『マダム・イン・ニューヨーク』-インドの伝統菓子ラドゥに込められたインド女性のプライド

  • 2014年07月02日更新

シャシはごく普通のインドの専業主婦。なに不自由ない暮らしの中で、彼女を傷つけるのは英語が苦手な彼女をからかう夫や娘の心無い言葉だった。そんな時、NYに住む姉から姪の結婚式準備の手伝いを頼まれ、単身NYに向かうことになる。世界の大都市NY。思い切って一人で入ったカフェでシャシは英語がしゃべれないみじめさをあらためてかみしめる。せわしない街角で目に留まったのは「4週間で英語が話せます」という英語学校の広告だった。様々な国から様々な境遇の人々が集っていた英語クラスは楽しく、シャシは英語に夢中になる。4週間の英語レッスンを締めくくる、最終試験の日、その日はくしくも姪の結婚式と同じ日だった。シャシは無事に英語レッスンを終了させることができるのだろうか?ラストシーンに込められた優しくも、凛としたインド主婦の生き方に心が動かされること間違いなしのボリウッドムービー。シネスイッチ銀座ほか全国順次公開。



苦手な英語を話して心が浮き立つ瞬間に出会う
シャシはごく普通のインドの専業主婦。なに不自由ない暮らしの中でシャシの心を傷つけるのは英語が苦手な彼女を何の気なしにからかう夫や娘の心無い言葉だった。 そんな時、NYに住む姉、マヌから姪の結婚式準備の手伝いを頼まれ、単身NYに向かうこととなる。世界の大都市NYの刺激的な街のにおいにワクワクするが、思い切って一人で入ったカフェでは英語がしゃべれないみじめさをあらためてかみしめる。そこで目に留まったのは「4週間で英語が話せます」という英語学校の広告だった。英語クラスにはゲイの英語教師デイビッドをはじめ、メキシコ人の子守、パキスタン人のタクシードライバー、フランス人のシェフなど様々な国から様々な境遇の人々が集っていた。自己紹介でシャシはインドの伝統的なお菓子ラドゥを作り、売っていることを話す。「君は起業家(アントレプレナー)なんだね!」というデイビットの言葉にパッと顔が明るくなるシャシ。苦手な英語に触れて初めて心が浮き立つ瞬間だった。こうして姉や家族に内緒の英語漬けの日々が始まった。4週間の英語レッスンを締めくくる、最終試験の日は姪の結婚式と同じ日だと知らされる。シャシは無事に英語レッスンを終了させることができるのだろうか。



英語を話すことよりも大切なこと
働くため、社会生活を円滑にするために英語を話せるようになることはNYにおいて非常に重要なことだ。4週間で英語を話せるようになるクラスに参加しているシャシももちろん、英語をしゃべれるようになりたいと強く願う生徒の一人ではあるけれど、シャシが英語のレッスンで得たものは言葉そのものよりも、様々な境遇の生徒たちにふれあい、対等な立場でお互いの考えを話し会うことの楽しさだった。それは夫に後ろに隠れて社会から距離をおいていたシャシが自分を取り戻す作業でもある。シャシを演じるスリデヴィはボリウッド映画界伝説の女優だが、結婚して子育てのために女優業を休業していた。今回の『マダム・イン・ニューヨーク』が実に15年ぶりに女優業に復帰作となる。主婦から女優に変貌をとげるスリデヴィ自身にシャシの姿に重ねられる。



インドの伝統菓子ラドゥに込められたインド女性のプライド
シャシが作る評判のラドゥはひよこ豆で作る伝統的なインドのお菓子でお祝いの時などの食べられるお団子のようなものだ。伝統的で、みんなに愛されて、口にするすべての人を幸せにするラドゥだが、その一方、シャシの夫サティシュは娘をたしなめる際に「退学して、ラドゥでも作るつもりか」と古臭い菓子作りを見下すような発言をしてシャシを悲しませる。シャシにとってラドゥは単なるお菓子ではなく、自分と社会をつなぐものであり、自己表現そのものだ。作品中に出てくるラドゥという言葉をシャシ本人に置き換えても観るとまた新しい発見が生まれる。英語とラドゥ、新しい世界と普段の生活。シャシはNYに来て英語という新しい風を吸い込んだけれど、彼女は決してラドゥの生活を忘れない。むしろNYに来てからラドゥを作る自分がどんなに自分らしいかを感じて、自分に誇りをもつことができる。作品を通して登場するラドゥはラストシーンまでシャシに寄り添う良き相棒であり重要な出演者だ。なによりも丸くて黄色いラドゥを見ていると映画の帰りに食べてみたくなる。映画上映期間中はラドゥが供されるインドレストランもあるので、帰りがけにラドゥをつまんでみてはどうだろう。詳しくは公式サイトでチェック!



▼『マダム・イン・ニューヨーク』作品上演情報
2012年/インド/ヒンディー語・英語/スコープサイズ/134分/英題:English Vinglish
監督・脚本:ガウリ・シンデー
出演:シュリデヴィ、アディル・フセイン、アミターブ・バッチャン、メーディ・ネブー、プリヤ・アーナンド
提供:ビオスコープ、アミューズソフトエンタテインメント、彩プロ
後援:駐日インド大使館/協力:エア インディア/字幕:石田泰子
●『マダム・イン・ニューヨーク』公式ウェブサイト
© Eros International Ltd.

文:白玉

  • 2014年07月02日更新

トラックバックURL:http://mini-theater.com/2014/07/02/28940/trackback/