『+1 vol.3』 熊切和嘉監督・篠原哲雄監督・冨樫森監督 インタビュー

  • 2010年07月13日更新

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株式会社アプレの「俳優ワークショップ」から発展した、究極のインディーズ短編映画集『+1(プラスワン) vol.3』。2010年7月3日(土)からユーロスペース(東京)にて上映中です。

山川直人監督の『驚かさないでよ!』、冨樫森監督の『今夜のメニュー』、熊切和嘉監督の『鶴園家のめまい』、篠原哲雄監督の『下校するにはまだ早い』 ― 4編のショート・ムービーからなる『+1 vol.3』。各監督が登壇する舞台挨拶がおこなわれた日に控室をお訪ねして、熊切監督、篠原監督、冨樫監督に、それぞれお話を伺ってまいりました(山川監督へのインタビューは、こちらの記事をご覧ください)。

『鶴園家のめまい』 熊切和嘉監督

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― 今回の作品はワークショップから生まれた作品ですが、制作上、ワークショップだからこそできたと感じることはありましたか?

熊切和嘉監督(以下、熊切) ワークショップの間は脚本ができていたわけではないので、(ワークショップに)脚本の宇治田も来て、ワークショップの中でキャスティングしていきましたね。芝居というよりはいい顔だなとか(笑)。主人公の義理の弟として出ている生徒さんはワークショップ中に目が合ってその時の表情が印象的で、気になってしょうがなかったんです。
それから、作品中の葬式の雰囲気などは、ワークショップはエチュードをやっていたので、即興でも一発でうまくいきました。
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― 後半のクライマックスがお気に入りということですが・・・

熊切 場所を見て、全部セットで撮ったんですけど、全面片方鏡だったので。これは使いたいなぁと思いました。カメラマンが金子さんと言って、トンスラってドラマをやった時にテレビでやらないようなしっちゃかめっちゃかを一緒にやった方なんです。その時と同じようなノリでやって。変な風に撮ってくださいって(笑)。あんまり長編映画の時には怖くてやらなさそうなことをやりました。短編だからできる、実験的な、挑戦的なところがありますね。それから、もうひとつの挑戦として、長編だとプロデューサーにNoって言われる白黒での撮影もやらせていただきました。

取材・編集・文:白玉 スチール撮影:南野こずえ

『下校するにはまだ早い』 篠原哲雄監督

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― 短期間での撮影との事ですが、大変だった部分はどんなところですか?

篠原哲雄監督(以下、篠原) (撮影期間が)三日しかないんですよ。撮影場所が山梨で2ヶ所の学校を使いました。三日目、終わったのが朝の5時。時間との戦いが一番大変でしたね。

― 今作では、登場人物名に山手線の駅名を使っていますが、その理由は?

篠原 山手線の駅名は非常にわかり易いじゃないですか、どの役がどの駅名という具体的な理由はないのですが、脚本家が指定した訳でもないです。撮影は山梨で行ったのですが、(物語の)設定は東京なので便利上つけました。駅名は結構網羅していますよ。1つだけちょっとイレギュラーな名前があります。

― 出演者のお二人は、篠原監督と一緒に作品を制作して印象に残っている事はありますか?

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齋藤嵩瑠さん(写真右)撮影が朝に延びても、監督が「よし、行こう!」と言って、みんなを引っ張ってくれていました。あれは嬉しかったですね。

安藤聡海さん(写真左) 演技について本番はあまり仰らない方で、リハーサルや団欒の際はアドバイスをして貰いましたが、当日は任せて頂いて、後日その理由を伺ったら「台本とか脚本家の意図はあるけれども、本番の役者の中から出てくる物が一番本物だと思っているからあまり言わなかったんだよ」と仰って頂き感動しました。

篠原 現場では撮っていくものなので、役者はそこまでに役作りをしていなきゃいけないんです。君に期待するよって事なんです。

― アプレワークショップの『+1』、だからこそ出来たことはどんな事ですか?

PLUS1_20100705_03篠原 普通の作品だとのこんな多くの人が出てくる群像劇は、ある程度の短編ではあまりないんですよ。今回は、学校を舞台にコメディというか面白いモノにしようよということになって、僕は普段試みてないんですけど、ちょっと笑える可笑しな作品になれたかなと思っています。そこが僕的には、アプレワークショップ『+1』作品で出来る枠内の話かなと思った。実は制作時間の目安が20分以内ですが、結果的には越えています。時間だけはオーバーしてすいません。(過去に『+1vol1』『+1vol2』でも制作)今回は3作品目だから許してください。(一同笑い)

― 監督が映画を製作する上で、大事な事は?

