『苦い蜜 ~消えたレコード~』

  • 2010年04月10日更新

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たとえば、イギリスの古典ミステリの女王、アガサ・クリスティの推理小説を読んだとき。

クリスティの代名詞ともいえる探偵、エルキュール・ポワロが、「今から、この殺人事件の真相を説明します」というクライマックスの際、事件の容疑者や関係者たちを、一室に集めて、自らの推理と結論を、滔々と披露する。

そのシーンを読みながら、スリルと期待と高揚で鳥肌が立つ ― あの鳥肌を体感できる映画が、『苦い蜜 ~消えたレコード~』である。

宮城県の仙台市にあるバー「リボルバー」。英国調に設えた、ビートルズ・バーである。

店のマスターの久保は、新人作家として『苦い蜜』という小説を著した。この著作が、ある文学新人賞の候補作のひとつになった。「マスターが受賞する!」という期待に高まっている店内に、彼の栄誉を祝おうと、気の早い常連客たちが集まってくる。

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しかし、集(つど)ってくる者の中には、商談と私欲にしか目が向いていない者もいる。

歓迎される者たちと、歓迎されているとは言いがたい者たち ― 全員が顔を揃えたときに、ひとりの探偵が、「リボルバー」に姿を現した。

実は、1年前、この店で、希少価値のあるビートルズのレコードが盗まれるという事件が起こったのだ。

犯人と目されていた男は、既に故人となっている。

だが、探偵は言う。「真犯人は、彼ではない」と……。

実際に仙台でロケがおこなわれた映画だが、本作は、ほぼ全編、「バー・リボルバーの店内」が舞台となっている。

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「店内=一室」に集(つど)った面々による、長台詞、表情、ボディ・ランゲージで、展開していく物語。まるで、「休憩時間のない舞台」を見ているかのような印象だ。

同時に連想したのは、古式ゆかしい英国ミステリ小説の、「ラストの数ページ」を読んでいるときの味わいである。襞(ひだ)のごとく重なりあった謎が、1枚、1枚、じわりじわりとめくれて、明らかになっていく探偵劇の快感が、全身に満ちてくる。

重なりあった謎と、明らかになっていく真実を、頭の中で忙(せわ)しなく構築する必要はない。監督と脚本を担った亀田幸則は、観る側にストレスを感じさせない巧みな演出と構成で、複雑なストーリーとトリックを実現してくれている。

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2010年3月31日に、本作の完成披露試写会が開催された。駆けつけたキャストたちと、亀田監督は、本作について、このように話している。

金子昇(探偵・三影役) 僕もバンドやっていたので、ビートルズとはすごく縁深くて、役者を志したきっかけも、映画『バックビート』を見た影響からです。だから、この映画は、タイトルを見たときに出演すると決めました(笑)。容疑者それぞれの目線に立って、ご覧いただける作品かと思います。

池上季実子(編集者・上田役) 撮影は仙台のスタジオに缶詰状態で、10日間みんなで過ごし、大先輩たちともお話しする機会ができて、楽しい現場でした。

田中健(元テレビ局プロデューサー・和田役) セットがすごいんですよ。実際にあるバーをモチーフにしているんですよね。撮影は、ワン・カットがものすごく長くて、すごく緊張して演じました。その緊張感が画面から伝わってくるかと思います。

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鎌苅健太(新人タレント・加納役) かなり生意気な感じの役なんですが、心意気はいい奴です(笑)。大御所のかたがたに囲まれての撮影は、魔界に行くようでしたが(笑)、ファミリーのような現場で、楽しんでやれました。

森本タロー(常連客・沢田役) 今年になって、初めて役者デビューしました。しかも役名が、沢田です(笑)。ザ・タイガースのメンバー4人は、ビートルズの初来日コンサートには行ったんですが、僕だけお金がなくていけなかったんです(笑)。

亀田監督 昔ながらの芝居で見せる映画が作りたくて、CGを使わず、役者の演技が際立つような作品を作りたかった。おとな向けの映画かもしれませんが、若いかたにも、ぜひご覧いただきたいです。

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▼『苦い蜜 ~消えたレコード~』作品・公開情報
日本/2010年/103分
監督・脚本:亀田幸則
出演:金子昇 池上季実子 田中健 中西良太 高橋ひとみ 渋谷琴乃 原幹恵 鎌苅健太 森本タロー 葉月パル アーサー・ホーランド 住吉晃典 島田順司 犬塚弘 他
配給・宣伝:アステア
コピーライト:(C)2010『苦い蜜』製作委員会
『苦い蜜 ~消えたレコード~』公式サイト
※2010年4月10日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町他、全国順次ロードショー。

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文:香ん乃

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改行

  • 2010年04月10日更新

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