映画の貴公子 ボリス・バルネット傑作選『帽子箱を持った少女』―旧ソビエトの巨匠の愛らしいコメディを、ピアノの生伴奏と共に。

  • 2012年02月07日更新

旧ソビエトを代表する娯楽映画の名手、ボリス・バルネット監督。

 1902年生まれのボリス・バルネット ― ソビエト社会主義共和国連邦(現在のロシア)を代表する映画監督のひとりである。ロシア革命で赤軍に志願し、内戦終了後にプロ・ボクサーとして活躍していたところをレフ・クレショフ監督に見いだされて映画界に入ったという、数奇な経歴の持ち主だ。1965年、62歳で自ら命を絶った。

 サイレントからトーキーへと移り変わっていく映画の黄金時代に、喜劇、悲劇、サスペンス、ミュージカルなどなど、あらゆるジャンルの作品を世に送りだしてきたバルネット監督は、まさに娯楽映画の名手。現在も欧米を中心に愛され続けているバルネット監督の特集上映「映画の貴公子 ボリス・バルネット傑作選」が、2012年1月21日(土)~2月10日(金)、東京・渋谷のユーロスペースにて開催されている。

帽子作りの女の子をめぐるキュートな無声映画が、ピアノの生伴奏付きで上映。

『帽子箱を持った少女』
ソ連/1927年/68分/サイレント/白黒
原題:DYEVUSHKA S KOROBKOI
監督:ボリス・バルネット
脚本:ワレンチン・トゥルキン ワジム・シェルシェネヴィチ
撮影 ボリス・フランツィソン ボリス・フィリシン
出演 アンナ・ステン イワン・コワリ=サムボルスキー ウラジーミル・フォーゲリ セラフィーマ・ビルマン
2月9日(木)21:10~ ピアノ生伴奏付き上映
(ピアノ演奏:柳下美恵)

 今回のラインアップの中で唯一のサイレント映画『帽子箱を持った少女』は、2月9日(木)にピアノの生伴奏付きで上映される。演奏者は、サイレント映画ピアニストの柳下美恵氏。会場の映画館・ユーロスペースにピアノを搬入しておこなわれる、特別で贅沢な上映だ。

レーニン時代の拝金主義者たちを痛烈に風刺した、「ネップ・コメディ」の傑作。

 帽子作りが生業のナターシャは、たまたま知りあった貧しい学生イリアの部屋を確保するため、偽装結婚をする。そんなある日、ナターシャが代金の代わりに客からもらった宝くじが当選していた。彼女に宝くじをあげた男は、それを取り返そうと血眼になり、一方、ナターシャとイリヤの関係にも変化が起こって……。

 アンナ・ステン演じるナターシャをめぐって繰り広げられる、宝くじと恋の大騒動。コミカルで愛らしい作品であるのはもちろん、当時、レーニンがおこなった新経済政策(NEP)によって社会に現れた拝金主義者たちを痛烈に風刺した「ネップ・コメディ」の傑作でもある。存分に笑って、ピアノの生演奏に酔って、レーニン時代のソビエトに思いを馳せる ― 心にも好奇心にも美味しいそんな一夜を、渋谷で過ごしてみるのはいかがだろうか。

▼「映画の貴公子 ボリス・バルネット傑作選」開催情報
期間:2012年1月21日(土)よりユーロスペースにてレイトショー(2月10日まで)
劇場:ユーロスペース
配給・宣伝:エスパース・サロウ
「映画の貴公子 ボリス・バルネット傑作選」公式サイト
※詳しい上映スケジュール等詳細は、上記の公式サイトをご参照ください。

文:香ん乃


  • 2012年02月07日更新

トラックバックURL:https://mini-theater.com/2012/02/07/boushibako/trackback/