篠原 チームワークですね。俳優とスタッフのチームワーク、どういうスタッフでやるかっていうのは結構大事です。ロケの場所で、俳優のそこでのたたずまいがいかに成立するかっていう意味で言ったら、簡単に言うと空気感ですね。役者がその場所にちゃんと存在しているという事がどう撮れるかってのは大事なテーマですね。

取材・編集・文:南野こずえ スチール撮影:さとうまゆみ

『今夜のメニュー』 冨樫森監督

100703togashi― 『今夜のメニュー』は、窪田信介さんの脚本による、シリアスな物語ですね。

冨樫森監督(以下、冨樫) 窪田さんとは以前からの知りあいで、彼が前から、「一度、好きに脚本を書いてみたい」とおっしゃっていたんです。なので、彼にオリジナルで作っていただきました。

― 脚本を最初に読んだときの感想は?

冨樫 「渋いなぁ」と思いました。出来事が表に出てこないところで進行している物語で、僕があまりやったことのない手法でしたから、とてもおもしろかったですね。
このストーリーをお客さまにどう伝えるか、という点は難しいところでしたが、自分が初めてチャレンジする切り口でしたので、とても楽しんで作ることができました。

― 演出する上で、工夫した点は?

冨樫 いざ撮ってみないとわからない部分もあったので、撮影現場で探りながらやった感じです。
1日の物語を、2日間で撮ったので、ある程度は順撮りさせてもらえました。主人公の夫婦の状況が、シーンを追うごとにわかっていくストーリーですから、冒頭ですべてがわかってしまっては、おもしろくないですよね。
なので、順撮りをしながら、「じゃあ、このシーンでは、こうなるよね」というように、キャストたちと一緒に考えながら作った感じです。それに応えてくれるキャストたちだったので、やりやすかったですよ。

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― メイン・キャストの中澤聖子さん(写真左)にもお話を伺うことができました。この作品に出演しての感想は?

中澤聖子さん 冨樫監督がおっしゃったように、「物語の内容をどこまで伝えるか」ということと、敢えて出さずに見せないほうがよい部分もあるのかという、そのバランスが難しかったです。
でも、出演者たちは冨樫監督を完全に信頼して、まずは現場で自分たちでやることをやってみて、あとは冨樫監督にお任せした、という感じです。とてもやりやすい現場で、おもしろかったです。

― 一般的な商業映画を撮る場合とは、異なる部分も多かったかと思いますが、よい意味での違いは?

冨樫 この手の作品は、大規模な映画でできるテイストではないと思うので、そういう意味では楽しんで作ることができました。また、今回の物語は、僕の思考に常々あるタイプの作品ではなかったので、「俺、こういう映画も撮れるんだぜ」という感じを味わえたのは(笑)、ちょっと嬉しかったですね。

― 『+1 vol.3』をご覧になるみなさまへ、メッセージをお願いいします。

冨樫 『今夜のメニュー』に関しては、僕にとっては新しいチャレンジになった作品で、ちょっと斬新なものになっていると思います。その辺を楽しんで観ていただければ嬉しいです。
『+1 vol.3』では、4人の監督がそれぞれ違うテイストの新作を撮っています。各自が新しい挑戦をしている部分があると思いますよ。

取材・編集・文:香ん乃 編集:秋月直子 撮影:吉濱篤志

▼『+1(プラスワン) vol.3』作品・公開情報
2010年/日本/100分
プロデューサー:立石義隆
宣伝美術:ル・グラン・オーガズモ
製作・配給・宣伝:株式会社アプレ
コピーライト:(C)2010 plus1.
『+1 vol.3』公式サイト
『驚かさないでよ!』
監督:山川直人
脚本:村瀬綾嶺
出演:長野賢 佐伯恵 津川苑葉 沼倉正幸 他
『今夜のメニュー』
監督:冨樫森
脚本:窪田信介
出演:中澤聖子 笹木重人 伊藤久美子
竹内智大 和田光沙
『下校するにはまだ早い』
監督:篠原哲雄
脚本:日比野ひとし
出演:安藤聡海 藤本浩二
齋藤嵩瑠 高森ゆり子 他
『鶴園家のめまい』
監督:熊切和嘉
脚本:宇治田隆史
出演:北山ひろし 山田ゆり
北風寿則 山下ケイジ 他
※2010年7月3日(土)より、ユーロスペース(東京)にてレイトショー。

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