『アウェイクニング』 - 寄宿学校に棲む幽霊の正体は? 美しくも哀しい英国ゴシックホラー。

  • 2012年07月26日更新
 第一次大戦で多くの人が家族を亡くし、国全体がその暗い影を引きずっていた1920年代のイギリス。その時代の陰鬱な雰囲気、もとは私邸だったという広く薄暗い寄宿学校というゴシックホラー格好の要素を従え、背筋が凍るような超常現象とその背景を切なく美しく描く。

少年の幽霊に呼び起こされた過去の記憶

 大戦で婚約者を失い、その死を忘れることができないフローレンスは、理論的かつ系統的に超常現象を暴くことに没頭していた。そんなある日、ルークウッド寄宿学校から、校内に出現する少年の幽霊の調査を依頼される。騒動はすぐに生徒のいたずらだということが判明するが、その後彼女は説明のつかない恐ろしい出来事に遭遇。クリスマス休暇で生徒が帰省してしまった学校に残り、その謎を徹底解明することを決意する。そして、ぼんやりと見える少年の幽霊を調べるうちに、彼女自身が心の中で封印していたある記憶に辿りつく。

心に闇を抱える登場人物たち

 フローレンス役で主演を務めるのは、『それでも恋するバルセロナ』『ザ・タウン』などに出演したレベッカ・ホール。線が細く透き通るような美しさを持つ彼女ゆえ、不可思議な現象と自分でも気付かない心の闇に怯える様子が見事に嵌る。秘密を抱えるのはフローレンスだけではない。一緒に学校に残り、徐々に彼女に惹かれていく教師のロバートや寮母のモード、両親が遠方にいて帰省できなかった少年トムも何かを背負っているようだ。物語の随所に過去の弊害が見え隠れする。

驚愕の真相が明らかに

 彼女が学校で目にしたもの、そして幽霊の正体は? ラストに差し掛かると物語が一気に加速し、その真相が明らかになっていく。やり場のない怒りと悲しみが生み出すのは、畳みかけるような恐怖ではなく、身が震えるような感覚だ。真実を知らされた観客は、恐ろしさよりも別のベクトルの感情が湧きあがるに違いない。そこにこの作品の魅力が集約されている。

 この作品が公開されるのは、ロンドンオリンピックの開会式翌日になる。この夏一番の話題となる国が発信する上品なホラー映画で、 別の側面からイギリスを味わってみるのもよいだろう。

▼『アウェイクニング』作品・公開情報
2011年/イギリス/カラー/107分
原題:THE AWAKENING
監督・脚本:ニック・マーフィー
共同脚本:スティーブン・ヴォーグ
制作:デヴィッド・M・トンプソン
出演:レベッカ・ホール、イメルダ・スタウントン、ドミニク・ウェスト他
提供:アーススター・エンターテインメント
配給:熱帯美術館
宣伝・配給協力:アルシネテラン
コピーライト:(C)StudioCanal/BBC 2011
※2012年7月28日(土)、ヒューマントラストシネマ渋谷にてレイトショー

文:吉永くま


  • 2012年07月26日更新

トラックバックURL:http://mini-theater.com/2012/07/26/taw/trackback/