「巨匠たちのサイレント映画時代2~清水宏の女性映画」―黄金週間は神保町で「ライヴ上映」を愉しみ尽くす。

  • 2012年04月28日更新

神保町シアターのサイレント映画特集、待望の第2弾。

 2012年1月、神保町シアターのお正月特別興行として開催された「巨匠たちのサイレント映画時代」は、大好評のうちに幕を閉じた。もともとサイレント映画に造詣が深かったかたはもちろん、それまでこの分野になじみのなかった映画ファンも虜にしたこの企画が、2012年のゴールデン・ウィーク、パワー・アップして帰ってくる。それが、4月28日(土)~5月6日(日)に開催される「巨匠たちのサイレント映画時代2」 ― 1920~30年代の日本映画から選りすぐった作品群が、サイレント映画ピアニストと活動弁士を招いて「ライヴ上映」されるのだ。

本企画のチラシ。表紙の写真は、上映作『斬人斬馬剣』より。

『斬人斬馬剣』
昭和4年/松竹京都/白黒/スタンダード/19分
監督・原作・脚本:伊藤大輔
出演:月形龍之介、天野刃一、伊藤みはる、関操、石井貫治、市川傳之助、岡崎晴夫
※東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品

最強の布陣による「ライヴ上映」。第一線で活躍するピアニストと活動弁士が顔を揃えた。

 劇場でサイレント映画を観る愉しみのひとつが、「ライヴ上映」 ― 生演奏や活動弁士による映画説明がつく上映のことである。今回の企画では、すべての上映にピアニストによる生伴奏がつく。加えて、一部の作品は弁士の映画説明つきで上映される。出演するピアニストは、柳下美恵氏、黒田京子氏、神﨑えり氏、天池穂高氏、小林弘人氏の5名。活動弁士は、片岡一郎氏、坂本頼光氏の2名。「サイレント映画の上映」について話題になれば必ずお名前があがる、第一線で活躍する名手たちが顔を揃えた。

 上映作品と出演者の組み合わせ等、詳細は神保町シアターの公式サイトをご参照いただくとして、ここでは「ライヴ上映を最も贅沢に愉しむ方法」をご提案したい。このたび上映される作品に、伊藤大輔監督の『斬人斬馬剣』(昭和4年)、稲垣浩監督の『諧謔三浪士』(昭和5年)、五所平之助監督の『恋の花咲く 伊豆の踊子』(昭和8年)があるが、この3本は、日によって異なるピアニストと弁士の組み合わせで上映されるのだ。

『斬人斬馬剣』+『諧謔三浪士』
●4月28日(土)19:30~ 柳下美恵(ピアノ)+片岡一郎(映画説明)
●5月3日(木・祝)14:30~ 柳下美恵(ピアノ)+坂本頼光(映画説明)

『恋の花咲く 伊豆の踊子』
●4月29日(日・祝)12:00~ 神﨑えり(ピアノ)+片岡一郎(映画説明)
●5月4日(金・祝)14:30~ 柳下美恵(ピアノ)+坂本頼光(映画説明)

 同じ曲でも、演奏者が違えば味わいが変わる。同じシナリオの演劇も、キャストが違えば印象が変わる。サイレント映画のライヴ上映も、そうである。同じ映画でも、出演者が違えば、ピアニストと弁士の組み合わせが変われば、それぞれでまったく異なる個性と魅力が生まれるのだ。お時間が許すかたはぜひ、上記の日程で「1本の作品を2回」ご鑑賞になっていただきたい。同じ作品をご覧になったとは信じられない刺激と愉悦を味わえるはずである。特に、「サイレント映画をライヴ上映で観たことがない」というかたには、今こそ体験していただきたい、最上の愉しみかたである。この贅沢を一度知ったら、「あの作品を、今度は○○さんの伴奏つきで観たい。あ、このピアニストのかたとあの弁士のかたが組んだら、どんな雰囲気になるのだろう?」等、以後、サイレント映画のライヴ上映スケジュールをチェックするのに忙しくなってしまわれることだろう。

すべてを語る饒舌な「毛糸玉」 ― 『港の日本娘』

『港の日本娘』
昭和8年/松竹蒲田/白黒/スタンダード/1時間11分
監督:清水宏
出演:及川道子、井上雪子、江川宇礼雄、沢蘭子、逢初夢子、齋藤達雄、南條康雄
※東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品

 お正月の特別興行でも好評を博した、清水宏監督の『港の日本娘』が、今回も上映される。

『港の日本娘』
●5月5日(土・祝)19:30~ 柳下美恵(ピアノ)

 この日、この回限りの、アンコール上映である。横浜、長崎、神戸と、「日本の港町」を水商売で渡り歩く女の、数奇でせつない、だが、凛とした生きざまが鮮烈な恋愛映画だ。壮絶な悲哀に満ちた恋模様、和装に洋風のアクセサリーを合わせる着物の着こなし等、ストーリー的にもヴィジュアル的にも見どころ満載の作品だが、本作で最も注目していただきたいのは、「毛糸玉」の使いかたである。あるシーンで、そこに必要な情景描写と心理描写のすべてを、ひとつの毛糸玉が余すところなく「語る」のだ。これほどまでに「饒舌な」毛糸玉を見られる機会は、ほかにまずないだろう。本作をご覧になったことがないかたは、「言っている意味がわからないんだけど」と思われて当然である。だからこそ、百聞は一見にしかずである。本作で描かれる毛糸玉の凄味は、ご自身の目で確認していただきたい。

清水宏監督のトーキーも存分に味わおう ― 併催「清水宏の女性映画」

『港の日本娘』はサイレント映画だが、清水宏監督の代表作にはトーキーも数多くある。2012年5月7日(月)~11日(金)は、「清水宏の女性映画」と題して、神保町シアターが清水監督一色に染まる。『信子』や『泣き濡れた春の女よ』等、自立した女性が主人公の作品群を、この機会に併せて堪能しよう。

▼「巨匠たちのサイレント映画時代2~清水宏の女性映画」上映情報
「巨匠たちのサイレント映画時代2」
期間:2012年4月28日(土)~5月6日(日)
「清水宏の女性映画」
期間:2012年5月7日(月)~11日(金)
会場:神保町シアター
料金:当日1,500円均一
「神保町シアター」公式サイト
※上映作品・出演者・タイムスケジュール等の詳細は、上記の公式サイトをご参照ください。

文:香ん乃

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  • 2012年04月28日更新

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