『燃える仏像人間』——知る人ぞ知る「劇メーション」を使った不思議世界。京都が生んだ、神々しい映画がついに公開!

  • 2013年05月18日更新

漫画やアニメでも見たことないような、えも言われぬ世界観
アニメーションが日本を代表する文化と重用視されるようになって久しい。では、アニメーションならぬ、「劇メーション」という言葉を知っているだろうか。かつて、大島渚が『忍者武芸帳』(67)、市川崑が「新選組」(00、これは「崑メーション」と呼ばれている))、押井守が『ミニパト』(02、これはライブメーションとか押メーションとか呼ばれている)、庵野秀明が『彼氏彼女の事情』(98)などでトライしている「劇メーション」とはアニメの手法のひとつ。紙に書いた絵(背景、人物)を動かして、ひとコマひとコマ撮影し、特殊加工を施すというとても手間ひまのかかるものだ。デジタル表現全盛の今、80年代生まれの新人監督が、あえてアナログの力を最大限に使って作られた意欲作『燃える仏像人間』は、いろいろな意味で異彩を放ち、ゆうばり国際ファンタジック映画祭2013でも話題になった。


シリアスなの? おもしろなの? 仏像と人間のハイブリッドたちの熾烈な闘いは、
カオスの極み
とにかくストーリーがあやしい。人間が仏像と融合して闘うという奇想天外な話なのだ。両親を惨殺され実家の寺の仏像まで奪われた女子高生・紅子(井口裕香)が、犯人らしい謎の盗賊集団シッダルダを追ううち、世にも奇妙な仏像人間と出会う。裕香も仏像人間となって闘うことになるが、少女の裸体と仏像が溶け合った神々しさと可笑しさ、その他あらゆる価値観のカオスが、タッチが繊細なイラストによる劇メーションだからこそ鮮烈だ。作画も監督・宇治茶が担当している。楳図かずおや漫☆画太郎などのような不穏な絵柄は見ているうちにどんどん引き込まれていく。女子高生・裕香の驚きや怒り悲しみの表情のインパクトは凄まじい。
基本は紙に描かれた絵だが、時折、液体やリアルな物体が使われていて、それも効果を成している。仏像と人間のハイブリッドたちの闘いという展開も抱腹絶倒だが、見たことのない映像の数々にも虚をつかれるばかり。映画もドラマもCGだらけで驚くことも少なくなった最近、むしろ、こういう手法のほうが刺激的。


期待の新人監督・宇治茶と、マニアックなキャストたちが、異界の扉を開ける。
作画、撮影、監督をすべてやっている宇治茶は、京都在住の映像作家(男性です、念のため)。その名前は、ホラー漫画家・御茶漬海苔を彷彿とさせ、なんだかある種の期待を感じさせる。彼は大学時代、漫画も描いていたそうだ。彼が、劇メーションをはじめたきっかけは「『妖怪伝 猫目小僧』や、電気グルーヴの『モノノケダンス』のPVをみて『これだ!』と思った」ことから。「ペラペラの紙に輪郭線を排除した立体的に見える絵を描いて切り取り、被写界深度を浅めにして撮影することによって、漫画やアニメでもみたことないようなイメージを作りたかった」と言うその撮影方法のテクニックにも目を見張る。ぺらぺらの紙が、ものすごくリアルになっていくことが幻想的だ。この映画、実相寺昭雄監督へのオマージュにもなっていて、実相寺監督作の常連、怪優・寺田農、監督の妻でもある女優・原知佐子が出演している。ほか、実相寺作品ではないが、「ウルトラマンA」の南夕子隊員を演じていた星光子なども出演。ヒロインは人気声優・井口裕香、主題歌は、エヴァのアスカのコスプレものまねやTV「ロケみつ」で注目される桜・稲垣早希と、マニアックな顔ぶれが集まった異形の世界。底なし沼のようにズブズブとハマってしまいそうだ。韓国、チョンジュ国際映画祭正式招待、ドイツ、ニッポンコネクション映画祭正式招待されている。



▼『燃える仏像人間』作品・公開情報
2012年/日本/80分
原作・プロデューサー:安齋レオ
監督/監督: 宇治茶
製作総指揮:森田一人
作画・撮影・編集:宇治茶
共同脚本:中沢健
製作:西村よしたか、柴崎和則、伊藤毅彦
サウンドエフェクト:せきやこうぞう
音楽監督:ジャン=ポール高橋
造形:寒河江 弘
総合演出補:丸山祐司
井口裕香 寺田 農 原 知佐子 北岡龍貴 レイバー佐藤 渡辺裕薫(シンデレラエキスプレス) 保山 宗明玉 花井なお 酒井一圭 春日萌花 加藤礼次朗 虹 友美 高橋沙織(アルミカン) 平井駿佑 星 光子
主題歌「Moe-Butsu」桜 稲垣早希
制作:㈱ムービーファクトリー
編集・MA:㈱テレトップ
配給・宣伝:インターフィルム
「燃える仏像人間」公式ホームページ
コピーライト:(C)「燃える仏像人間」製作委員会
※2013年 5月18日(土)、シネリーブル池袋 下北沢トリウッド、全国順次ロードショー

文:木俣 冬

  • 2013年05月18日更新

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