週に4時間しか会話を許されない修道院の静寂を体感するドキュメンタリー―「大いなる沈黙へ ーグランド・シャルトルーズ修道院」

  • 2014年07月25日更新

沈黙の中で祈る修道士の姿の中にさまざまな空想が広がるドキュメンタリー
フランスアルプス山脈に建つグランド・シャルトル―ズ修道院で過ごす修道士たちの生活を追ったドキュメンタリー。修道士の生活は厳しい戒律でコントロールされており、会話が許されているのは日曜日の4時間だけ。訪問者もラジオもテレビも許されていない。修道院での六か月の生活を記録したこの作品は、修道院との約束に従い、礼拝の聖歌のほかに音楽をつけず、ナレーションもつけず、照明も使われていない。

静寂に覆われたこの作品の注目すべき点は、音や会話が絞り込まれているにも関わらず、限られた音の中から発見することが非常に多いということだ。沈黙が続くからこそ、音に敏感にならざるをえず、ミサに響くグレゴリオ聖歌や生活の音に耳を傾けてしまう。なによりも沈黙の中で祈る修道士の姿の中に様々な空想を広げてしまうのだ。それほどまでに祈りの姿には神秘的で惹きつけられる力がある。情報過多だけれど内容に乏しいジャンクな映画が多い中、シンプルに祈る人の姿が後々、頭の中で反芻され、様々な想像を喚起させることに驚かされる一本。岩波ホールほか全国順次ロードショー


今まで人の目に触れることのなかった祈る姿
フランスアルプス山脈に建つグランド・シャルトル―ズ修道院は、カトリック教会の中でも厳しい戒律知られる、カルトジオ会の男子修道院である。ドイツ人のフィリップ・グレーニング監督は1984年に撮影を申込んだのだがその解答は「まだ、早い」という撮影却下だった。16年が経ち、修道院より「準備が整った」と連絡を受け、監督は単身修道院の撮影に向かう。グランド・シャルトルーズ修道院の修道士の生活が撮影され、公開されるのは長い修道院の歴史の中でも、今回が初めてとなる。修道士は個々に与えられる房で独立した生活を送り、個人の自由が認められている。房の中に何を置くのか、食事はどこでとるのか、各個人が自由に決め、神に仕える。作品中に何度か出てくる「主よ あなたは私を誘惑し、私は 身を委ねました」というフレーズのように貧しい生活ではあるけれど、神と対話し、神に惹きつけられてる姿が映し出される。修道士のクローズアップをぜひじっくりと見ていただきたい。様々な年齢、様々な人種、個性豊かな顔つき。同じ志を持ちながらも、独立して神と向き合う孤高の姿がそこにある。


静けさの中に投げだされた音。
作品の中には何回か「一切を退け 私に従わぬものは弟子にはなれぬ」というフレーズも登場する。修道士の一日は夜11時半から房での祈りで始まる。3時間の祈祷ののち、再び3時間の睡眠をとり、朝の祈祷を行う。祈祷をはさみ、睡眠が三回に分けられているのは集中力を高めるためだという。祈祷、瞑想、学習、水くみや薪割りといった労働がぎっしりとスケジュールに組み込まれ、修道士の一日は休みなく過ぎていく。静寂に包まれた彼らの生活は独立しているが、その一方で修道院を基盤とした集団生活でもある。静けさの中に重なり合う聖歌の歌声を聴くときに集団であることを感じる。修道士たちは日曜日の4時間だけ話すことを許される。たわいもない会話ではあるが、仲間内の無邪気なやり取りは張りつめた日常の中で安らぐひとときだ。祈ることを目的とした生活の中では、普段私たちが気に留めない日常の音―なにげない会話のやり取りや、食事を運ぶワゴンの音や、雨音-がきっと大きなボリュームで体に入り込んでいるのではないかと想像させる。静寂の作品の中に染み入る生活の音にもぜひ耳を傾けていただきたい。


▼「大いなる沈黙へ ーグランド・シャルトルーズ修道院」作品・公開情報
2005年|フランス・スイス・ドイツ|カラー| 169分|ビスタ|ドルビーデジタル
原題:Die Grosse Stille
監督・脚本・撮影・編集:フィリップ・グレーニング
製作:フィリップ・グレーニング ミヒャエル・ウェバー アンドレス・フェフリ エルダ・ギディネッティ
共同製作:フランク・エーヴァース
エクゼクティブ・プロデューサー:イェルク・シュルツェ フィリップ・グレーニング
オリジナルサウンド:フィリップ・グレーニング ミヒャエル・ブッシュ
後援:ユニフランス・フィルムズ|Goethe-Institut Tokyo 東京ドイツ文化センター
推薦:カトリック中央協議会広報 字幕監修:佐藤研|日本聖書協会
「大いなる沈黙へ ーグランド・シャルトルーズ修道院」公式サイト
岩波ホールほか全国順次ロードショー

文:白玉

  • 2014年07月25日更新

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