『日本のいちばん長い夏』 半藤一利さん×富野由悠季さん トーク・ショー&試写会

  • 2010年08月11日更新

100730nihonmain

太平洋戦争終結の内幕に迫る『日本のいちばん長い夏』のトーク・ショーと試写会が、2010年7月30日(金)、新宿バルト9で開催されました。本作は昭和38年(1963年)6月に行われた座談会の様子を再現したものです。原作者の半藤一利氏、元陸軍大将・今村均役のアニメ映画監督・富野由悠季氏が登壇し、「戦争を語り継ぐ」をテーマに、それぞれの思いを語りました。戦争の記憶が風化しつつある現状に危機感を持っているお2人のお話から、「形に残すことによって戦争の真の姿を伝えていくこと」の大切さを改めて認識しました。

↑の写真、左から、半藤さん、富野さん、そして、ご来場の倉内均監督です。

100730nihon

― なぜこの座談会を企画しようと思ったのでしょうか。

半藤一利さん(以下、半藤)
戦後10年ぐらいしてから、昭和史や太平洋戦争の記録を残すために取材を始めたのですが、月日が経つと訃報が増えてきて、「このままでは話を聞きたいときにだれも残っていないのではないか」ということを痛感しておりました。そこで、当時所属していた文藝春秋編集部の編集会議で座談会を提案し、35人ぐらいに声をかけたところ、徹底抗戦派だった宮城(きゅうじょう)事件の当事者以外はほとんどがOKしてくれました。編集部では人数が多すぎて収拾がつかなくなるという意見もありましたが、「なだ万」の大広間で座談会が5時間延々と続く中、28名の参加者はどなたも私語を交わすことなく静かに耳を傾けていた。これを見て、日本人全体がどうやって戦争が終わったのか知らないんだな、ということがよくわかりました。

― 富野さんは、なぜ今村均役を引き受けられたのでしょうか。

富野由悠季さん(以下、富野) ぼくには10歳以上も年上のラバウル帰りのいとこがおりまして、そのラバウルの陸軍大将役だったから引き受けた…というのは表向きの理由です。本当のことをいうと、僕も企画・製作したり、キャスティングやアニメーターの手配をしたりする人間なので、僕が断ったら現場が困るだろうなと思ったからです。

100730nihon4

― 若い世代に戦争の事実を伝えるうえで、御苦労された点はありますか。

半藤 15,6年前ある女子大の学生50人に、太平洋戦争についてのアンケートをとったとき、日本がアメリカと戦争をしたことを知らない学生が13人いて本当に驚きました。このままだと歴史というものを知らない国民だけがいる国になってしまう。「戦争を語り継ぐ」ということは形に残すということ。日本の国はどういうものだったのか、日本人はどういう人間であったのかということを残さないと、何もなくなってしまうのではないかと思いました。今までも語り継ぐためにたくさん本を書いてきましたが、まだまだ「これからもやるぞ」というつもりで頑張っているところです。

富野 僕の場合、戦争ものの本を読むことを20歳のときにやめていました。でも40年近く経って、やはり語り伝える必要があると思い直すことができたので、この作品に参加させてもらってありがたかった。個人的に死ぬまでやる仕事が見つかりました。

100730nihon5

― 富野さんは『機動戦士ガンダム』などで、戦争をアニメーションで描かれていますが。

富野 もともと戦争ものを作るというつもりはなかったけれど、巨大ロボットが活躍できる場を考えたらそれしかなかった。宇宙戦争を通じて戦争ものを作れば面白くなるだろうと考えました。また、どうせ戦場を舞台にするなら、兵站(へいたん)の描写をきちんと入れて見せておこうと。戦時中の陸海軍はともに前線部隊に対する兵站のことを何一つ考えていなかったんです。戦争についてしっかり考えていたらあんな馬鹿な戦争ができるはずがない。だから巨大ロボットアニメでも兵站のことぐらい考えているということを見せようと思いました。

― 半藤さんは「歴史を語り継ぐ」ことにどのような意味があると考えて、お仕事をされてきたのでしょうか。

半藤 そう聞かれるとお答えしづらいのですが、仕事と思ってやっているだけなんです(笑)。戦争中には東京の参謀本部に悪い奴らは多くいましたけれど、本気になって日本のためを思い国家のために尽くした人もたくさんいました。そういう人がいたということも知ってもらうために、できる限り公平にものを書くようにしています。

最後には倉内均監督も登壇し、「(半藤さんと富野さん)お2人のお話を頭に入れ、「この映画をご覧になるのも上手な楽しみ方だと思います。ごゆっくりご覧ください」と締めくくりました。

ichibanmain

▼『日本のいちばん長い夏』
作品・公開情報

日本/2010年/111分
監督・脚本:倉内均
原作:半藤一利[編]『日本のいちばん長い夏』(文春新書)
出演:木場勝己 池内万作
キムラ緑子
湯浅卓(国際弁護士)
中村伊知哉(慶応義塾大学教授) 青島健太(スポーツライター)
山本益博(料理評論家) 松平定知(アナウンサー) 富野由悠季(アニメ映画監督)
林望(作家) 鳥越俊太郎(ジャーナリスト) 立川らく朝(医師・落語家)
島田雅彦(小説家) 田原総一朗(ジャーナリスト) 市川森一(脚本家)
江川達也(漫画家) デイヴィッド・ディヒーリ(ジャーナリスト) 他 (登場順)
製作・著作:NHK/アマゾンラテルナ
配給:アマゾンラテルナ
配給協力:ティ・ジョイ
コピーライト:(c)2010 NHK/アマゾンラテルナ
『日本のいちばん長い夏』公式サイト
※2010年8月7日(土)より、新宿バルト9(東京)、丸の内TOEI2(東京)他、全国順次ロードショー。

▼関連記事
『日本のいちばん長い夏』 作品紹介

取材・スチール撮影・文:吉永くま
改行

原作本はこちら
日本のいちばん長い夏 (文春新書)

改行

  • 2010年08月11日更新

トラックバックURL:http://mini-theater.com/2010/08/11/8617/trackback/