『殺人の告白』ポーカーフェイスの「美しすぎる殺人犯」。その妖しい微笑の裏で一体何を企むのか?

  • 2013年05月30日更新

「私が、殺人犯です-」。時効を迎えた連続殺人事件の真犯人だと名乗りをあげた男、イ・ドゥソク。ショッキングな告白とその美しい容貌で、彼はあっという間に時代の寵児になる。そのとき、憎しみを募らせてきた遺族は、そして執念深く犯人を追っていた刑事は何を思うのか? ドゥソクの目的は、本当に被害者たちへの懺悔なのか……? 第31回ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭にて、スリラー賞を受賞。パク・シフの妖しい微笑が光る、スリリングなクライムサスペンス!6月1日(土)、シネマート新宿ほか全国順次ロードショー。© 2012 DASEPO CLUB AND SHOWBOX/MEDIAPLEX ALL RIGHTS RESERVED.

連続殺人犯だと名乗る男に、誰もが熱狂。
女性ばかりが襲われる連続殺人が発生。刑事チェ・ヒョング(チョン・ジェヨン)は、あと一歩というところで犯人を捕り逃したうえ、顔に深い傷を負わされてしまう。やがて事件が時効となって2年が経過した頃、イ・ドゥソク(パク・シフ)という美しい男が、堂々と公衆の面前に姿を現し、自ら「真犯人である」ことを告白。ドゥソクは自叙伝『私が犯人だ』の出版記者会見を開き、被害者に謝罪、一気に世間の注目を集める。本には犯人しか知り得ない、事件の詳細が記されているという。さらにドゥソクは逃走の際、チェ刑事に撃たれたという肩の銃痕を見せ、真犯人であることをアピールした。この報道を見た遺族たちは復讐に燃え、山里に集結してドゥソク殺害を企てようとする。しかし唯一、娘の遺体が発見されていないハン・ジス(キム・ヨンエ)だけは、娘の生死を明らかにするまでドゥソクに手を下してはならないと対立する。一方、ドゥソクのセンセーショナルな自叙伝は、ベストセラーとなり、彼の元には狂信的な女性ファンが殺到。あくまで冷静に「この本の目的は被害者への懺悔。それ以外はない」と微笑を浮かべるドゥソク。いぶかる記者、ドゥソクの誘拐を目論む遺族、押し寄せるファンや野次馬……それぞれの立場が交錯し、誰もがドゥソクという存在に熱狂する中、ついにチェ刑事は、メディアを利用してドゥソクとの対決を決意。それを皮切りに、世間を震撼させる犯罪ショーは、一気にクライマックスを迎える……!


瞬きすら許さない、スピード感あふれるアクション!
この作品の魅力のひとつは、激しくスピーディーなアクションシーン。冒頭から見ごたえのあるチェイスシーンで、観客の目を釘づけにする。顔を見せず刃物を振りかざす冷酷な殺人犯に、刑事が立ち向かう。逃げる犯人を刑事がひとたび追いはじめると、ジェットコースターのごとく、スリリングで臨場感たっぷりのカメラワークが展開。チェ刑事を演じるチョン・ジェヨンが、雨の中を飛ぶように疾走し、犯人確保寸前で逃げられてしまうまで、息をつく間もない。また、中盤にはハイライトとなるカーチェイスも用意されている。ドゥソク誘拐を目論む遺族たちを乗せた救急車と、ドゥソクのボディガードの車が激しいカーレースを繰り広げる。さらに駆けつけたチェ刑事の車も加わり、車体だけでなく生身の人間までもが激しくもつれ合う。ドゥソクを演じるパク・シフも、体当たりのアクションを披露。過酷な撮影だったという。監督チョン・ビョンギルは出世作がスタントマンを追ったドキュメント映画であり、監督自身もアクションスクール出身という筋金入り。若いながら「ダイナミック・リアル・アクション」で定評を持つ監督だ。そして、迫力のアクションでヒートアップさせたあとには、緊張感をほぐすかのように笑いをちりばめる。本作でも、自在に笑いを織り込み、エンターテインメントの手腕を見せる。


転じて後半は頭脳戦。最後まで気が抜けないサスペンス。
しかし、本作の最大の醍醐味は謎解きだ。なんとしても犯人を捕まえたい刑事、法のもとに許された犯人、復讐を誓った遺族というコマが揃い、視聴率をとろうと躍起になっているマスコミが、事件の真相を明らかにするべく対決の場を用意。クライマックスでは、全国の視聴者が見守る中、謎は少しずつ紐解かれ、それぞれの「事実」が明らかになっていく……。憎しみ、涙、葛藤。駆け引き、ワナ、挑発。ドゥソクのポーカーフェイスが崩れたとき、そこに表れるのは、いったいどんな顔なのか。 期待を裏切らない展開の連続だ。本作は、従来のクライムサスペンスとは異なり、過去の殺人事件から時が過ぎ、新たな事件が始まるという二重構造が、重要な伏線となる、ドゥソクの登場と共に、止まっていた時が動き出す。過去と現在に横たわった、各人の苦悩と憤怒が相まって、だれも予測しなかった大ドンデン返しへと突き進んでいく。最後まで面白さを味わえる、極上のクライムサスペンスなのだ。そして、この作品の顔ともいえるドゥソク役を強烈なキャラクターにした、パク・シフの奇妙ともいえる笑顔が実に効果的。完璧な一重の東洋的な顔立ち、陶器のような肌に彫刻のような肉体。彼がただ存在するだけで、そこはかとない「妖しさ」と「怖さ」がたゆたっている。


▼『殺人の告白』公開情報
2012年/韓国/カラー/119分
キャスト:パク・シフ、チョン・ジェヨン ほか
監督・脚本:チョン・ビョンギル 字幕翻訳:小寺由香
配給:ツイン
『殺人の告白』公式サイト
6月1日(土)、シネマート新宿ほか全国順次ロードショー
© 2012 DASEPO CLUB AND SHOWBOX/MEDIAPLEX ALL RIGHTS RESERVED.

文:市川はるひ

  • 2013年05月30日更新

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