『嘆きのピエタ』-シニカルで非道、そして慈悲深い「キム・ギドクの寓話」

  • 2013年06月23日更新

シニカルで非道、そして慈悲深い「キム・ギドクの寓話」
天涯孤独の心ない借金取り、ガンド。債務者の身体を傷つけるようにしむけ、保険金から借金を返済させるという非道な生き方をする男に母親と名乗る女が現れた。「悪魔」と呼ばれた男は、かつて経験したことのない「母親のぬくもり」を信じることができず戸惑うが、なにげない母親との生活の中で氷のような心をとかしていく。そんな中、突然母親が姿を消す。表情のない悪魔はとり乱し、ガンドは母を求めて街の中を転げるように走り回る。母はどこに消えていったのか?金と愛、その中で生きていく人間の姿をシニカルで、非道それでいて慈悲深く見つめるキム・ギドク作品。きれいごとで終わることない「キム・ギドクの寓話」は答えを与えてくれるのではなく、観客に考えをゆだねていく。撮影時の事故をきっかけに08年以来映画界から姿を消していたキム・ギドク監督は今作品でヴェネチア国際映画祭では最高賞の金獅子賞を受賞。『アリラン』に続き劇映画作品でも華々しく復帰をはたしている。


悪魔と呼ばれた男に母と名乗る女性が現れた。母親を失いたくないと願った瞬間に母親は姿を消した。
30年間、誰からの愛を受けることもなく生きてきた借金取りのイ・ガンド。利子が元金の10倍にも膨れ上がるヤミ金融の取立て屋は債務者に重傷を負わせ、その保険金で返済をさせていた。家族のために借金を背負い、やむなく身体の傷つけられる債務者たちは仕事を続けることができず、苦痛の人生に追い込まれていく。そんな悪魔のような取立て屋ガンドに、母親だと名乗る謎の女、ミソンが現れる。生れた時から母親というものを知らないガンドはミソンの言葉を信じることができず、拒絶する。ミソンはガンドからひどい脅しをうけるが、だまってガンドを離れようとしない。当たり前のように家に居続けるミソンにやがてガンドの心がとけはじめる。初めて母親にあまえることを許されたガンドが唯一の家族を失いたくないと願ったその矢先、ミソンは姿を消した。家族のために借金をしてきた債務者を嘲笑っていた悪魔は家族のために気が狂わんばかりに母親を探し続ける。ミソンはどこに、そしてなぜ消えていったのだろうか?


お金という名の大物役者
この作品には捉えどころのない大物役者が出演していることを忘れてはならない。その出演者は“お金”。登場人物それぞれがお金と常に向き合わされている。子どものため、母親のため、身を粉にして働きお金を作ろうとする債務者は、やむなく自分の身体と引き換えにお金を作る。身体を傷つけて作られたお金によって愛する人の心は傷つけられる。心を傷つけられた人の怒りはやり場を求めながらも増幅をしていく。キム監督はお金から生まれる痛みの連鎖を神のような視線で追い続け「お金に傷つけられても生きる価値はあるのか?」と問いかけてくる。そんな監督自身の問いにあなたならどう答えるだろうか




▼『嘆きのピエタ』作品・公開情報
韓国/2012 年/104分/原題:피에타/英題:Pieta
監督:キム・ギドク
出演:チョ・ミンス、イ・ジョンジン
提供:キングレコード、クレストインターナショナル
配給:クレストインターナショナル
『嘆きのピエタ』公式サイト
6月15日(土)より、Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開
(c)2012 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.


文:白玉

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