『魔弾の射手』―ドイツ・オペラの名作が、完全映画化。

  • 2012年03月27日更新

ワーグナーにも影響を与えたドイツ・オペラの名作が、スクリーンで「上演」。

 カール・マリア・フォン・ウェーバーが作曲した『魔弾の射手』は、ドイツの初期音楽界を代表するオペラの名作である。1821年にベルリンで初演されて以来、愛され続けているこのオペラは、「歌劇王」として名を残す作曲家リヒャルト・ワーグナーにも多大な影響を与えた。

 上演時間約2時間40分の『魔弾の射手』が、142分という舞台に限りなく近い分数で、このたび映画化された。監督はイェンス・ノイベルト。映画ファンにはなじみのない名前かもしれないが、無理もない。ノイベルトは映画監督である以前に、オペラや演劇の演出家なのである。

 ときは、ナポレオン戦争の直後 ― 狩人のマックス(ミヒャエル・ケーニヒ)は射撃の名手だが、近頃は不調で、意のままに銃を操ることができない。これでは、一生、後悔するはめになる。明日に控えている射撃の大会でよい結果を残せなければ、愛する恋人のアガーテ(ユリアーネ・バンゼ)と結婚できなくなるからだ。アガーテの父・クーノー(ベンノ・ショルム)は、大会での優勝を婚姻の条件にしているのである。一方、マックスの戦友・カスパール(ミヒャエル・フォッレ)も、アガーテを慕う男のひとりだった。おのれの恋心と欲望を抑えきれないカスパールは、「百発百中の魔弾」の存在をマックスに教えるが……。

物語を事前に予習してから観ることが鍵。

 キャストはいずれも、実績と名声のある声楽家たち。彼らの声を彩るのは、ダニエル・ハーディング指揮のロンドン交響楽団。クラシック音楽ファンにとっては、まさに夢の競演である。ただ、「オペラが完全映画化されている」という作品なので、「台詞=歌詞」に抽象的な表現も多く、ストーリー展開を追うのが難しい部分もある。オペラに慣れていない人は、予備知識を仕入れてから観ないと戸惑う可能性が高い。物語の背景とあらすじを事前に予習して、「ストーリーよりも音楽を堪能するために観る」ことが、この作品を存分に楽しむこつである。

▼『魔弾の射手』作品・公開情報
2010年/スイス/142分
原題:DER FREISCHUTZ
監督:イェンス・ノイベルト
作曲:カール・マリア・フォン・ウェーバー
脚本:ヨハン・フリードリヒ・キーント
出演:フランツ・グルントヘーバー ベンノ・ショルム ユリアーネ・ヴァンゼ レグラ・ミューレマン ミヒャエル・フォッレ ミヒャエル・ケーニヒ ルネ・パーペ オラフ・ベーア
演奏:ロンドン交響楽団
指揮:ダニエル・ハーディング
合唱:ベルリン放送合唱団
合唱指揮:サイモン・ハルシー
配給:セテラ・インターナショナル
コピーライト:(C)SYQUALI MULTIMEDIA AG
『魔弾の射手』公式サイト
※2012年3月10日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、同24日(土)よりシネ・リーブル梅田にて公開中。近日、名古屋シネマテークにて公開。

文:香ん乃


  • 2012年03月27日更新

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