『パリ、ただよう花』-5年間の映画製作禁止の中でロウ・イエ監督が描きたかったものはセックス?

  • 2013年12月25日更新

パリにやってきた中国人、花(ホア)。北京で出会った恋人に捨てられ、パリの街をさまよう。解体工のマチューに出会ったホアは強引に体を奪われるが、セックスの後もお互い、離れることが出来ない。お互いの体を求め、激しく愛し合う二人。ある日、ホアはマチューの仕事仲間、ジョバンニに誘われた別荘でレイプをされる。ホアの愛を確かめるためマチューが仕掛けたことだった。お互いの価値観の違いに気づきながらもなお、離れがたい二人。激しく体を重ねていく二人はどこに行きつくのか。中国電影局から5年間の映画製作、上映禁止処分を受けたロウ・イエ監督が処分期間中に制作した作品の一つ。セックスをテーマにぶつかりあう人間を描く。



価値観が違う。それでも離れられないパリの恋。
パリにやってきた中国人、花(ホア)は北京で出会った恋人に捨てられ、パリの街をさまよう。ロマンチックだったはずのパリの街は現実的で生活の色を帯びたつまらない街に見える。解体工のマチューにぶつかってしまったのはそんな時だった。しつこくつきまとう粗野な印象のマチューに強引に体を奪われるホアだったが、セックスの後もお互い離れることが出来ない。それからは逢えば、お互いの体を求め、激しく愛し合う二人。ある日、ホアはマチューの仕事仲間、ジョバンニに郊外の別荘に連れていかれ、レイプをされる。ホアが誰とでも簡単に寝る女かを確かめるためマチューが仕掛けたことだった。一方的なマチューの思いにホアは別れを切り出す。突き放されたマチューの答えはホアを自分のものにしたい強い執着の言葉だった。お互いの価値観の違いに気づきながらもなお、離れがたい二人。激しく体を重ねていく二人はどこに行きつくのか。



”アバズレ”と言いたくなる女。
なぜか男性のみならず、女性からもホアは”アバズレ”と罵られる。この響きの中に含まれるものはなにか?それは単なる上から目線の蔑視で吐かれたセリフではない。美人でスタイルが良く、知的、多くを語らずウルウルした瞳で見つめるホア。男は気が付けば彼女の虜になり、女は男を魅了するホアに嫉妬する。ホアは「誰とでも寝る女」というよりは「誰もが寝たくなるような女」である。モテ女、ホアに、男は「どうして俺のこともっと好きになってくれないんだよ」とキレ、女は「あたしの男を誘惑するんじゃないわよ」とキレる。行き場のない強い感情のはけ口がアバズレという言葉となって発散され、ホアを取りまく。



5年間の映画製作禁止。その中でロウ・イエ監督が描きたかったものはセックス?
『天安門、恋人たち』で、天安門事件を扱ったことと、その性描写により中国電影局からカンヌ国際映画祭での上映許可が出なかったロウ・イエ監督。監督とプロデューサーはその決定を無視してカンヌで上映したことから5年間の映画製作・上映禁止処分を受けた。この処分期間中に製作されたのが本作『パリ・ただよう花』だ。作品のテーマはセックスである。しかしそれは単に性欲を煽るために描かれたのではない。どこにでもいる人間がセックスを通して体験すること―二人だけが共有する喜びや、独りよがりの相手への絶望―を普遍的なものとしてとらえるものだ。二人の体が重なる姿を、愛というぼんやりとしたものではなく、がんじがらめに縛りつける好意や、相手を服従させる暴力といった様々な表情を通して描く。ロウ・イエ監督が手持ちカメラでとらえたその極私的なセックスの中にどんな人間でも経験する痛みが映し出される。ロウ・イエ監督が中国の体制に反対しながらも描こうとしてしたもっとも人間らしい人間の姿がそこにあるのではないか。



▼『パリ、ただよう花』作品・公開情報
仏・中国/2010年/105分
監督、脚本:ロウ・イエ
脚本:リウ・ジエ
撮影:ユー・リクウァイ
出演:コリーヌ・ヤン、タハール・ラヒム
配給・宣伝:アップリンク
●パリ、ただよう花公式サイト

 



ロウ・イエ監督の特集上映『特集 ロウ・イエ、雑踏の中の愛と孤独』も開催!
2014/1/4(土)~1/10(金)
会場:渋谷アップリンク







◆上映作品
『ふたりの人魚』2000/中国・ドイツ・日本/83分
現代の上海を舞台に、ビデオ・カメラマン、ナイト・クラブで人魚を演じるメイメイ、運び屋、少女。失いかけた愛を探してさまよう恋人たちの物語。

『天安門、恋人たち』2006/中国・フランス/140分
天安門事件を背景に、時代に翻弄されながらも愛し合う男女の姿を過激なSEX描写を交えて描いた衝撃作。

『スプリング・フィーバー』
2009年/中国・フランス/115分
『天安門、恋人たち』(06)で受けた5年間の映画製作・上映禁止の令を無視し、ゲリラ撮影された本作。5人の男女の、欲望と絶望を描く。第62回カンヌ国際映画祭脚本賞受賞

料金:1作品一律¥800
※『パリ、ただよう花』の半券をご提示で¥600!(K’s cinemaの半券も使用可能)
※パスポート使用不可

スケジュールはこちら

文:白玉

  • 2013年12月25日更新

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