喜劇王エノケン出演「乾杯!ごきげん野郎」上映後に、瀬川昌治監督が登場!

  • 2010年04月06日更新

2010年4月4日(日)神保町シアターにて、“ニッポン ミュージカル時代”の一作品として「乾杯!ごきげん野郎」が上映されました。

“喜劇の神様”といわれた榎本健一(エノケン)の演技は、表情から間の取り方まですべてにおいて、まさに神業。時代や年齢を感じさせないどころか、スクリーンの中の神様から目が離せなくなります。もう、立ってるだけで面白い、独特の存在感に感服です!
「最近、観たい映画がなくて…」なんて思っている方は、ぜひ神保町シアターへ!
※4月8日の16:30〜と4月9日の6:45〜の回に上映予定

そんなエノケン様の伝説的エピソードや撮影秘話が、瀬川昌治監督と娯楽映画評論家の佐藤利明さん、俳優の世志凡太(せしぼんた)さんによって明かされました。
(画像:©乾杯!ごきげん野郎」)



●実は違う出演者や監督で作られる予定だった!

 瀬川昌治監督:(写真中央)
「東宝で当時人気だったダークダックスの声と、フランキー堺主役の設定で脚本が書かれたんです。でもその話は流れてしまい、脚本の井出雅人さんから、『瀬川さんやらないか』と声をかけていただき、心温まる脚本だったのでやらせてもらいました。
ビリー・ワイルダー監督なんかもそうなんですが、井出さんも卓抜したシチュエーション・コメディーを考えられるんですよね」。

●梅宮辰夫も昔は好青年風イケメンだった(笑)

佐藤利明氏:(写真右)
「本作はカット数が多くテンポがいいのですが、エノケンさんのシーンは長めに撮っていたり、映画に対する計算と想い、エノケンさん世代に対する愛が感じられますよね。風景や風俗の時代の記録にもなってますし、キャバレーの雰囲気とか、その当時の業界がきちんと日常として描かれている。他社の喜劇映画に比べると、ものすごくモダンなんですよね。ドライとウェットが共存していて、ハリウッド・コメディーを目指されていたというのが、作品から窺えます」。

瀬川監督:
「おとぎ話のような、一昼夜で人気者になるという、ありえない話なんですけどね。東京から鹿児島まで行くのに汽車で十夜かかった時代ですから、(東京で夢破れて、帰郷する間に)実はブームが起こっていたなんていう話も、当時はすんなり受け入れられたんです。また梅宮辰夫が東映で初めて主役をやった映画なんです。ご覧のようにあんなに好青年でイケメンだったのに、ギャングとかアクションものに走っちゃってねぇ。ちょっと僕としては残念ですね(笑)」。

●各方面のスターが出演!

佐藤氏:
「驚きなのが、クラリネット奏者役のトニー・スコット。当時アメリカでベスト10に入るような人気のミュージシャンが、よく出演してくれましたね」。

瀬川監督:
「ジャズ評論をやっていた兄貴がニューヨークに行った際に、彼と知り合いになりまして。ちょっと風変わりな方で、しょっちゅう世界旅行とかするんですね。撮影時にも、たまたま兄貴の家に遊びに来てたんです。それで「出てくれないか」と頼んだら、喜んで出てくれて(笑)。本当だったらギャラなんか大変なんですよ。製作費一本ぐらい飛んじゃうんですけど、花瓶ひとつで出てくれました」。(会場爆笑)

佐藤氏:
「そしてなんといっても、喜劇王のエノケンさんがフィーチャーされてます。当時エノケンさんが出る映画というのは、ワンシーンだけの出演が多いんですけどね」。

瀬川監督:
「そうなんです。足を悪くされて、親指を切られらんですよね。だからエノケンさん特有のアクションができなくなってしまったんです。ただそれでも、エノケンさんの間の取り方とかコメディアンとしての動きはすばらしいものです。神様みたいな人だったので、現場も大変な緊張感がありましたよ。フランキー堺やいかりや長介も、エノケンさんのフィルムをみて勉強してたようです。ドリフターズも影響を受けてますが、あのテンポはそうですよね」。

ここで客席にいた世志凡太さん(写真左)も加わり、喜劇王との初対面エピソードを明かした。「浅香光代の6番目の夫です」と自己紹介し客席の笑いを誘ったあと、「エノケンさんには、本作の撮影で初めて会ったのですが、『エノケン先生、世志凡太でございます。どうぞよろしくお願いいたします」とご挨拶したら、『君、僕はエノケンじゃないよ。榎本健一だ』って、しかられちゃいました。でも勉強させていただくことも多く、とにかく敬服の至りですね」と感慨深げにエピソードを語った。

佐藤氏:
「ファンの方以外に「エノケン」と呼ばれることを絶対に許さなかったらしいですね」。

瀬川監督:
「有名な話です(笑)。あと、稽古するとわざとらしくなるからと仰って、(若手俳優4人が次々にエノケンさんの)口に料理を突っ込んで食べさせるシーンなんかは、アドリブで撮ったんですよ。あのテンポに合わせるのだから、若い俳優の反射神経もスゴイねえ」。

佐藤氏:
「エノケンさんって、最初のジャズシンガーですよね。サンフランシスコの船員を買収して、ブロードウェイやハリウッドで歌われている最新の楽譜を買ってきてもらって、非合法で入手していたらしいですね(笑)。今のようにすぐにネットで聞ける時代とは違いますから。2月にアメリカで流行った歌を同年の7月には、エノケンさんご自身で訳詞をつけて、映画の中で歌ってましたからね。すごい早かったんですよ」。

「嵐を呼ぶ楽団」の井上梅次監督について

瀬川監督:
「話をしていても面白いし、ずっとお付き合いがありましたね。映画の中でコメディアンがギャグをやるのに、作品の伏線がきちんとしていましたね。そういう計算がシナリオのうえでも演出のうえでもきちんとなされていました」。

※惜しくも2月に亡くなられた、井上梅次監督の「嵐を呼ぶ楽団」も今回の上映作品になっている。ジャズバンドの結成から解散、再結成までを描いた恋と友情の物語。構成にセンスと職人技が光る、井上監督の音楽映画の最高傑作。(画像:©「嵐を呼ぶ楽団」)


▼「ニッポン ミュージカル時代」 情報
100404_3100404_42010年4月3日(土)〜4月23日(金)
会場:神保町シアター (公式サイト
当日券料金:一般1,200円/シニア・学生1,000円
※有料入場5回で1回無料の、お得なポイントカードサービスあり。

♪ 割引情報 ♪
「ひばり・チエミ・いづみ 三人よれば」「ハイハイ3人娘」「踊りたい夜」で、“ 男女問わず3人組の方々は、3名様で3,000円 ” です。

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文・取材/おすず 撮影/みどり

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