男と女の時代劇 どんな女も必ず落とす、恋のセレブは子犬顔でも肉食系―「源氏物語」

  • 2010年02月28日更新

hikarugenji1男と女の時代劇】 第二回目は吉村公三郎監督、長谷川一夫主演「源氏物語」です。
言わずとしれた、平安時代のアイドル光源氏と彼を取り巻く女たちのストーリー。監修は雅とエロスの伝道師、谷崎潤一郎となれば、ただの平安アイドルの話で終わるわけがない。御簾の向こうの男と女。引くにひかれぬ深い仲。「家政婦は見た」ならぬ「女房は見た」市原悦子気分でご覧ください。

正室、弘徽殿女御にいじめぬかれ、桐壷は憔悴して幼い光の君を残してこの世を去る。幼くして母親を失った光源氏の思いは桐壷によく似た義理の母、藤壷の愛へとつながっていく。藤壷を始め、朧月夜、葵の上、紫の上、淡路(明石の君)と宮中のきらめく女性たちを相手に次々と恋の花を咲かす光源氏の王朝絵巻が描かれていく。

とにもかくにも長谷川一夫の美しさが際立つ作品。
イケメンでなければ人にあらず。
平安時代。平和な世の中にあって、鍛え抜かれた筋肉はいらず、知性と匂うような美しさがもてはやされる時代。
そんな時代のトップアイドルを演じるのは昭和の大スター長谷川一夫。
めまいを起こすような長谷川一夫の横顔の美しさ。納得の光源氏。
そのルックスと知性から、次から次へと女性をとっかえひっかえしておきながら、女性から怒られればうるうるした子犬顔で「しからないで」とか「見捨てないで」のセリフ。
ずるい。
こういうセリフを言って様になるところが、イケメンアイドル光源氏にのみ許された、恋の特権階級のずるさ。

それだけ、かわいこぶっているのに、やたら強引。女性の部屋に押し入ったり、女の人を担いで持って帰ったりと一歩間違えれば、犯罪になりそうなワイルドっぷり。草食系かと思いきや、まさかの肉食系。一途かと思えば、まさかの浮気者。だけど、このギャップがたまらない。光源氏は神がかった存在として描かれることが多いが、長谷川一夫の光源氏はリアルに「男」。それでも単なるエロ貴族ではなく、恋を楽しむ恋愛マスターたるゆえんはそのノーブルさ。戦後の混乱期においてこれほどまでにセレブオーラを発することができるのはさすが、燦然と輝く大スター。

光源氏にせまる女性も必見。平安時代ってこんな薄絹でセクシー?これは谷崎潤一郎監修のおかげなのでしょうか?

「源氏物語」1951年 大映京都
監督:吉村公三郎
原作:紫式部
白黒 2時間4分
脚本:新藤兼人 監修:谷崎潤一郎
出演:長谷川一夫、大河内伝次郎、木暮実千代、京マチ子、乙羽信子、水戸光子、東山千栄子、長谷川裕見子、相馬千恵子、進藤英太郎、上山草人

神保町シアター「オールスター映画 夢の祭典」にて上映jinnbocho
映日時:
3月1日(月)14:30
3月2日(火)12:00
3月3日(水)14:15
3月4日(木)16:10
3月5日(金)18:45

 

 

 

 

千年の恋 ひかる源氏物語 [DVD]
あさきゆめみし 1 完全版 (KCデラックス)

文:白玉

 


改行

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