『スプリング・フィーバー』ロウ・イエ監督インタビュー―禁令中にも関わらず、撮影を続ける監督の最も伝えたかったメッセージ

  • 2010年11月17日更新

20101025_47前作『天安門、恋人たち』では、中国電影局の許可が降りなかったにもかかわらず、カンヌ国際映画祭コンペティションに出品したために、当局より5年間の映画製作・上映禁止処分を受けたロウ・イエ監督。禁令中、ロウ・イエ監督が家庭用ビデオカメラで撮影された『スプリング・フィーバー』は再びカンヌ国際映画祭で上映され、脚本賞を受賞。世界の注目を集める。『スプリング・フィーバー』公開前に来日した監督に撮影現場と、最も監督が描きたかった“社会の圧力のもとで生きる普通の人々”について、たっぷりと語っていただきました。

 

 

 

 

家庭用ビデオで映し出される、恋人達の濃密な空間を作り出す撮影現場とは?
20101025_41―監督の印象について俳優さんに聞いたところ、監督との信頼関係が確立している印象を受けたのですが、撮影中は俳優さんの意見を取り入れるというようなこともあったのでしょうか?

ロウ・イエ監督(以下ロウ・イエ)俳優からしか発想できないような考え方とか即興の演技を取り入れるのがとても好きです。毎日、自分が思いも寄らなかったことが撮影の際にはありました。自由にやってもらって、彼らも撮影していること自体を忘れてしまうような感じだったと思います。特に、今回は小型のデジタルカメラを使ったので、映画を撮っていることすら忘れるような感じでした。例えば、チェン・スーチョンが部屋の中で自転車を動かす場面(踊る場面)ですけれども、あそこで、彼があのような演技をするとは思ってなかったです。僕もカットをかけないで、好きなようにやってもらい、いいシーンが撮れました。

―素のままの(チェン・スーチョンさん)が出たのですかね?
ロウ・イエその状態では彼が演じているルオ・ハイタオなのか、彼、チェン・スーチョンがミックスされていたのか、どれがどうだとか言えないような状況ですね。そういう状況になって映画を撮るというのは最も好ましい状態です。

springfever3―映像が手持ちのカメラを使用するということで、被写体とカメラの親密な近さを感じました。室内が薄暗いんだけれども、ショーパブは華やかだったり、非常に面白いのですが、映像を作るにあたり一番気にしていた点はなんですか?
ロウ・イエやはり一番良い効果というのは、ドキュメンタリーのような雰囲気を持たせるということ。暗い場面もあれば華やかな場面もあると、光線もそれぞれの場面でかなり違います。我々の日常場面もそうですよね?暗いところもあれば、明るいところもある。そういうドキュメンタリータッチの効果というのを意識しています。

 

禁令中の監督が描きたかったもの。同性愛を超えた、普遍的な愛、社会の圧力のもとで生きる普通の人々。
sub01―人間同士の愛を描きたかったと書かれていたのですが、愛を表現するのであれば、色々な方法があると思うのですが、そこで同性愛を選択されたいきさつについてお聞かせください。
ロウ・イエ今の中国社会において、同性愛の人たちが置かれている状況というのは、普通の人たちが置かれている状況と同じことです。それは、自由でも、なんらかの目に見えにくい生活の圧力に直面しているということ。中国のマスコミに「今日の中国においては、みんな同性愛者と同じだ」と言ったことがあります。今の中国では同性愛者の置かれている状況は以前と比べるとものすごくよくなってきています。よくなってきてはいるけれど、やっぱり問題というのはある。差別されたり、理解されなかったりという状況は大いにある。でもそういう状況は普通の人が置かれている状況と同じことなんです。

―逆にいうと一般の人も同じような圧力を感じているということでしょうか?
ロウ・イエそのとおりです。この映画の中で言いたかったのは社会の圧力、生活の中で受ける圧力ということです。社会の圧力のもとで生きる普通の人々、それを描きたかった。その一群として同性愛という人を配置しました。

 

「中国で一番努力をしている」監督の次回作への思い
springfever1―以前、ティーチインの際に「中国で一番必死で努力している監督」とご本人を評していたのですが、中国で製作することにこだわりをもっているのでしょうか?それとも海外での製作も視野に入れているのでしょうか。中国にこだわる理由があれば、教えてください。
ロウ・イエ 「一番努力している監督」という意味は5年間の禁令を受けているのに、まだがんばって映画を撮っている監督だという意味です(笑)。最近、パリで撮影を終えました。これは全編フランス語の作品で、来年、完成予定です(タイトル:「花」)。主人公である中国人女子学生がパリに行って、ある労働者と恋に落ちるというラブストーリーです。私の初めての外国語映画になります。外国で撮っていても一番の望みは中国の国内で映画を撮ること。うれしいのは5年の禁令が来年、そろそろ解かれるので、中国に帰って撮影が出来る。これ以上電影局が干渉しないといいなと願っています。

 

恒例セレブの靴チェック―ロウ・イエ監督編
インタビュー終了後に「靴を撮らせてください」とお願いしたところ、ロウ・イエ監督は興味津津。 「靴は本当にその人の個性がでるよね」と快く了承してくださいました。先日、インタビューの際に撮影した、主演のチン・ハオさんとチェン・スーチョンさんの靴写真を見せたところ、笑いながら「ああ、こっちがチン・ハオでしょ?そしてチェン・スーチョンだね、本当によく個性が出ているよ」と語っていました。監督の靴はフランスで購入の黒の皮スニーカー。こちらも監督の個性あふれる足元です。

ロウ・イエ監督
靴

 

20101025_04▼ ロウ・イエ監督プロフィール
1965年上海に生まれる。1985年北京電影学院映画学科監督科に入学。二作目、『ふたりの人魚』(00)は中国国内で上映を禁止されながらも、ロッテルダム映画祭、TOKYO FILMeX2000でグランプリを獲得。その後、1989年の天安門事件にまつわる出来事を扱った『天安門、恋人たち』(06)は、2006年カンヌ国際映画祭で上映された結果、5年間の映画製作・上映禁止処分となる。現在、パリ郊外を舞台にした新作『Hua(Flower/仮題)』を製作中。プロデューサーは09年カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した『アンプロフェット』のローランヌ・ブラショ、主演に同作品でアラブ青年を演じたタヒール・マサムが起用されている。

 

main▼『スプリング・フィーバー』
中=仏 /2009年 / 115分
監督:ロウ・イエ
脚本:メイ・フォン(カンヌ国際映画祭脚本賞受賞)
出演:チン・ハオ、チェン・スーチョン、タン・ジュオ、ウー・ウェイ、ジャン・ジャーチー、チャン・ソンウェン
配給・宣伝:UPLINK
●『スプリング・フィーバー』公式サイト
11月6日より渋谷シネマライズ他、全国順次ロードショー

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取材・編集・文:白玉 スチール撮影:荒木理臣

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