『映画「立候補」』― 負け戦とわかって選挙に挑む、泡沫候補たちを追ったドキュメンタリー

  • 2013年07月01日更新

泡沫候補たちとはどんな人物か?
【泡沫(ほうまつ)】1. あわ・あぶく  2.消えやすくはかないもの 3.問題にならないようなもののたとえ――泡沫候補とは、当選する見込みが薄い(いや、ほぼ無い)選挙候補者のことだ。そんな“負け戦”に挑み続ける候補者たちとは、いったいどんな人物なのか。供託金300万円を払ってまで、なぜ彼らは立候補するのか。『映画「立候補」』は2011年の大阪府知事市長選挙に立候補したマック赤坂を中心に、4人の泡沫候補の姿と、政見放送がYouTube再生回数が現在150万回の外山恒一、 日本新記録の落選15回を誇る(?)ミスター飛沫候補こと羽柴秀吉らのインタビューもまじえ、その孤軍奮闘ぶりを追ったドキュメンタリーだ。

敗者の記録であり、選挙を題材とした異色のエンターテインメント作品
2011年11月の大阪。橋下徹が仕掛けた40年ぶりの大阪府知事市長W選挙は、府民だけでなく日本中の注目を集めていた。橋下維新か、はたまた反橋下か。世論がまっ二つに割れるなか、少々異色な4人の泡沫候補たちも名乗りを上げる。スマイル党総裁の「マック赤坂」。2度目の府知事選「高橋先生(高橋正明)」。7歳の娘を男手ひとりで育てる61歳「中村パパ(中村勝)」。初選挙の「岸田さん(岸田修)」。なぜ、彼らは敗北必至の選挙に高額な供託金を支払うのか? 本作は、けっして歴史に残ることのない、その存在さえも世間に置き去りにされた敗者の記録であり、選挙を題材とした異色のエンターテインメント作品でもある。

マック赤坂とは何者か? 選挙とは何か?
マック赤坂とは何者か――? 京大出身で元・大手商社のサラリーマン、その後は貿易会社を経営し、現在は会社の経営を息子に任せてロールスロイスで選挙活動に奔走……。 本作で語られるマックの経歴だけみれば、超が付くほどのエリート。しかし、奇抜なファッションで街頭演説に立ち、独自のスマイルポーズ「10度、20度、30度!」をキメれば通行人からヤジられ、マラカスを持って歌いだせば好奇の目とともに嘲笑を受ける。マックを含め4人の候補者たちも、その選挙活動の内容をみれば、およそ「勝つ気でやってねーな」的な感想を持たざるをえない。では、なぜ彼らは立候補するのか? 日本における選挙の供託金は、小選挙区300万円、比例代表600万円と世界一高い。これは売名や選挙妨害を防ぐためだそうだが、本来の選挙とは誰もが声を挙げられるためのものだ。しかし、実際は政党や団体という強力なチカラとカネを使える限られた候補者たちだけのものになりつつある。そのなかで、自らの信念を貫く姿を人々に見せつけるが如く奮闘する彼らの姿には、笑いながらも最後にはなぜか感動をおぼえてしまう。 映画の終盤、マックに対して大手を振って応援するでもなく、半ばあきらめているようにもとれる発言をしていた息子・健太郎が父を罵倒する群衆に向かって叫ぶシーンには、不覚にも涙を止められなかった。

新鋭・藤岡利充監督が本作に込めた思い
2005年に『フジヤマにミサイル』でデビューし、本作が約7年ぶりの新作となる新鋭・藤岡利充監督は、現在は山口県在住だ。プレス(作品資料)によれば、東京で映像製作に従事していたものの、志なかばで故郷に戻り、大けがで一ヶ月の入院を余儀なくされる。その時、年齢も職業も関係ない“ただの患者”という存在となったことが映像への情熱を呼び覚ましたという。バカにされても、夢みたいな話だと笑われても、もう一度映画界を目指す。その決意が、この映画の元となる” 夢追い人” という企画につながる。そして“真の夢追い人”として泡沫候補たちを追いつづけ、木野内哲也(製作・撮影)との二人三脚で本作を完成させた。「負けることをいとわず進みつづける」。その意味を胸に問いつつ、本作をご覧いただきたいと思う。




▼『映画「立候補」』作品・公開情報
2013年/日本/DV/100分/ステレオ
監督:藤岡利充
製作・撮影:木野内哲也
音楽:田戸達英(主題曲)、岩崎太整、佐藤ひろのすけ
製作補助:赤間哲也
出演:マック赤坂、羽柴誠三秀吉、外山恒一ほか
宣伝:ポレポレ東中野
製作:明るい立候補推進委員会
コピーライト:(c)2013 word&sentence

『映画「立候補」』公式ホームページ

※2013年6 月29 日(土)より、ポレポレ東中野にてロードショー ほか全国順次公開

文:min

  • 2013年07月01日更新

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