『神は死んだのか』〜“神の存在証明”に挑むクリスチャンの学生。キリスト教への情熱とはどんなもの?〜

  • 2014年12月13日更新

無神論を主張する哲学の教授と敬虔なクリスチャンの大学生。やがてまわりの生徒を巻き込みながら2人の「神の存在証明」を巡る激論が始まる。アメリカの大学で実際に起きた信仰に関する訴訟事件をもとに描かれたストーリー。現代のアメリカにおける、キリスト教信仰の世界を垣間みることもできる、知的エンタテイメント作品。
© God’s Not Dead.LLC
12月13日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町&渋谷ほか、全国公開。

クリスチャンの大学生vs.大学教授。神の存在証明を巡る激論の行方は……?
敬虔なクリスチャンである大学生ジョシュ・ウィートン(シェイン・ハーパー)は、ラディソン教授(ケヴィン・ソーボ)の哲学クラスを選択。授業初日、無神論者だというラディソン教授から、生徒たちは「God is dead.(神は死んだ)」と書いて提出するよう促される。単位を落としたくない生徒たちは言われるがまま提出するが、クリスチャンであるジョシュだけは、宣誓書の提出を拒否。するとラディソン教授は「提出しないなら、神の存在を証明しろ」と厳しく言い放つ。恋人からも「教授にたてついて将来を台無しにするつもりか」と迫られ悩むジョシュ。やがて自ら信じる道を進むため、ジョシュは孤軍奮闘、決意を固めて立ち上がる。果たして大学生ジョシュはラディソン教授を論破する事ができるのか……。

科学的根拠に基づく「神の存在証明」とは。
大学教授と大学生が「神の存在証明」をかけて激突。ここで展開される理論が、聖書の引用を科学と結びつけたり、科学の歴史から具体的な例を得ながら進んでいくのが面白い。こういった側面から神の存在証明を計ろうとする方法は、キリスト教に縁のない日本人にとっては特に新鮮だろう。また、論争の果てにあぶりだされる人間ドラマもエキセントリックな盛り上がりを見せる(ちなみに「神は死んだ(God is dead)」とは、哲学者ニーチェの言葉として、虚無主義を表す際に広く引用される言葉だ)。そしてご存知のかたもいるかもしれないが、アメリカにはキリスト教徒のためのロック音楽「クリスチャン・ロック」というもの(さらに細分化するとクリスチャン・パンクやクリスチャン・メタルなど)が存在する。キリスト教を讃えたフレーズやイメージを織りこんだ楽曲を演奏するロックバンドだ。本作にはアメリカでは著名なクリスチャン・ロックバンド、ニュースボーイズのコンサートシーンも登場する。「セックス」「ドラッグ」「悪魔主義」などと結びつくイメージが強いロックに、こういうジャンルが存在するのだと初めて知るかたも多いだろう。

多くの日本人にとって未知の世界「米国のキリスト教」における発見。
この作品は、ジョシュとラディソン教授の「神の存在証明論争」の後も物語は続く。また、ジョシュ以外にも、キリスト教を信仰することでまわりと軋轢が生まれ、板挟みに悩むクリスチャンや、信仰に救いを求める人物も登場し、群像劇的にも描かれている。そのためか、クリスチャン側から描いた感が強く、現実の無神論者側の観客には物足りなさを感じさせるかもしれない。また、クリスチャンでない立場だと、この作品に感情移入しがたいとも言える。しかし、クリスチャン・ロックや、クリスチャン同士の対話など、未知の世界を知るものと考えて観る事ができれば、多くの発見があるだろう。

▼『神は死んだのか』作品・公開情報
2014年/アメリカ/ビスタサイズ/デジタル/114分/カラー/英語
監督:ハロルド・クロンク
出演:シェイン・ハーパー、ケヴィン・ソーボ、デヴィッド・A・R・ホワイト、ベンジャミン・オチェン、ポール・クウォ、ニュースボーイズほか

●『神は死んだのか』公式サイト
© God’s Not Dead.LLC

12月13日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町&渋谷ほか、全国公開。

文:市川はるひ

  • 2014年12月13日更新

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