『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』―老齢を迎えてから旺盛に生きるための7つの事例

  • 2013年01月31日更新

大切なひととの再会のため、病気の治療のため、様々な事情を抱えた7人の老男女が旅に出る―行き先はインド。「神秘の国インドの高級リゾートホテルで、穏やかで心地よい日々を」という謳い文句と美しいイメージ写真に惹かれて、はるばるイギリスからやってきた彼らが目にしたのは、熱気溢れるインドの文化と、リゾートとはほど遠いボロホテルだった! 異国の地で彼らが見つける人生の機微とは? ウイットに富んだ会話と、画面から溢れんばかりの色彩が楽しいこのイギリス式インド映画を観たあとは、少しだけ、心のしこりがほぐれているに違いない。2013年2月1日よりTOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開。©2012 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED.


滞在先は、ドアも水道も壊れたボロホテル!
夫を亡くしたイヴリン(ジュディ・デンチ)は、息子夫婦との同居を拒み、初めての1人暮らしを決意する。慣れない手つきでパソコンを操作していて見つけたのは、インドの高級リゾートホテルでの長期滞在型ツアーだった。不安と期待を胸に抱いて、同じツアーに申し込んだ6人の男女と共にインドへ向かうイヴリン。しかし、到着したのは、近い将来豪華になる(予定の)寂れたホテルだった。ホテルの復興に情熱と野心を燃やす若き支配人、ソニー(デヴ・パテル)に半ば呆れつつも、異国の地で新しい生活を始めることを決めた7人。「進化論の生物のように」環境に順応していくなかで、自分の能力を活かせる仕事を得たり、素直に気持ちをさらけ出せる異性と出会ったり、今までの人生にはなかった喜びを感じるようになる。その最中、ホテルが閉鎖するという知らせが突然舞い込み、彼らは激しく動揺する。果たして、ホテルはこのまま閉鎖してしまうのか。7人それぞれが選ぶこれからの人生とは?


老後に訪れた異国で、人生の新しい章が花ひらく
 想像してみてほしい。老齢を迎えてからどのような生き方をしたいか、新しい仕事や恋に挑む体力や気力が自分にあるか、ということを。インドでの初めての夜、7人の旅行者に向かって、「皆さんは追憶の世代です」と若いソニーが語りかける。何かを追い求めることを終えて、人生の残り香を楽しむ老後は、安らかで快適かもしれない。しかし、本作に登場する7人を見ていると、老いてなお仕事に恋に奔走する生き方も悪くはないように思える。それまでの人生経験を総動員して過ごす今ひとたびの青春時代は、さぞや愉快なものだろう。個性豊かな7人の老男女に扮するのは、平均年齢71歳のベテラン俳優たちである。役柄と同じように、初めてインドを訪れたキャストが大半だったらしく、彼らの顔に浮かぶ素直な驚きや感銘の表情が、物語に現実感と深みを与えている。知らない土地で、異文化の洗礼を受けながら、第2の人生を探す老後もアリかもしれない。そう考えるひとが多く誕生するであろう、生き方のヒントを与えてくれる作品だ。



▼『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』作品・公開情報
原題:The Best Exotic Marigold Hotel
2011年/イギリス=アメリカ=アラブ首長国連邦/英語、ヒンディー語/124分
原作:デボラ・モガー
監督:ジョン・マッデン
出演:ジュディ・デンチ、ビル・ナイ、トム・ウィルキンソン、マギー・スミス、デヴ・パテル
配給:20世紀フォックス映画
●『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』公式サイト
(C) 2011 Twentieth Century Fox
※2013年2月1日(金)、TOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマほか全国ロードショー

文:南天

  • 2013年01月31日更新

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