『自分の事ばかりで情けなくなるよ』― 不器用に生きる若者たちと「クリープハイプ」の音楽が共振する異色の青春群像劇

  • 2013年10月29日更新

「音楽」×「映画」の連作コラボレーションで描く、新しいカタチの青春群像劇
空回りしながら不器用にもがく若者たちの姿と音楽が共振し、時に切なく、激しく、観るものの感情を揺さぶる――。新鋭・松居大悟監督が「クリープハイプ」のフロントマン・尾崎世界観の原案をもとに書き上げたオリジナルストーリーは、「音楽」×「映画」の連作コラボレーションで織りなす青春群像劇だ。これまでに同タッグで制作したミュージックビデオがファンの間で話題を呼び、 そこから派生したショートフィルムヴァージョンは、国際短編映画祭「SHORT SHORTS FILM  FESTIVAL」に2年連続で上映されるなど、注目と共に熱烈な支持を獲得してきた。本作は、その一連の作品の中から『イノチミジカシコイセヨオトメ』、『あたしの窓』、『おやすみ泣き声、さよなら歌姫(Music video)』に最新作『傷つける』を加え、新たに劇場用映画として完成した。先ごろ開催された、第26回 東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門にも正式出品され、話題を呼んだ注目作だ。

 

立ちゆかない日常にもがく、実力派若手俳優の演技にも注目
元カレとの結婚を密かに夢見るピンサロ嬢、大好きなバンドのライブ当日に残業をさせられ、やりきれない気持ちをツイッターでつぶやき続けるOL、鬱屈した日々の中で感情を爆発させるオタク青年、トレーラーハウスで生活するその日暮らしの青年と美しき家出少女。何ひとつうまく回らない現実に、ただただ怒りや涙を爆発させる日々……。主役が入れ替わりながら、それぞれの物語が少しずつリンクしていくという構成で「イマドキの若者」の心象風景を映し出す本作は、池松壮亮、黒川芽衣、山田真歩、大東駿介、安藤聖、尾上寛之ら実力派若手俳優のキャスティングも大きな魅力だ。池松の悲しみを帯びた瞳、オタク青年のあやうい精神バランスを体現した大東、山田の演じるOLがトイレで泣く姿などなど、数々の印象的なシーンと共に彼らの個性的でフレッシュな演技に胸をえぐられる。

 

新世代監督の投影する時代感がもたらす、「共感」という光
松居は、慶応義塾大学在学中に演劇集団「劇団ゴジゲン」を結成し、全作品の脚本・演出・出演を担当してきた。2011年末に惜しまれつつ活動休止してからはドラマの脚本家などを経て映画界に進出し、『アフロ田中』『男子高校生の日常』といった話題作を次々と手掛けてきた注目の若手監督だ。そんな彼が劇団時代から一貫して描いてきたのは、不器用にしか生きられない人たちの姿。 明日の見えない世の中で、傷つきながら日々をやり過ごす。そこには、20代の監督自身がもつ、等身大の時代感が投影されているのだろう。だからこそ本作の登場人物と同様に、薄紙で指を切ったような繊細で鋭利な傷が胸の奥にいくつも重なりヒリヒリと疼いていることに、多くの人が気づいてしまうかもしれない。ご都合主義のハッピーエンドも、カタルシスもない物語は、ところどころに散りばめられた小さな優しさと「共感」という光だけが微かな安堵を胸に残す。耳の奥でリフレインするクリープハイプの楽曲と共に、この切ない痛みにしばらく浸っていたくなる……そんな余韻を残す作品だ。

 

 

 

▼『自分の事ばかりで情けなくなるよ』作品・公開情報
2013年/日本/106分
監督・脚本:松居大悟
原案:尾崎世界観(クリープハイプ)
音楽・主題歌:『傷つける』クリープハイプ
出演:池松壮亮、黒川芽衣、安藤聖、尾上寛之、山田真歩、大東駿介、クリープハイプほか
製作:ビクターエンタテインメント、プリミティブ
制作プロダクション:CONNECTS LLC
配給・宣伝:SPOTTED PRODUCTIONS
コピーライト: © 2013 Victor Entertainment, Inc.
『 自分の事ばかりで情けなくなるよ』公式サイト
※ 2013年10/26(土)よりユーロスペースにてロードショー他全国順次公開

 

文:min

  • 2013年10月29日更新

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