚本:ロマン・ポランスキー
原作:L・ザッヘル゠マゾッホ
出演:エマニュエル・セニエ、マチュー・アマルリック
配給:ショウゲート
コピーライト:©2013 R.P PRODUCTIONS – MONOLITH FILM

『毛皮のヴィーナス』公式サイト

※12月20日(土)よりBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開

文:min

  • 2014年12月20日更新

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