『希望の国』初日舞台挨拶レポート ― 豪華俳優陣が語る作品への思い。そして、園子温監督から故・若松孝二監督に送るメッセージ。

  • 2012年11月12日更新

初日舞台挨拶に園子温監督と豪華俳優陣が集結。

 2012年10月22日(土)、映画『希望の国』が公開初日を迎え、新宿ピカデリーでは園子温監督と主演の夏八木勲さん、大谷直子さんほか豪華俳優陣が一堂に会して舞台挨拶を行なった。

『冷たい熱帯魚』(2010)や『恋の罪』(2011)など、実際の事件をベースに「性」や「暴力」といったタブーを描き続けてきた園監督だが、本作では今の日本において最大のタブーともいえる「原発問題」に真っ向から挑む。当日は、午前の早い時間から始まる舞台挨拶にもかかわらず大勢の観客が詰めかけ、登壇者が語る作品への熱い思いに惜しみない拍手を送った。また、舞台挨拶の最後には2012年10月17に不慮の事故で逝去された若松孝二監督への思いを園監督が語ると共に、故人の冥福を祈った。(写真は前列右から、園子温監督、夏八木勲さん、大谷直子さん、でんでんさん。後列右から村上淳さん、神楽坂恵さん、清水優さん、梶原ひかりさん)

鬼才・園子温が日本におけるタブーに真っ向から挑んだ問題作に、海外からも絶賛の声!

― 本作は2012年9月に行なわれたトロント国際映画祭で最優秀アジア映画賞を受賞し、フランス、イギリス、ドイツ、台湾での公開も決定しました。初日を迎えられた感想とともに、この反響について皆さんのお気持ちをお聞かせください。

園子温監督(以下、園) 僕は、この作品を「一見さんお断り映画」と呼んでいて、日本人のためだけに作った作品ですので、津波や地震の詳細なシーンなどは省きました。海外の方には不親切な作品だと思っていましたが、意外なことに海外の方が僕たち以上に3.11(東日本大震災)について詳しく、大きな評価を受けたことに驚いています。いよいよ今日から日本で上映されるわけですが、ここ新宿ピカデリーがわれわれの最初の砦です。朝から舞台挨拶に駆け付けていただいた皆さんに、本当に感謝しております。
夏八木勲さん この作品を観にきてくださって、本当にありがとうごいます。余計なことは言わずに、ただ、この映画を観て楽しんでいただければ幸いです。(トロント国際映画祭の)授賞式には監督が出席されましたが、僕もすぐにその知らせを聞いて、とても嬉しかった。言葉の違いを越えて通じる作品なのだということをとても感じました。
大谷直子さん 作品をご覧になった方から「ドキュメンタリー映画のようで、この人たち(映画出演者)は本当にここに住んでいるのではないかと思った」というお手紙をいただき、嬉しかったです。出演者とスタッフ全員で魂を込めて作りましたので、それが海外の方にも伝わるのではないかと思っています。私たち日本人俳優の顔が海外の大きなスクリーンに映し出されると思うと、違和感があるような、それがまた嬉しいような気持ちです。
村上淳さん こうして初日を迎えることができ、嬉しく思います。日本でこの作品が封じられるというだけでも、凄いことだと思っています。海外で公開が決まったことを今ここで聞いて知りましたが、園監督は凄いとあらためて思いました。
神楽坂恵さん 素晴らしい共演者の方々、スタッフの方々と共にこの作品に携わることができて、本当に嬉しく思っています。早く皆さんに観ていただきたい気持ちでいっぱいです。海外でこの作品が上映されるのは、とても大きな意味があることだと思いますので、多くの方にご覧いただきたいです。
清水優さん 初日を迎え、緊張していますが、この会場にお集りいただいたことに感謝しています。誰もが自分に置きかえて観ることができる映画です。日本人として生まれて、この作品が海外で上映されるということに誇りを感じます。
梶原ひかりさん 私にとって、『希望の国』が10代最後の作品となりました。今日、あらためて、この作品に携われたことを幸せに思います。一人でも多くの方に観ていただけたら嬉しいです。フランスで公開した際にはパリなどに観に行けたらいいですね。(関係者の方を見ながら)お願いします(笑)。
でんでんさん この映画を観終わったあとは、周りの方にクチコミしてください。特に政治家の方や、官僚の方、東電の方などに勧めてください。園組に参加していると、いろいろな国で作品が上映されるのが嬉しいですね。僕も『冷たい熱帯魚』に出演したおかげで海外ではちょっとだけ顔が売れているみたいです……って、すみません。自慢しちゃって(笑)。

「故・若松孝二監督の燃える闘魂を注入して、意思を継いでいきたい」(園監督)

― 先日、ご逝去された若松孝二監督も、原発をテーマにした映画を撮る予定だったそうですね。

 つい最近、映画祭で訪れた釜山の空港で、若松監督にそれは大きな声で話しかけられて。今回のご逝去には本当に驚いています……。若松さんは、最後の闘う映画監督だと思っています。次回作は原発について撮るとおっしゃって、この作品についても「こんなんじゃ甘いぞ!」って言われたばかりで、もっとシビアな映画ができたと思いますし、是非とも完成させていただきたかった。社会に立てつき、批判し、一生懸命に闘ったのは若松さん一人だったから、これからも作品を観続けていきたいですし、僕も若松さんの燃える闘魂を注入して、意思を継いでいきたいと思います。最後に空港で会うなんて、若松さんはまるで空に飛び立つようでしたね。ご冥福を心からお祈りしています。

▼『希望の国』作品・上映情報
《ストーリー》
東日本大震災から数年後の20XX年、長島県。酪農を営む小野泰彦(夏八木勲)は、妻・智恵子(大谷直子)や息子夫婦(村上淳・神楽坂恵)と穏やかな日々を送っていた。そんなある日、長島県東方沖に大地震が発生。それに続く原発事故が人々を襲う。近隣地域一帯は避難区域となり、強制退避を命じられるが、泰彦は長く住み着いた家を離れることができない。そんな折、いずみの妊娠が発覚する。帰るべき場所を失い、放射能におびえる人々は、終わりなき絶望と不安の先に、希望の未来を見出すことができるのだろうか……?
2012/日本=イギリス=台湾/133分
脚本・監督:園 子温
出演:夏八木勲、大谷直子、村上 淳、神楽坂恵、清水 優、梶原ひかり、菅原大吉、山中 崇、河原崎建三、筒井真理子、でんでん ほか
挿入曲:マーラー 交響曲第10番 第一楽章「アダージョ」(Naxos Japan)
製作:「希望の国」製作委員会
配給:ビターズ・エンド
コピーライト:©2012 The Land of Hope Film Partners
『希望の国』公式ホームページ
※10/20(土)、新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー!

取材・編集・文:min スチール撮影(舞台挨拶):仲宗根美幸


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