『HIDDEN ヒドゥン』-病院廃墟の地下に隠された恐るべき秘密。

  • 2012年03月21日更新

 殺伐とした事件の多い今日でも、人体実験を行い依存症患者の脳内物質からミュータントを作り出すというシチュエーションはかなり不気味である。800万ドルという低予算、新人監督、若手俳優と、B級ホラーファンにはたまらない要素が揃った本作。居合わせた者が次々と犠牲になるという定番のストーリー展開も期待を裏切らない。製作総指揮は『バイオハザードIV アフターライフ』のドン・カーモディ。SFXは『ピラニア3D』のニューブリードVFXが担当している。

病院の廃墟で一人、また一人と命を奪われる……。

 ブライアンは友人たちとともに、医師の母親が遺した依存症治療施設を訪ねる。そこは17世紀に建てられた見事な造りの洋館だった。一行は母親の友人ヘイリーの案内でこの建物の探検を始めるが、地下の迷路を巡るうちに依存症患者の治療という名目でおぞましい研究が行われていたことに気付く。それは、患者の脳内物質を人間の血肉を好む子供の姿をしたミュータントに変貌させるというものだった。ミュータントたちは暗い建物の内部で蛍のような昆虫の群れと共生し、虫たちを使って訪れる人々を死の罠に誘い込む。ブライアンたちはこの恐怖の建物から脱出しようとするが、次第に追いつめられてゆく。

ゲーム感覚で進む恐怖の脱出劇。

 雪の中に佇む廃墟、迷路のような地下、得体のしれない子供、昆虫。恐怖を煽る演出により、不穏な雰囲気が作品全体を覆う。手術道具や無残に壊れた人形などのアイテムが次々と現れ、まるでゲームの中のダンジョンに迷い込んだ感覚だ。抑えられた色彩の中、蛍に似ているという黒光りする昆虫の艶が存在感を放つ。意外なラスボスの登場まで恐怖以外の感情はあまり描かれず、皆ひたすら暗い地下をひたすら手探りで前に進む様子に息が詰まりそうになる。

“母親”という絶対的存在の暴走。

 かつて母親と過ごした施設の廃墟で、幼い頃の悪夢のような記憶がフラッシュバックするブライアン。そのトラウマから、母親と疎遠であったり根無し草で不節制な生活を送ったりしている理由の一端が垣間見える。彼もまた、母親=マッドサイエンティストの研究の犠牲者といえるだろう。飽くなき探究心が、時に生命倫理を逸脱して大きな悲劇をもたらすことは、架空の世界でなくても起こり得る。

 依存症の治療内容とモンスターのようなミュータントとの関連性は、一度観ただけではわかりにくい部分もある。でもそこは小難しく考えないでほしい。自身が母親という絶対的存在でありながら、自分の技術への執着と過信の果てに子供の姿をした残虐なミュータントを作ってしまう、それこそが大きな問題なのだから。

▼『HIDDEN ヒドゥン』作品・公開情報
2011年/カナダ・イタリア/カラー/82分/ビスタ/ドルビーデジタル
原題:HIDDEN 3D
監督:M.R. 
製作総指揮:ドン・カーモディ(『バイオハザードⅣ アフターライフ』)
撮影:ブノワ・ボーリュー 
編集:イヴォンヌ・ティボードー(『セックス依存症だった私へ』)
出演:ショーン・クレメント シモネッタ・ソルダー ジョーダン・ヘイズ ジェイソン・ブリッカー
配給:熱帯美術館
コピーライト:(C) PCF Hidden The Movie Inc. /Redark S.r.l.
※【東京】3/24(Sat)~4/6(Fri) <未体験ゾーンの映画たち2012>レイトショー(ヒューマントラストシネマ渋谷にて) 【大阪】※こちらでの上映情報は追ってお知らせします 文:吉永くま

  • 2012年03月21日更新

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