『ロード・オブ・セイラム』― 極彩色で際立つ、オカルト感。 ロブ・ゾンビ節が炸裂するサイケデリッ ク・トリップ・ホラー!

  • 2013年10月03日更新

魔女狩り、悪魔崇拝、宗教冒涜……禁断の扉をまたまたロブ・ゾンビが大解放!
ロブ・ゾンビ監督の最新作『ロード・オブ・セイラム』が2013年9月28日(土)に日本公開を迎えた。ロブ・ゾンビといえば、ミュージシャンとして過去7回もグラミー賞にノミネートされているヘヴィーメタル界の巨匠だが、熱狂的なホラー映画好きをこじらせて2003年に初監督した『マーダー・ライド・ショー』がカルト的な人気を獲得して以来、『デビルズ・リジェクト マーダー・ライド・ショー2』(’05)、ジョン・カーペンター監督作にしてスプラッター映画の超名作をリメイクした『ハロウィン』(’07)、『ハロウィン2』(’09)などの作品で、観客を恐怖&狂気の世界へと引き込みながら独自の映像感覚を確立してきたホラー界の異端児だ。監督・脚本を手掛けた最新作は、1692年にマサチューセッツ州・セイラムで実際に起きた「セイラムの魔女裁判」を独自解釈した完全オリジナル作品。魔女狩りや悪魔崇拝、宗教冒涜といった禁断の世界を、ロブ・ゾンビ節ともいえる独創的な装飾美と極彩色の映像を織りまぜて描く。随所に散りばめられた過去のSF&ホラー映画へのオマージュも、映画ファンにはたまらない観どころの1つだ。


解き放たれた魔女の呪いが、小さな街に惨劇をもたらす……!
舞台は1692年のアメリカの片田舎、セイラムへと遡る。“ロード・オブ・セイラム(セイラムの領主)”と名乗る7人の女性たちがサタン(悪魔)を呼び出す儀式をしたとして、魔女裁判にかけられる。火あぶりによる死刑を宣告された彼女たちだが、刑の執行直前にグループのリーダーであるマーガレット・モーガンは判事に呪いをかける――。やがて、現代。薬物依存症を克服中のハイジ(シェリ・ムーン・ゾンビ。ロブ・ゾンビ監督の嫁)はセイラムのラジオ局でDJをしていた。そこへザ・ロードと名乗る差出人から1枚のレコードが届く。レコードを再生すると聞こえてきたのは、奇怪な音と不気味な声。その瞬間、ハイジの脳裏には忌まわしいヴィジョンがフラッシュバックする。ハイジは、魔女たちを死刑にした判事の末裔だったのだ。ハイジが解いてしまった魔女の呪いは、次第にハイジとセイラムの街を蝕みはじめる……!

黒い史実「魔女狩り」の定説を、独自視点で解釈。
魔女裁判における魔女とは、キリスト教の概念で、悪魔と結託した者を指す(鼻を動かすと音が鳴ったり、宅急便を開業する類いの魔女とは異なる)。そうした「魔女狩り」のはじまりには諸説あるが、13世紀頃からアメリカやヨーロッパの各地で行われ、16世紀後半から17世紀に最盛期を迎える。もちろん、処刑された人々に魔女としての確たる証拠はなく、ほとんどは疑心や妄想による密告であった(時には家族や親しい友人間で互いに密告し合ったというから、コワい)。この人類史上最悪の黒歴史は、社会とキリスト教の疲弊が生んだ集団ヒステリーによるものというのが現在の定説だ。そうした人間心理そのものがホラーともいえるが、本作の中ではセイラムの魔女の呪いは実在したものとして現在に甦る。 実際、当時のセイラムのはピューリタン(清教徒)のコミューンとして、自分たちは神の意志の元に集められた共同体と信じ、異端なものを排除することは高潔な行為だという概念があった。ロブ・ゾンビ監督は、そうした排他的な集団意識に嫌悪をおぼえる自由な魂を持った者として魔女を捉え、このばかげた不合理に呪いというカタチで制裁を加える。呪いという言葉は、どこかダークな色彩を感じさせるが、本作では、毒々しくもポップなネオンカラーの中に存在する。それは、夜の国道沿いに浮かぶ怪しげなモーテルのサインのように、闇夜が濃く深いほど不穏さを強く感じさせるのだ。

▼『ロード・オブ・セイラム』作品・公開情報
2012年/アメリカ/101分/R15
原題:THE LORDS OF SALEM
監督・脚本・製作:ロブ・ゾンビ
製作:ジェイソン・ブラム、アンディ・グールド、オーレン・ペリ、スティーブン・シュナイダー
出演:シェリ・ムーン・ゾンビ、ブルース・デイヴィソン、ジェフリー・ダニエル・フィリップス、ケン・フォリー、ジュディ・ギーソン、ディー・ウォレス、メグ・フォスターほか
字幕翻訳:稲田嵯裕里
配給:ショウゲート
コピーライト: © 2012 Alliance Films (UK) Limited, All Rights Reserved.
●『ロード・オブ・セイラム』公式サイト
※ 2013年 9月28日(土)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー
文:min

  • 2013年10月03日更新

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