『I’M FLASH!』 ― 藤原竜也と松田龍平が演じる、囚われた男と囚われない男。

  • 2012年09月01日更新

『ナインソウルズ』『空中庭園』などの豊田利晃監督と、舞台俳優として世界的に名を馳せ、映画でも『カイジ』シリーズなどで活躍する藤原竜也の初タッグは、速度と熱量のある刺激の強い作品だ。

 新興宗教の教祖である吉野ルイは運命の女と出会ったことから、自分の人生に疑問を感じていく。その時から、ルイを守るために雇われていた3人のボディガードは、一転して彼の暗殺者となった。 

 神としての生を捨てようとしたルイの前に立ちはだかる殺し屋・風との闘いは熾烈を極めていく。

 生と死、希望と絶望、光と闇、どちらを選ぶか、突きつけられる作品だ。

藤原竜也が若き教祖の苦悩を演じる。

 藤原竜也は教祖の役がよく似合う。

 カリスマ性があるという意味だ。台詞と存在感に説得力があるのだ。その特性を生かした新興宗教の若き教祖・吉野ルイが信者に「死と救済」について語りかけるシーンに注目。ついフラフラっと信じたくなってしまう。

 そんなルイが、謎の美女・流美(水原希子)に出会ったことから大きく運命に変化が起きていく。このまま教祖でい続けることに疑問を感じ始めたルイを家族は許さず、ルイを守るために雇われた3人のボディガードにルイ暗殺命令が下されるのだった……。

 藤原竜也が、豊田利晃監督と仕事をしたいと熱望して誕生した映画は、豊田監督の執拗に追いつめるような演出により、藤原の新たな可能性を切り拓く。

 ちなみに、吉野ルイという名前は、酒場詩人・吉田類に由来しているという。


松田龍平が、教祖ルイと対照的な男として立ちはだかり……。

 松田龍平は自由な男がよく似合う。

 その飄々とつかみ所がなく、しかし何か修羅場を経てきたような腹をくくった雰囲気。松田はルイを暗殺しようと追いつめる男・新野風を演じている。辰年の今年、藤原竜也VS松田龍平 Wドラゴン対決として注目されたふたりが対峙する場面は、ヒリヒリとスリリングだ。

 祖父から三代続く教団と家に囚われているルイと、何にも囚われない風。対照的なふたりの闘いの結末には圧倒される。

 松田は十代の時、豊田監督作『青い春』『ナインソウルズ』に出演して以来、久々の豊田組参加だが、そうとは感じさせない、監督と俳優の信頼を感じさせる。

生と死が激突する時、何を見えるのか。

 松田演じる風と同じボディガードに扮した仲野茂と永山絢斗の3人組がいいキャラクター。仲野はパンクバンド・アナーキーのボーカルとしても有名だが、ワケありボディガードを渋かっこよく演じている。永山も若さを生かした役。ルイと3人が一緒にいる場面はまるで神と東方の3博士のようと妄想が膨らむ。

 他に、『へルタースケルター』でも印象的だった水原希子、豊田組常連の板尾創路、大楠道代、中村竜也、故原田芳雄の娘・原田麻由、舞台で活躍する北村有起哉などが藤原演じるルイを取り囲み影響を与えていく。

 ルイが選ぶのは生か死か。神々の島のようなエキゾチックな南の島を舞台に命が激突する。その疾走感、衝撃、そして果てしない渇いた虚無感……、豊田利晃監督のセンスと才能が存分に発揮されている。

 この映画のために結成されたI’MFLASH!BAND(チバユウスケ、中村達也、ヤマジカズヒデ、KenKen)が演奏する鮎川誠の作曲のテーマ曲も気持ちを激しく揺さぶる。

▼『I’M FLASH!』作品・公開情報
2012年/日本/カラー/91分]
監督・脚本:豊田利晃 

出演:藤原竜也/水原希子 仲野茂 永山絢斗 板尾創路/原田麻由 北村有起哉 柄本佑 中村達也/大楠道代/松田龍平
製作:ホリプロ スチューディオスリー

配給:ファントム・フィルム
『I’M FLASH!』公式サイト
コピーライト:(C) 2012「I’M FLASH!」製作委員会
※9月1日テアトル新宿ほか全国ロードショー!

文:木俣冬


  • 2012年09月01日更新

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