『セイジ—陸の魚—』—情緒的な映像と音楽にのせて描く、命と絆。豪華キャストが集結した伊勢谷友介監督の意欲作。

  • 2012年02月18日更新

 2003年の『カクト』以来、8年ぶりとなる伊勢谷友介監督の第2作『セイジ—陸の魚—』が2012年2月18日(土)よりテアトル新宿ほかで公開される。原作は、辻内智貴のロングセラー小説『セイジ』(筑摩書房)。“人が人を癒すことの難しさ”を描いた原作に深く感銘を受けた伊勢谷監督は、俳優や実業家として多忙な日々を送りながらも共同で脚本を執筆。5年という歳月をかけて本作を作り上げた。編集作業の途中で、2011年3月11日の東日本大震災に遭い、命や絆についてより深く考えるようになったという伊勢谷監督。作品に込められたメッセージを、スクリーンを通して感じてほしい。

自分探しの旅に出た「僕」が出会う、衝撃的な夏の記憶。

 まだバブルの熱気が残っていた時代。学生最後の夏休みを迎えた「僕」(森山未來)は、早々に就職先を決めて、一人自転車旅行に出かけた。見知らぬ街をいくつも越えた時、衝突事故を起こして旧道沿いに立つドライブイン・HOUSE475に辿り着く。
 そこに居たのは、寡黙だが心を捉える言葉を持つ店主のセイジ(西島秀俊)と、魅力的だがどこか影のある店のオーナー・翔子(裕木奈江)。夜な夜な集まる個性的な常連客たちに何故か強く惹かれた「僕」は、いつのまにか住み込みで働くようになり、そこに自分の居場所を見つけたような気分になる。次第にセイジの存在が気になり始め、密かに観察し始める「僕」。そんなある日、平和な日常を一瞬で吹き飛ばしてしまう凄惨な事件が起こる……。

映画界をけん引する、“濃い”キャストが集結!

 セイジを演じる西島秀俊と、「僕」を演じる森山未來。役に入り込むことで有名なふたりのダブル主演と聞いて、興味を惹かれた人も多いはず。もちろん本作でも、その役者魂を存分に発揮している。極限まで身体を絞り撮影に臨んだ西島は、その研ぎ澄まされた肉体と表情でセイジの生き様を言葉以上に訴える。
 一方、若者特有の迷いや好奇心に溢れた「僕」をナチュラルに演じる森山は、旅人である「僕」と同様に東京からロケ地の日光まで自転車で旅をして役作りをしたという。そんなふたりにも負けない存在感を漂わすのが、久々に邦画復帰となる裕木奈江。スクリーンから香り立つような大人の色気に、思わず深いため息を漏らしてしまった。HOUSE475の常連客には、新井浩文、渋川清彦、滝藤賢一と個性派が顔を連ね、名優・津川雅彦が盲目の老人を演じるなど、“濃い”俳優陣の競演も本作のみどころだ。

人が人を癒すことの難しさ—今だからこそ、ひとりひとりが考えて欲しいテーマ。

 瑞々しい自然美を背景に繰り広げられる人間ドラマは「僕」の視点で進行し、次第にセイジや周囲の人々が抱える心の痛みに迫っていく。絶望と優しさを滲ませながらも不器用にしか生きられないセイジ。まるで陸に上がった魚のように、この世で生きることを諦めてしまったセイジの過去とは? そして、最後に見せた行動の本意とは? やがて迎える衝撃的なクライマックスを、あなたはどう感じ、どんな風に受け入れるだろうか。
2011年に起きた未曾有の大震災で、きっと多くの人が命や絆について考えさせられたのではないだろうか。そんな今だからこそ “人が人を癒すことの難しさ”というテーマに真正面から向かったこの作品は、それぞれの胸により深い余韻を残すことだろう。

▼『セイジ—陸の魚—』作品・上映情報
2011年/日本/108分
監督:伊勢谷友介
出演:西島秀俊、森山未來、裕木奈江、新井浩文、渋川清彦、滝藤賢一、二階堂智、津川雅彦
撮影監督:板倉陽子
脚本:龜石太夏匡、伊勢谷友介、石田基紀
原作者:辻内智貴
音楽:渋谷慶一郎
配給:ギャガ+キノフィルムズ
コピーライト:(C)2011 Kino Films/Kinoshita Management Co.,Ltd
『セイジ−陸の魚−』公式ホームページ
※2012年2月18日(土)よりテアトル新宿ほかロードショー!

文:min

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