逃げる老人、追うゾンビ。世界最遅のデットヒート-『ロンドンゾンビ紀行』

  • 2013年01月21日更新

祖父が入居しているイースト・エンドの老人ホームを手伝うアンディとテリー。立ち退きを<要求されている老人ホームを救うため、二人は銀行強盗を画策するが、あっけなく警官隊に囲まれてしまう。もはやこれまでと覚悟を決めた瞬間、ゾンビが再開発の発掘現場から蘇り警官を襲い始める。騒然となる街、ロンドン。その頃、ホームの老人たちはゾンビから逃れるため、世界最遅のデットヒートを繰り広げていた。オリンピックスタジアムを始めとするイースト・エンドの再開発エリアで目覚めたゾンビは人肉を食らう、恐るべきゾンビでありながら、歩くスピードを同じくする老人との死闘をユーモラスに繰り広げる、なんともイギリスらしい、シャープに笑えるゾンビ達。ゾンビを笑いながら、怖がろう。
逃げる老人、追うゾンビ。世界最遅のデットヒート
ロンドンに住むアンディとテリーの兄弟は定職につかず、祖父が入居しているイースト・エンドの老人「ボウ・ベル」老人ホームの手伝いをして暮らしている。かつては貧困層が居住するエリアだったイースト・エンドも大規模な再開発が進み、「ボウ・ベル」老人ホームは高級マンション建設のため、立ち退きを要求されているところだった。祖父を始め、行き場を失ってしまう老人達のため、兄弟はホーム存続をかけて、従妹のケイティとともに銀行強盗を画策する。250万ポンドを手にした強盗は大成功!に見えたものの、兄弟たちを待ち受けていたのは銀行をぐるりと囲む警官隊だった。もはやこれまでと覚悟を決めた瞬間、ふらふらと歩く不気味なな一団が警官隊に襲いかかる。「1666年、王の名のもとに封印された」ゾンビが再開発の発掘現場から蘇ったところだったのだ。銀行強盗どころではない事態に騒然となる街、ロンドン。その頃、ホームの老人たちはゾンビから逃れるため、世界最遅のデットヒートを繰り広げていた。逃げる老人、追うゾンビどちらも驚くほどスローだが必死の攻防は続く。警官から逃れられた、アンディとテリーの兄弟は老人達を救うため、ゾンビであふれる街に飛び出していく。


オリンピックで盛り上がったロンドン。まだ見逃してるところロンドン、ない?
昨年のオリンピックの開催地ロンドン。イースト・エンドはオリンピックスタジアムを始めとする大規模な再開発が進み、旬なスポットに変貌を遂げているエリアだ。オリンピックで多くの観光客が訪れる観光名所になっているが、以前は移民を始めとする貧困層が多く住む地域であった。そこに住むコックニーと呼ばれる人々こそ、ロンドンを象徴する一つの名物でもある。不遇の境遇にありながら、明るく、したたかに生きる人々によってロンドンは支えられている。アンディとテリーの祖父レイが「歳をサバ読んで、入隊して、ナチと戦った」とユーモアたっぷりに語る姿、70歳を超えた元ボンドガールがゾンビに遭遇しても凛としている美しさ、ゾンビになってもぶつかりあうフーリガン達。オリンピックの閉会式のパフォーマンス『英国音楽のシンフォニー』は王道のイギリスらしさを世界中に見せつけたが、つらい境遇を笑い飛ばしながら力強く生き抜いていくイースト・エンドの人達の姿もまた、究極のイギリスらしさの一つだろう。



▼『ロンドンゾンビ紀行』作品・上映情報
2012/88分/英語(コックニー)/イギリス/原題「Cockneys vs Zombies」
監督:マティアス・ハーネー
製作:ジェームス・ハリス/マーク・レーン
脚本:ジェームズ・モラン(『タワーブロック』)
出演:アラン・フォード(『スナッチ』)/ハリー・トリーダウェイ(『ブラザーズ・オブ・ザ・ヘッド』)/ミシェル・ライアン(『バイオニック・ウーマン』)/ラスモス・ハーディカー/オナー・ブラックマン(『007/ゴールドフィンガー』)
提供・配給:彩プロ(ロゴ)/カラーズ(ロゴ)/宣伝:トラヴィス
●『ロンドンゾンビ紀行』公式サイト
※1月12日(土)、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
(C)Bishop Rock Films Limited / Cockneys vs Zombies Limited 2012

文:白玉

  • 2013年01月21日更新

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