勝ち気すぎる女子高生

  • 2009年11月16日更新

息もできない

彼女ファイル:001 ヨニ(韓国)
〜『息もできない』より〜
だって、いくら先にやられたからって、強面のお兄さんにツバ吐き返せますか?!
道ですれ違ったサンフンの吐き捨てたツバが、偶然ヨニの制服にかかってしまう。
ブチキレたヨニは「ちょっと待ちなっ!」と彼を引き止め、それを拭き取らせたあげく、顔面めがけてツバを吐き返す。
なんという勝ち気さ! 「信じられない、この女」とサンフンも一瞬ボー然とするが、反射的に彼女を張り倒していた。
それなのに、ヨニはサンフンに対してなお、強気に絡んでいく…。なぜ…???
一家の母親的な役割をしていたヨニは、強権的な父と粗暴な弟に脅かされ、安らげる場所がなかった。
一方で借金取りのサンフンも、幼い頃に母と妹を失い、逃れられないしがらみの中で、苛立ち、暴力で自分の存在を誇示していた。
二人の出会いは、道でツバを吐きかけ合う、という衝撃的なものであったけど、しだいにそれぞれの環境から逃避するように同じ時間を過ごすようになる。互いの存在が心を癒し、じんわりと染みこんでいく。似た境遇のもの同士にしか、わかり得ない感情を分かち合うかのように。
女性とまともに向き合えなかったサンフンは、戸惑いながらも、強引なヨニのリードによって、少しずつ十代の少年のような心を取り戻していく。その関係は、姉と弟のようで、母親と息子のようにもみえるかな。本当はサンフンの方が、うんと年上のなんだけど…。またギャップのせいか、ヨニは笑うと、とても可愛くみえてしまう。
魂をぶつけ合うかのような暴力的でパワフルなシーンから、二人の心の弱くて、温かくて、やわらかいところに肉薄していく展開に、観ているこっちも「息もできない」ぐらい惹きつけられてしまう。
本音で向き合うような心の交流というものが希薄になりつつある昨今において、本作にみる不器用なまでの激しいぶつかり合いと、いたわり合いに、とても心が揺さぶられてしまうのでした。
文: 鈴木自子

ファイル001: ヨニ(韓国) 〜『息もできない』より〜

強面のお兄さんにツバ吐き返せますか?!

道ですれ違ったサンフンの吐き捨てたツバが、偶然ヨニの制服にかかってしまう。ブチキレたヨニは「ちょっと待ちなっ!」と彼を引き止め、それを拭き取らせたあげく、顔面めがけてツバを吐き返す。なんという勝ち気さ! 「信じられない、この女」とサンフンも一瞬ボー然とするが、反射的に彼女を張り倒していた。それなのに、ヨニはサンフンに対してなお、強気に絡んでいく…。なぜ…???

一家の母親的な役割をしていたヨニは、強権的な父と粗暴な弟に脅かされ、安らげる場所がなかった。一方で借金取りのサンフンも、幼い頃に母と妹を失い、逃れられないしがらみの中で苛立ち、暴力で自分の存在を証明していた。

二人の出会いは、道でツバを吐きかけ合う、という衝撃的なものだったけど、しだいにそれぞれの環境から逃避するように同じ時間を過ごすようになる。互いの存在が心を癒し、じんわりと染みこんでいく。似た境遇のもの同士にしか、わかり得ない感情を分かち合うように。

女性とまともに向き合えなかったサンフンは、戸惑いながらも、強引なヨニのリードによって、少しずつ十代の少年のような心を取り戻していく。ヨニは笑うと、とてもキュートだし眼差しが優しいんですね。

魂をぶつけ合うかのような暴力的でパワフルなシーンから、二人の心の温かくて、やわらかいところに肉薄していく展開に、観ているこっちも「息もできない」ぐらい惹きつけられてしまう。本音で向き合うような心の交流というものが希薄になりつつある昨今、この不器用なまでの激しいぶつかり合いに、とても心が揺さぶられてしまうのでした。

俳優経験を積んだヤン・イクチュン自身が主演・初監督。ロッテルダム映画祭をはじめ、多くの国際映画祭で数々の賞を受賞し、韓国でも大ヒット。

東京フィルメックス映画祭にて11/23(祝)18:10上映

▼作品情報

韓国/2008/130分
監督: ヤン・イクチュン(YANG IK-june)
原題: Breathless

文:おすず
改行

  • 2009年11月16日更新

トラックバックURL:http://mini-theater.com/2009/11/16/49/trackback/