『COACH コーチ 40歳のフィギュアスケーター』

  • 2010年02月06日更新

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「アラフォー」なんて言葉が流行ってくれたおかげで、三十路や四十路にポジティヴなイメージが薫るようになったけれど、リアルな世界に生きている実際のアラフォーは、自分の年齢に危機感を覚えたり、自分の年齢を言い訳の材料にしたりする機会が、なんだかんだで結構あるのではないか。……と、つい先日、「四捨五入したら40歳」という年齢に突入した私は、経験則で実感する。

中でも、「未婚で子供のいないアラフォー」は、これもやはりなんだかんだで、暗黙のプレッシャーのようなものにさらされることが多い。そんなとき、「目指していることがあるのよ」とか、「仕事が大切だから」とか、本気のつもりで言ってみたとしても、「いい歳して、まだ夢を見ているの?」という言葉やまなざしが返ってくることがある。

「いい歳して、まだ夢を見ているの?」 ― 自分で自分に問いかけざるをえないときもある。

『COACH コーチ 40歳のフィギュアスケーター』の主人公・倉内美和も、この言葉を胸中で自身にぶつけたことが、何度もあったに違いない。

フィギュアスケートのインストラクター(=コーチ)として教え子を指導する傍ら、「最年長のプロ・フィギュアスケーター」としてアイス・ショーのリンクに立つ美和。結婚はしていない。子供もいない。若いスケーターたちから、「美和さんは、キャリアが長いから」と、遠まわしに皮肉を言われる場合も多々。

「今の生活に、自分は満足している」と、日々、思いこもうとしている美和のもとに、ひとりの少女が現れる。原田飛鳥という名のその少女は、美和がかつてつきあっていた恋人・陽介のひとり娘だった。飛鳥は美和に訊く。「オリンピックを目指さないの?」と。若い頃の夢を指摘されて戸惑った美和は、飛鳥を疎んで避けるようになる。しかし、ある事件をきっかけに、「自分の夢は、過去になってはいなかった」と思い知る美和。飛鳥の存在を糧に、「40歳」の美和は、冬季五輪のフィギュアスケート女子シングル代表に選考されることを目指すが……。

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「たとえ何歳になろうと、夢に向かって努力をする」という題材は、映画に限らず、フィクションではスタンダードである。

しかし、この題材が廃れない理由は、共感する人々が多いからにほかならない。「40歳でオリンピックを目指す」と決断した美和には、容赦のない揶揄や中傷が飛んでくるが、同時に、彼女をサポートしようと力を惜しまない人々も続々と現れる。「口先だけではなく、『夢に向かって本気』で努力をしている人」は、周囲を活力に満たす存在になるのだ。

本作は劇映画だが、美和の生活と行動がつぶさに撮影されているような構成であるため、ドキュメンタリー的な印象が強い。「現実に生きている美和が、本当にオリンピックを目指し始めた」ように映るからこそ、彼女のチャレンジを応援したくなる気持ちも、彼女の努力を見習わねばと奮起する気持ちも、自ずと強くなってくる。

主人公を演じる西田美和は、日本のプロ・フィギュアスケート界で実際に最年長のスケーターである。また、荒川静香、伊藤みどり、(村主章枝選手の妹の)村主千香、佐野稔といった、トップ・スケーターも出演している。彼女らによる華麗なスケーティングのシーンは、無論、本作の素晴らしい見どころだ。

ただ、この映画を観て知る最も大切な感慨は、「夢に向かって、努力を惜しまない姿」の普遍的な影響力である。アラフォーだろうが、若かろうが、未婚だろうが、既婚だろうが、スタート・ラインに立ちさえすれば、誰もが同列。希望を目指して努力をしている自覚があるのなら、年齢を言い訳にしない勇気が自ずと備わってきてくれるのだ。

『COACH コーチ 40歳のフィギュアスケーター』を観たあとに、「いい歳して、まだ夢を見ているの?」と、自分自身に訊ねてみた。……その問い自体がどれだけナンセンスか、痛感することができた。

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▼『COACH コーチ 40歳のフィギュアスケーター』作品・公開情報
日本/2009年/108分
監督・脚本:室希太郎
出演:西田美和 小松崎夕楠 時東ぁみ 篠山輝信 金子昇(特別出演) 平泉成 他
配給:アステア
(C) 2010 ブルーローズ・シネマ・パートナーズ
『COACH コーチ 40歳のフィギュアスケーター』公式サイト
2010年2月6日(土)より、新宿K’s cinema他にて、全国順次ロードショー。

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文:香ん乃
改行

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