『TENBATSU』

  • 2010年09月07日更新

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「あいつに天罰がくだればいいのに!」 ― いけないとはわかっていても、心にそうよぎってしまうことがあるのは、生きていれば、ごく自然。

しかし、それは、「願ったところで、そうなるわけがない」と承知だからこそ、気に入らない相手に天罰がくだるところを想像して、溜飲を下げているにすぎない。

では、自分が望んだ通りに、あるいはそれ以上に、憎々しい相手が災厄に落ちるさまを、まのあたりにしたら、人はどうなるのか?

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黒川高校のホラー文学研究部に所属している結季は、同じく部員で美人の綾美が、部長の道晴に好意をいだいているようだと知って、気が気ではなかった。結季と道晴は、部でも公認の恋人同士なのだ。あるとき、綾美の書いたホラー小説が文学大賞に入選して、その受賞記念パーティーに綾美と道晴がふたりだけで出席することになった。そんな折、結季は黒川高校に関する不気味な噂を耳にする。その噂とは、「嫌いな人間の名前を石に書いて、校内の物置部屋にある絵馬掛けに吊るすと、ホーリーさまという呪いの執行人が現れて相手に天罰を与えてくれる」というものだった。嫉妬心にかられた結季は、綾美の名前を石に書いて、それを実行する。翌日、綾美は足に怪我を負って、松葉杖を手に部室へやってきた。驚いた結季だが、それは惨劇の序章に過ぎず……。

始まりは小さな嫉妬でも、「願いが叶う」と知った瞬間、更に貪欲になる。それが、「自分の手を汚したくない、日蔭の欲求」であればあるほど、人はことを急いて、判断力を手放してしまうものなのかもしれない。

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ささやかな妬みをきっかけに暴走する結季を演じたのは、本作が初主演となる吉谷彩子。道晴を失いたくないという一途な想いと、綾美を疎ましく思うがゆえに呪いへと傾いていくその姿に、確かな必然性を体現させている。

女子部員たちの好意を集める道晴役に梅澤悠、結季の胸中と部内を攪乱する綾美役に小泉麻耶、その他、吉川まりあ、川原貴大など、実力と美麗な容姿を兼ね備えたフレッシュなキャストが、惨劇に見舞われるホラー文学研究部の部員として、恐怖の当事者を演じている。

残暑を緩和させてくれること請け合いの戦慄と、瑞々しい若手女優と俳優の魅力を目的に、映画館へ足を運んでいただきたい。せっかくなら、「自分が天罰を与えたい相手の顔」を胸に描きながら、スクリーンに臨むことにしよう。……エンドロールを迎える頃には、そんな黒い欲求を根こそぎ捨てて帰路につきたくなるに違いない。

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▼『TENBATSU』作品・公開情報
日本/2010年/60分
監督:田中善之
出演:吉谷彩子 梅澤悠 吉川まりあ
小泉麻耶 関谷愛里紗 田中有紀美  他
製作:アムモ/ブレス/エスティーディー
配給:アムモ98
コピーライト:(C)2009『TENBATSU』製作委員会
『TENBATSU』公式ブログ
※2010年9月4日(土)より、アップリンクX(東京)にてレイトショー。

文:香ん乃
改行

  • 2010年09月07日更新

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